2021年7月3日より沖縄・桜坂劇場にて先行公開
7月17日よりポレポレ東中野ほか全国順次公開 劇場情報
監督・プロデューサー:山里孫存
撮影・編集:祝三志郎
音楽:巻く音 jujumo
ナレーター:川平慈英
ナビゲーター:志ぃさー(藤木勇人)
サンマにかけられた関税の還付訴訟をきっかけに、統治者アメリカに挑んだウシ・カメ・ラッパの物語
1963年沖縄。米軍占領下にあった沖縄で、祖国復帰を願う人々が日本の味として食べていたサンマ。サンマには輸入関税がかけられていた。それは琉球列島米国民政府の高等弁務官布令、物品税法を定めた高等弁務官布令十七号(1958年公布)による。しかし、関税がかかるとされた魚の項目に「サンマ」の文字はなかった。そこで、ずっと関税を払い続けてきた魚卸業の女将・玉城ウシは、「関税がかかっているのはおかしい!」と、琉球政府に徴収され続けていた税金の還付訴訟を起こした。求めた額は現代の貨幣価値で7000万円。ウシおばぁが起こした「サンマ裁判」は、いつしか、自治権を求め、統治者アメリカを追い詰める、民主主義を巡る闘いになっていった。この裁判を支えた弁護士は下里恵良。大きなことを言うことからラッパと呼ばれ、政治家でもあった。信条は違えど、“米軍(アメリカ)が最も恐れた政治家”、瀬長亀次郎とは盟友であり、彼らの行動の足跡をたどり、統治者アメリカと自治権をかけて闘った人々の姿を伝える。
このドキュメンタリー、『サンマデモクラシー』の監督は沖縄テレビの山里孫存。2020年3月公開の『ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記』に続き、沖縄テレビ第2弾となるこの作品を作った。ナレーションは川平慈英。ナビゲーターは、うちな~噺家 志ぃさー(藤木勇人)。沖縄のお笑い集団「笑築過激団」のメンバーとして活動。並行して、沖縄音楽ブームを牽引した「りんけんバンド」のメンバーとしても活躍。
サンマをめぐる裁判が、沖縄の復帰運動に広がっていったという話を知り驚きだった。ウシおばあの、何事にも動じないようなどんと構えたような容姿が心強かった。ああいう人、沖縄には多いよねと思った。保守派の政治家だった下里恵良弁護士がウシおばあを支え裁判を戦った話の元をたどれば、彼が発した言葉がきっかけだった。それにしてもあの時代、保守、革新という立場を越え、沖縄復帰のため、人々が声を上げ運動をしていったということは沖縄の「結(ゆい)」という言葉を思い起こさせてくれる。草の根民主主義の発展、あるいは発見。うちな~噺家・志ぃさーが、時々画面に登場し、話を結び付け、難しい内容の話を、穏やかにユーモアたっぷりに進めてくれる。この方はどこかで見たことがあると思ったら、NHK連続テレビ小説「ちゅらさん」(2001)にも出演していた。またナレーター川平 慈英のお父さん川平朝清も映画の中に出演し、当時のことを語る。川平朝清さんは、沖縄最初のアナウンサーとして活躍していた人。この話は歴史の影に埋もれていたとのこと。こういう埋もれた歴史を掘り起こし、若い人たちに伝えていくドキュメンタリー、ぜひぜひ残していってほしい(暁)。
『サンマデモクラシー』公式HP
『サンマデモクラシー』予告編
2021年製作/99分/G/日本
配給:太秦
2021年07月17日
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