10月1日(金)よりシネマカリテほか全国順次公開 劇場情報
監督:葉念琛(パトリック・コン)
出演
ソック役 王菀之(イヴァナ・ウォン)
レイ・ザンマン役 姜皓文(フィリップ・キョン)
チャン・ジーコウ役 梁漢文(エドモンド・リョン)
ケイケイ役 蔡潔(ジャッキー・ツァイ)
ソックの父親役 夏韶聲(ダニー・サマー)
人生はバスに乗ることと似ている。
乗り間違えても正しいバスに乗ればいい。
心配ない。必ず目的地に着く
ソックは恋人のジーコウと共にチリソース店「陳三益」を切り盛りしていたが、ふたりの前にケイケイという女性が現れ、ソックとジーコウはすれ違い始める。ジーコウとケイケイの浮気現場に遭遇し、ソックはジーコウの元を離れる。恋人に裏切られ仕事も失ったソックが、失意の中、心機一転。幼いころからの夢であったバス運転手になり、人生を挽回していく姿を描いた香港発ヒューマンドラマ。
バス運転手として新たな生活をスタートしたソックは、徐々に穏やかな日常を取り戻し始めるが、ある日、突然現れたケイケイの元カレというレイ・ザンマンから“復讐話”を持ち掛けられる。
主人公ソックを演じるのはシンガーソングライターとして活躍するイヴァナ・ウォン。女優としても活躍。今回、役作りのため実際にバス運転の免許を取得し、バスの運転にも挑戦。復讐に燃えるレイ・ザンマンを演じるのはフィリップ・キョン。ハードな役からコミカルな役まで演じる香港映画にかかせない俳優。気弱で浮気者のジーコウを演じるのは1990年代から歌手として活躍するエドモンド・リョン。ソックの運命を狂わせる悪女ケイケイを演じるのはジャッキー・ツァイ。たかぴーな役を演じる。また、ソックの父親役を演じたのは香港ロック界の大御所ダニー・サマー。監督・脚本は、香港に生きる男女のラブストーリーを多く手がけてきたパトリック・コン。ユーモアとスパイスのきいたラブコメに心温まる物語をプラスし、俯きがちになった心をそっと、さりげなく前向きにさせる作品を紡ぎあげた。
失意のソックが幼いころからの夢だったバス運転手になるという物語だけど、私には、このコロナ禍、香港に行けない状況なので、香港の街中の景色がたくさん出てくる嬉しい映画だった。しかも香港のバスには何十回も乗っているので、とても懐かしい。いつになったら香港に行けるだろうと思いながら観た。それにしても香港のバスの運転手で女性というのはほとんど見たことがない気がする。もっとも、あの道ギリギリに走るバスの運転手というのは相当神経を使うだろうし、渋滞や運転の荒いミニバスの運転手のような人も多い。あんな道を走るのはとても大変そう。それでも、この映画の主人公はバスの運転手を目指し、夢をかなえていくことで人生の心機一転をはかる。そんな物語に、今の私たちのなんとかしたいなという思いが重なり、勇気を与えてくれる。
主人公を演じているイヴァナ・ウォンを始め、恋人役のエドモンド・リョンも、主人公の父親役のダニー・サマーと、香港映画界では相変わらず歌手兼俳優という人が多い。私はダニー・サマーのCDを2,3枚持っているけど、彼がロック歌手というイメージがなかったので、今回、姿をお見受けし、やっぱりロッカーぽいと思った。
6月に公開された『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』の何韻詩(デニス・ホー)も歌手であり俳優でもある。そして11月に公開される『花椒の味』の主人公を演じる鄭秀文(サミー・チェン)も長く活躍する歌手であり俳優である。さらにこの作品に出演している鍾鎮濤(ケニー・ビー)、任賢齊(リッチー・レン)、劉徳華(アンディ・ラウ)も歌手兼俳優である。そしてアンホイ監督を描いたドキュメンタリー『我が心の香港 映画監督アン・ホイ』も11月に公開される。香港映画の日本公開が続き、香港映画ファンとしてはうれしい限り。でも香港の今の社会状況を考えると喜んでばかりはいられない。香港はどうなっていくのだろうと不安である(暁)。
乗り物天国の香港に行けば、おのぼりさんよろしく2階建てトラムや2階建てバスの最前列に座って高みの見物をするのが大好きな私。久しぶりの香港らしい香港映画にわくわくしました。車間距離1メートルもなさそうなところに、きっちり止めるバスの運転手さんの技能にはいつも驚くばかり。横転事故の凄まじい写真も何度か見たことがありますが、やっぱりやめられない2階建てバスの最前列。そんな香港にいつまた行けるでしょう・・・
ソックの恋路を邪魔するケイケイは、大陸から来た美人。商売の話をうまく持ちかけ、ジーコウと結婚までしてしまいます。ケイケイは前にも男をだましていて、うがった見方をすれば、中国と香港の関係のよう!
本作で、なにより目が釘付けになったのは、父のレコード店での場面。ソックと父が語るちょうど真ん中にレスリー・チャン(張國榮)の「為妳鍾情」のレコード! 顔がどアップです。隣は女性歌手のレコード。アニタ・ムイだったかも。(要確認!) 映画の最後の方で、父が「レスリー・チャンのレコードを入手した。聴いてみよう」と語ります。古き良き時代の香港への思いを感じてしまいます。
あと、懐かしかったのが、最後にバスの乗客として登場する方力申(アレックス・フォン)。2000年のシドニーオリンピックに香港代表ともなった水泳選手。水泳王子として芸能界にも進出し始めた頃に、香港の置地廣場(ランドマーク)でのチャリティー・イベントに出ていて、たまたま脇の出口から帰るところに出くわして一緒に写真を撮ったことがあります。あれから20年超。もう40過ぎなのに、変わらず若々しくて素敵です。
思えば、2000年初頭の頃は、中国に返還された後も、まだまだ香港らしさがありました。こんなにも早く大陸化するとは・・・ (咲)
『人生の運転手(ドライバー)』公式HP
2020年/香港/105分/DCP/広東語・北京語/日本語字幕:最上麻衣子
配給:武蔵野エンタテインメント株式会社
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