2021年08月22日

沈黙のレジスタンス ユダヤ孤児を救った芸術家   原題:Resistance

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監督・脚本・製作:ジョナタン・ヤクボウィッツ
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、クレマンス・ポエジー、マティアス・シュヴァイクホファー、フェリックス・モアティ、ゲーザ・ルーリグ、カール・マルコヴィクス、ヴィカ・ケレケシュ、ベラ・ラムジー、エド・ハリス、エドガー・ラミレス

1938年、フランス、ドイツ国境に近いストラスブール。アーティストを夢見る青年マルセルは、昼間は精肉店で働き、夜はキャバレーでチャップリンに似せた姿でパントマイムを披露していた。戦争が激化し、親をナチに殺されたユダヤ人の孤児たち123人がストラスブールに疎開してくる。マルセルは、兄アランや従兄弟のジョルジュ、思いを寄せるエマと共に、子どもたちの世話にあたる。悲しみに暮れる子どもたちをパントマイムで和ませるマルセル。
そんな中、フランスでもユダヤ人迫害が激化。マルセルはフランス風にマルソー名乗る。
“リヨンの虐殺者”と恐れられたナチのクラウス・バルビー親衛隊中尉がユダヤ人やその協力者たちを拷問し射殺。それに対し武力で復讐しようという恋人エマに、マルソーは一人でも多くの命を救おうと、ユダヤ人孤児たちをフランスからスイスへと逃がすことを提案する・・・

<パントマイムの神様>と称えられたマルセル・マルソーですが、2007年9月22日にパリで亡くなるまで、第二次世界大戦中にナチスに加担したフランスのヴィシー政権に対するレジスタンス運動に身を投じていた活動内容を自ら語ることはなかったとのこと。没後10年以上の時を経て、マルセルたちがユダヤ人の孤児たちを助けた実話が映画化されました。ジョナタン・ヤクボウィッツ監督は、1978年、ベネズエラ、カラカス生まれのポーランド系ユダヤ人。
マルセルの家族も食事の前のお祈りのあとの「ポーランドでのユダヤ人差別から逃げてきたのに、ヒトラーはいずれフランスにも侵攻してくる」という言葉からポーランド系ユダヤ人だとわかります。
ナチスの侵攻を察知して、ストラスブールのフランス人の多くが南部に疎開する中、マルセルたちは逃げることなく、ユダヤ人の孤児たちを助けたのです。
父に、「芸術に何の意味が?」と尋ねられたマルセルが、「なぜトイレに?」と問い、「体が求めるから」と答える父に、「僕の答えも同じ」という場面があります。そんな父も、歌手になることが夢だったのです。「戦争が終わったら一緒に舞台に立とう」と父はマルセルに語るのですが、父はホロコーストの犠牲になり、夢が叶うことはありませんでした。
戦後、マルセルがどんな思いを抱えて、パントマイムで皆を笑わせていたのかと思うと涙が出ます。人種や宗教で人を差別する風潮は、今また激化しています。差別することなく共生できる世界の実現を願うばかりです。
本作はユダヤ人を救った美談ですが、同じ8月27日公開の『ホロコーストの罪人』は、ノルウェーで警察と市民がホロコーストに加担していたことを暴いた物語です。人は状況次第で善にも悪にもなりえることをずっしり感じます。(咲)


2020 年/アメリカ・イギリス・ドイツ/英語・ドイツ語/120 分/カラー/スコープ/5.1ch
日本語字幕:高内朝子
配給:キノフィルムズ
公式サイト:http://resistance-movie.jp/
©2019 Resistance Pictures Limited.
★2021年8月27日(金)TOHOシネマズ シャンテほかにて全国ロードショー




posted by sakiko at 12:55| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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