2021年09月26日
コレクティブ 国家の嘘 原題:Colectiv 英題:Collective
監督・撮影:アレクサンダー・ナナウ
出演: カタリン・トロンタン、カメリア・ロイウ、テディ・ウルスレァヌ、ヴラド・ヴォイクレスク、ナルチス・ホジャ
2015年10月、ルーマニア・ブカレストのクラブ「コレクティブ」でライブ中に火災が発生。27名の死者と180名の負傷者を出す大惨事となった。一命を取り留め病院に運ばれた負傷者が、その後、次々に亡くなり、最終的にこの火災での死者は64名まで膨れ上がった。このことを不審に思い調べ始めたスポーツ紙「ガゼタ・スポルトゥリロル」の編集長は、内部告発者からの情報提供により衝撃の事実に行き着く。莫大な利益を手にする製薬会社、彼らと黒いつながりを持った病院経営者、そして政府関係者との巨大な癒着・・・
クラブ「コレクティブ」の悲惨な火災事件を発端に、当初は、病院での負傷者の相次ぐ死亡を不審に思った「ガゼタ・スポルトゥリロル」誌に密着する形で撮影を始めた本作。 監督は、生存者や火災後に病院で親族を失った家族の思いにも寄り添います。ドイツへ搬送して救命するはずだったのに移送手続きが滞って間に合わず息子を失い悲嘆に暮れる父親もいました。内部告発者が次々に現れ、長年にわたる医療現場の国家権力との癒着も明らかにされていきます。そして、利益優先の病院経営。消毒液を本来より10倍もの水で薄めていた事実も。重度の火傷を負った患者が感染症で相次いで亡くなったのも、そのせいでした。恐ろしや~
報道を目にした市民たちの怒りは、内閣を辞職に追い込み、正義感溢れるヴラド・ヴォイクレスクが保健省大臣に就任。新大臣から保健省オフィス内での撮影を許され、州政府の内部事情にも踏み込みます。それは、メディアや市民の監視なしには、国家機関は脆弱であるという残念な真実を映し出すことになってしまいます。
本作を観て、これはルーマニアだけの問題でないことを強く感じました。国家権力との癒着や、国家が国民に都合のいいようにしか報道しないのはどこにでもある話。新型コロナがなかなか収まらない今、私たちは何を知らされないでいるのでしょう・・・ (咲)
2019年/ルーマニア・ルクセンブルク・ドイツ/ルーマニア語・英語/109分/ビスタ/カラー/5.1ch
配給:トランスフォーマー
公式サイト:https://transformer.co.jp/m/colectiv/
★2021年10月2日(土) シアター・イメージフォーラム、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー.
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