2021年07月17日
最後にして最初の人類 原題:Last and First Men
監督・脚本・音楽 ヨハン・ヨハンソン
原作:オラフ・ステープルドン
ナレーション:ティルダ・スウィントン
20億年先の未来に生きる人類第18世代のひとりが、20世紀に生きる第1世代の私たちにテレパシーで語りかけてくる。奇怪なモニュメントの数々を背景に語られる壮大な叙事詩。
ヨハン・ヨハンソン(1969~2018)。
アイスランド出身で、クラシックと電子音を融合させた音楽スタイルで知られ、映画をはじめ舞台・コンテンポラリーダンスなど幅広いジャンルで活躍した作曲家。映画音楽では、『博士と彼女のセオリー』(2014/ジェームズ・マーシュ監督)でゴールデングローブ賞作曲賞を受賞し、大ヒットした『メッセージ』(2016/ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)でも同賞にノミネート。世界的な注目を集めるようになったが、キャリア絶頂期にあった2018年2月9日にわずか48歳で急死。
『最後にして最初の人類』は、ヨハン・ヨハンソンが生前、最後に取り組んだ最初で最後の長編映画。原作は、英国の哲学者で作家オラフ・ステープルドンの「最後にして最初の人類」(1930/邦訳は絶版)。20世紀を代表するSF作家の一人であるアーサー・C・クラーク(「2001年宇宙の旅」)にも大きな影響を与えたといわれるSF小説の金字塔。
もともとシネマ・コンサートの形式で生上演されていたものがベースになっており、ヨハンソンが監督した16mmフィルムの映像をスクリーンに投影し、女優のティルダ・スウィントンが朗読を加え、ヨハンソンによるスコアをオーケストラが生演奏するというスタイル。ヨハンソンが亡くなった後、16mmフィルムの撮影監督を務めたシュトゥルラ・ブラント・グロヴレンを中心とした参加スタッフが、1本の長編映画として構成。ヨハンソンの死後2年を経て、2020年2月のベルリン国際映画祭でワールドプレミア上映。
20億年後の人は、私たちに何を語りかけようとしているのか・・・
ヨハン・ヨハンソンが、それを映像で表す背景に選んだのが、旧ユーゴスラビアに点在する「スポメニック」と呼ばれる巨大な戦争記念碑。第二次世界大戦の対ドイツ戦で犠牲となった人々を追悼し、社会主義の勝利をアピールするべく建設された石碑。奇怪なモニュメントからは、戦争の虚しさが伝わってくるようです。
まだユーゴスラビアだった1987年に、ドゥブロヴニク(現クロアチア)からアドリア海沿いにイタリアのトリエステに抜ける旅をしたことがあります。どのあたりだったか覚えていないのですが、美しい公園の中に、勇ましい兵士を中心にした戦争記念碑があって、ドキッとしたのを思い出しました。のどかで、絵のような風景の続くユーゴスラビアとあまりにもかけ離れたものに思えたのですが、そのほんの数年後に、国がばらばらになる戦争が起こってしまいました。人類の歴史は戦争の繰り返し。本作を見終わって、いつか自滅することを警告されたような気がしました。(咲)
2020年/アイスランド/英語/71分/DCP/ヨーロッパビスタ1.66:1/5.1ch
字幕翻訳:安藤里絵、字幕監修:浜口稔
配給:シンカ
公式サイト:https://synca.jp/johannsson/
★2021年7月23日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネマカリテ他全国ロードショー.
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