2021年09月09日
由宇子の天秤
脚本・監督・編集:春本雄二郎
プロデューサー:春本雄二郎、松島哲也、片渕須直
撮影:野口健司 照明:根本伸一
出演:瀧内公美(木下由宇子)、河合優実(小畑萌)、梅田誠弘(小畑哲也)、松浦祐也(長谷部仁)、和田光沙(矢野志帆)、池田良(小林医師)、木村知貴(池田)、前原滉、永瀬未留、河野宏紀、根矢涼香、川瀬陽太(富山宏紀)、丘みつ子(矢野登志子)、光石研(木下政志)
ドキュメンタリーディレクターの由宇子は、3年前の女子高生いじめ自殺事件を追っていた。テレビ局と衝突を繰り返しながらも、真相に迫っている手ごたえを感じていた。その傍ら、父の経営している学習塾を手伝い、生徒の相談役としても信頼されている。
ある日父の隠された事実を知り、大きな衝撃を受ける。真実を追い続けてきた由宇子がその仕事と、一人の人間としての自分との間で揺れ、迷い苦しむことになった。
2018年『かぞくへ』の春本雄二郎監督、3年ぶりの新作です。前作の何倍ものキャストが登場、由宇子を中心にメディアと個人、先生と生徒、父と娘、母と息子など、何家族ものエピソードが展開していきます。複雑な人間関係が次々と影響を及ぼしていき、物語は思わぬ方向へ進んでいきます。緻密な構成の脚本を作りあげるのは、さぞ大変だったことでしょう。登場人物の謎も物語の余白、観た人が想像で膨らませることができます。
由宇子に限らず人生は選択の連続で、あれかこれか迷い、選び抜いたところで後々まで結果が出ないこともあります。正しかったのかどうかも、時と場合で違ってしまいます。それでも生きていかねばならず、せめて身軽でいたいと思うこのごろ。
コロナ禍で一般公開が遅れましたが、第71回ベルリン国際映画祭パノラマ部門出品ほか、国内外の映画祭ですでに上映&受賞多数。(白)
☆春本雄二郎監督にお話を伺いました。こちらです。
ドキュメンタリーディレクターとして女子高生いじめ自殺事件の真相を追う由宇子は、マスコミの役割など、世に問う問題に光を当てることに信念を持ち、テレビ局の方針と衝突することもいとわずに仕事をしている。一体何が真実なのか。正しさとは何なのか。情報化社会が抱える問題や矛盾を真正面からあぶり出そうとすればするほど、制作サイドとぶつかってしまう。
社会においての矛盾を解き明かすことが正義と思いつつ、自分の大切なものを守りぬくことで、自分の在り方の矛盾を生み、選択をせまられる。ラストの思わぬ展開に、観客は驚くだろう。正義感溢れる女性ディレクターが思わぬ窮地に追い込まれていく様子を見事に演じきったのは瀧内公美。圧倒的存在感を感じた(暁)。
第21回東京フィルメックス2020
学生審査員賞:『由宇子の天秤』春本雄二郎
*シネマジャーナルHP 映画祭報告
第21回東京フィルメックス2020 授賞式
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/478502965.html
2020/日本/カラー/5.1ch/1:2.35/DCP/152分
配給:ビターズ・エンド
(c)2020 映画工房春組 合同会社
https://bitters.co.jp/tenbin/
★2021年9月17日(金)渋谷ユーロスペースほか全国順次ロードショー!
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