2021年07月11日
17歳の瞳に映る世界 原題:Never Rarely Sometimes Always
監督・脚本:エリザ・ヒットマン
製作総指揮:ローズ・ガーネット、バリー・ジェンキンス
音楽:ジュリア・ホルター
出演:シドニー・フラニガン タリア・ライダー セオドア・ペレリン ライアン・エッゴールド シャロン・ヴァン・エッテン
17歳のオータム。高校の文化祭でギターの弾き語りをする彼女に「メス犬!」と野次が飛ぶ。それでも歌い続けるオータム。愛想がなく、友達といえば、同じスーパーでバイトをしている従妹のスカイラーくらいだ。ある日、オータムは予期せぬ妊娠をしたかもしれないとウィメンズ・クリニックに行く。陽性。でも、地元ペンシルベニア州で未成年が中絶するには親の同意が必要だ。スーパーでレジ打ちしている時に吐き気を催す。察したスカイラーが付き添って、親の同意なしに中絶できるニューヨークに向かう・・・
エリザ・ヒットマン監督が、本作を作ろうと思ったきっかけは、2012年、アイルランドで中絶が違法で中絶手術を受けられなかった為に亡くなった女性がいるという記事を読んだこと。アイルランドの女性は中絶するためにイギリスに渡ることも知りました。(アイルランドでは、2018年に妊娠24週まで中絶が可能に)
その後、中絶手術を受けるためにニューヨークにやってきたものの、莫大な費用のために夜をベンチで過ごすという記事をみたことなどから、舞台をアメリカに。監督自身も妊娠を経験し、ウィメンズ・クリニックなどでのリサーチも重ねて、この物語を紡ぎました。
原題の「Never Rarely Sometimes Always(まったくない、ほとんどない、時々ある、常にある)」は、クリニックで、妊娠した女性に生理や性交渉などについて質問する時の回答の選択肢。妊娠がどんな状況の性行為から起きたものだったかもあぶりだしていきます。
一方で、クリニックのカウンセラーの女性ケリーが、「中絶を誰にも強要されずに自分で決めたなら何の問題もない」とオータムに語ります。罪悪感に捉われがちの女性に対して、なんと心強い言葉でしょう。
このケリーは、監督がクイーンズにあるチョイシズ・ウーマン・メディカル・センターを取材した時に知り合い、彼女の言葉に感銘を受けて、カウンセラー役に抜擢したとのことです。
ニューヨークで、費用の工面をアドバイスしてくれるなど、親に知られることなく中絶できる体制があることに感心しました。日本ではどうなっているのか気になりました。
予期せぬ妊娠をして親にも言えなくて、たいていの場合、一人で悩むところ、オータムにはそばにいてくれる従妹がいて、どんなにやすらいだことかと思いました。多くを語らず、そばに寄り添ってくれるというのは、心地よい支えだと感じました。
観終わったときには、10代、20代の若い女性たちに是非観てもらって、望まない妊娠で苦しむことのないよう注意してほしいと思ったのですが、これは、若い男の子にこそ観てもらって、迂闊な行為が相手の女の子を苦しめるかもしれないことを心してほしいと思いました。避妊の大切さを、男女共に映画から学んでほしいものです。(咲)
第70回ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)
サンダンス国際映画祭ネオリアリズム賞
2020年/アメリカ/101分/ユニーバサル作品
字幕翻訳;稲田嵯裕里
配給:ビターズ・エンド、パルコ
公式サイト:https://17hitomi-movie.jp/
★2021年7月16日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー
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