2021年09月17日

明日をへぐる

2021年9月11日 ポレポレ東中野を皮切りに全国ロードショー

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楮(こうぞ)をめぐる山里の人々の暮らし

監督・編集:今井友樹
企画・製作:山上 徹二郎 
企画協力:田岡重雄 
撮影:今井 友樹 / 伊東 尚輝
航空撮影:辻 智彦 
ドローン撮影:佐藤 千春 
録音:今井 友樹 / 川上 拓也
音楽:山村 誠一(スティールパン他)
音楽編集:山田やーそ裕(7 弦ギター)
ナレーション:原田 美枝子  
音声ガイドナレーション:笠井信輔 
ポスター画:田島征三
パラブラ第一回配給作品 

高知県いの町吾北地区周辺で、土佐和紙の原料・楮をめぐる山里の人びとの暮らしを四季を通して撮影。日本が誇る和紙の文化を通して私たちの日常を見直してみたいとの思いから製作したドキュメンタリー作品。

土佐和紙の原料となる楮(こうぞ)をめぐる山里の人々の暮らしを記録したドキュメンタリー。高知県のローカルな方言である「へぐる」は、特殊な包丁で土佐楮の皮から表皮部分を削ぎ取る作業のことを指す。高知県の山あいの町で楮を丁寧にへぐっていく90代の女性たち。楮の外皮を何度も削り落とし、繊維だけを残していく。そのようにすると、楮は1000年以上の耐久性を持つといわれる和紙へと生まれ変わっていく。その手わざや佇まいから、世代を越えて受け継がれてきた山里の暮らしが見えてくる。手間もかかり大量生産もできず、継承者もいないことからやがて失われてしまうのではないかと言われている「へぐりの作業」をはじめ、楮を栽培し、紙を漉いてきた人たちの暮らし。そして和紙の文化を通して、効率性や利便性を求め余裕が失われてしまった現代社会の日常を見つめ直す。
今井友樹監督は 2014 年公開の『鳥の道を超えて』を始め、数多くのドキュメンタリー作品に携わっている。

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和紙を作る体験工房で紙漉きの体験をしたことがある。「綿のような白い繊維」が水に浮いていて、それを巻きすを大きくしたような簀桁(すけた)というものを何度もくぐらせ、その白いものが積み重なり厚みが出たところで乾燥し、それが和紙になった。その「綿のような白い繊維」が楮(こうぞ)だったのだろう。和紙になる原料には楮、みつまた、雁皮(ガンピ)などがあるそうだけど、この吾北地区周辺では楮を植え、それを収穫してきた。その収穫した楮を蒸し、皮を剥ぐ作業を、この地区の人たちは共同でしている。綿のような繊維になるまでの工程がこんなに大変ということを、この作品で知った。楮は90年も100年も樹齢があるのだということも。そして毎年枝を切って、木そのものは丸坊主になってしまい、また春になると枝が出て来て、冬になると枝を切る。
この作品では、村の衆が出てくるけど、楮の枝を刈ったり、蒸したり、へぐったり、川で洗ったり、干したり、それぞれの作業に来る人達は15,6人くらい。ほとんどが60代以上? 中には90歳を超えた方もいて、元気に作業をしている姿が心強かったけど、将来のことを考えると、もっと若い世代が参加しなくては将来にわたって継続していくのは厳しいかも。もっともこの山村の地区に住んでいる人たちの中に若い人はほとんどいないのかもしれない。
和紙は障子や表具用などに使われてきたが、これらの需要は減ってきているので、最近は版画用、公文書修復用などに使われることが多い。ここの楮で作られた和紙は高品質で、版画用などに使われていて好評らしい。
そして、これまでずっと謎だったことが解けた。山里や山村に行くと、低木でゴツゴツした木が並んで生えていて、春から夏にかけて2mくらいに枝が伸びる木があって、これは何だろうなと思っていたのだけど、それが楮だった。日本全国、あちこち行ったけど、この「木」はあちこちにあった。ということは、楮の生産地というのは、かなりあったということなのでしょう。今井友樹監督は 『鳥の道を超えて』でも、地方に伝わるカスミ網を使った猟を描いていましたが、貴重な地方文化の記録を続けているということに敬意を表さずにいられない(暁)。
(暁)。


『明日をへぐる』公式HP
2021年製作/73分/日本
配給:Palabra、シグロ
posted by akemi at 08:55| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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