2021年07月11日
ジャッリカットウ 牛の怒り 原題:Jallikattu
監督:リジョー・ジョーズ・ペッリシェーリ
出演:アントニ・ヴァルギース、チェンバン・ヴィノード・ジョーズ、サーブモーン・アブドゥサマド、ジャーファル・イドゥッキ、シャーンティ・バーラクリシュナン
南インド、ケーララ州の奥深い森の中にある小さな村。土地が買えなくて肉屋になったさえない男アントニ。水牛を屠ろうと鉈を研ぎ振りおろそうとすると、命の危機を察した牛は怒り狂って全速力で逃げ出す。夕食のカレーや、婚約式の料理のために屠られるのを待ち構えていた人々も、アントニと共に一団となって牛を追いかける。暴走する牛は、村の商店を破壊し、ハーブやタピオカ畑も踏みつぶして台無しにしてしまう。
農場主や教会の神父、地元の警察官も交え教会に集まり対策を立てる人々。穴を掘りワナをしかける。
アントニは恋心を寄せるソフィに愛想を尽かされていたが、自分の手で牛を捕まえてソフィに見直してもらいたいと奮闘する。一方、かつて密売の罪で村を追放された荒くれ者の猟銃使いクッタッチャンが呼び戻される。ソフィをめぐっていがみあい、自分を密告したアントニを恨んでいた。牛追い騒動は、いつしか人間同士の醜い争いになっていく・・・
松明をかかげて、牛を追って森の中を疾走する大勢の男たちの姿に度肝を抜かれます。
バリ島のケチャにも似た掛け声が森の中に不気味に響きます。正常心を失って、人間ピラミッドまで作ってしまう男たちに対し、家で静かに過ごしている女性たち。女性は家にいるものという考えがあるのかもしれませんが、かえってしたたかで賢く思えます。
ケーララは、インドの中でもキリスト教徒の多い地ですが、この村にも土地持ちの人が寄付した場所に教会が建てられています。
ヒンドゥー教徒は牛は神聖なものとして食べませんが、キリスト教徒はOK? というか、牛と水牛は別物なのでヒンドゥー教徒も食べるのか?と、関係のない疑問がちょっとわきました。
それにしても、CGをほとんど使わないで、実物の水牛とアニマトロニクスを駆使して描いた水牛がリアルです。監督はスタッフと一緒に『ジョーズ』と『ジュラシック・パーク』のシーンを何度も繰り返して観て作り上げたのだそうです。牛だけでなく、どうやって撮影したのかと思う場面が多々あります。撮影監督のギリーシュ・ガンガーダランは、イスラーム映画祭6で上映された『青い空、碧の海、真っ赤な大地』の撮影も担当された方。
とにかく凄い映画なのですが、最後のオチで和やかな気分にさせられました。(咲)
2021年度アカデミー賞国際長編映画賞インド代表作品
2019年/インド/マラヤーラム語/91分/スコープサイズ/カラー/5.1ch
字幕:松岡環 / 字幕監修統括:粟屋利江
配給:ダゲレオ出版(イメージフォーラム・フィルム・シリーズ)
(C)2019 Jallikattu
公式サイト:http://www.imageforum.co.jp/jallikattu/
★2021年7月17日(土)よりシアター・イメージフォーラムにてロードショー
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