2021年08月01日

カウラは忘れない

8月7日(土)~ ポレポレ東中野、東京都写真美術館ホール他全国順次公開
上映情報
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©瀬戸内海放送

瀬戸内海放送発ドキュメンタリー映画第2弾
監督:満田康弘
撮影:山田寛
音楽:三好麻友
MA:木村信博
EED:吉永順平
CG:斎藤末度加 南真咲 渡辺恵子 小林道子
通訳:スチュアート・ウォルトン 清水健

カウラの日本人捕虜集団脱走事件を知っていますか?

『カウラは忘れない』は、『クワイ河に虹をかけた男』で旧日本軍の贖罪と和解に生涯をささげた永瀬隆を20年にわたって取材したTV番組(のちに映画として公開)を作った満田康弘監督のライフワーク、渾身の第2作目のドキュメンタリー。
*『クワイ河に虹をかけた男』HP

太平洋戦争中の1944年8月。オーストラリア東部にあるカウラの捕虜収容所で、近代戦史上最大の1104人の日本人捕虜集団脱走事件が起こった。正確には脱走というより「このまま生きては祖国には帰れない」という「死ぬための行動」だった。捕虜234人が死亡、108人が負傷した(のちにこの時の傷で3人が死亡)。オーストラリア監視兵4人も犠牲に。彼らを絶望的な集団脱走へ向わせたのは、「生きて虜囚の辱めを受けず、死して罪過の汚名を残すこと勿れ」という、「捕虜になることを恥」とした東條英機陸相による「戦陣訓」(1941年)に象徴される旧日本軍の方針だった。そのため捕虜たちは本名を名乗らず偽名の人も多かった。
オーストラリア側の捕虜の待遇は悪くはなかった。食料不足はなく、強制労働というのもなかったという。捕虜たちは麻雀や花札、演劇など様々な娯楽を楽しんだり野球を楽しむこともあった。手製のバットやグローブを作り、班対抗の試合なども行われていた。
そんな収容所で生活を送るうち、捕虜たちの間には「生きたい、生きて帰りたい」と思う人もいた。しかし「貴様らそれでも帝国軍人か!」のひと言でかき消され、「このまま生きて祖国には帰れない」と脱走に突き進んだ。
カウラ事件から77年。カウラの人々はこの事件で亡くなった人たちを追悼する式典を続け、事件を教訓に平和都市として日本文化の理解や交流に取り組んできた。また日本側でも、生存者たちに残る悔恨や思いを受け止めようと聞き書きをする高校生や演劇人がいる。70周年記念行事に生存者としてただ一人参加した村上輝夫さんに、当時事件の収拾にあたったオーストラリアの元兵士は「もう私たちは隣人だ」と語りかけた。カウラは事件を教訓に平和都市として日本文化の理解や交流に取り組んできたのだ。
日本ではほとんど知られていないこの事件の真相を探るドキュメンタリー。

日本人の間にはほとんど知られてこなかった、近代史上最大の捕虜脱走事件といわれるカウラ事件。捕虜収容所では、捕虜の間に階級の序列はなく、重要事項は全員の投票を経て決定し、形式的には民主的な秩序が成立していたという。決起への是非を問う投票で、トイレットペーパーの投票用紙に8割の人が「○」(脱走に賛成)と書いたらしい。生存者の捕虜の一人は「本当は×と書きたいけど、〇と書かなければならないという『雰囲気』があった」。「貴様らそれでも帝国軍人か!」という一言で、「生への執着」が抗えなかったと語っていた。これを現代に置き換え、同じような状況に置かれたとき、私たちは大きな声、まわりの圧力に抗い、自分の意志を貫くことができるだろうか? 現代を生きる私たちに問いかける。知られざる戦争の歴史を知らせてくれるドキュメンタリー。この事件があったことを日本人は忘れてはならない(暁)。

98歳の父に、このカウラでの日本人捕虜集団脱走事件を知っているかと尋ねたところ、初めて聞いたとのこと。捕虜といえばと、こんな話をしてくれた。学徒出陣した時の同期で、横須賀の武山海兵団での予備学生時代の友人が、沖縄の特攻隊に任命されて戦死したと聞いていたのに、戦後、中野の商店街で店番しているのに出会い、びっくりして「戦死したのじゃなかったのか?」と聞いたら、実はアメリカの駆逐艦に助けられて捕虜になり、終戦までハワイにいたとのこと。捕虜になっていたことは、おおっぴらには言えなくて・・・と笑っていたそう。ハワイの捕虜収容所でも、意見の対立があって大変だったと聞かされたそうだ。ちなみに、父たち海軍同期の間では、お上のいうことを鵜呑みにする雰囲気はなかったという。
カウラでは、捕虜とはいえ待遇も悪くなく、せっかく生き長らえたのに、「捕虜は恥」と集団で死ぬことを扇動され、嫌と言えずに命を落とした人もいたことに涙が出る。地上戦になった沖縄でも、同じ地域で、軍人のいた防空壕では集団自死を強要されたが、軍人のいなかった防空壕では全員が助かった事例がある。こんな悲しい歴史を繰り返してはならないと思う。コロナ禍の今、似たようなことが起こっても不思議はないので、なおさらその思いを強くする次第だ。(咲)


*シネマジャーナル 特別記事
戦時下の捕虜脱走事件が現代に問いかける
『カウラは忘れない』満田康弘監督インタビュー
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/cowra-mitsuda.html

『カウラは忘れない』公式HP
協力 国立療養所邑久光明園 山陽学園 
Theater company RINKOGUN燐光群 坂手洋二 山田真美 田村恵子
カウラ事件70周年記念行事実行委員会
資料提供 オーストラリア戦争記念館 国立駿河療養所
製作 瀬戸内海放送 配給 太秦 
後援 オーストラリア大使館
2021/日本/DCP/カラー/96分
posted by akemi at 18:13| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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