監督:デレク・ツァン
原作:アニー・ベイビー
出演:チョウ・ドンユィ(アンシェン)、マー・スーチュン(チーユエ)、トビー・リー
ある日、安生(アンシェン)の元に映画会社から連絡が届く。彼らは、人気ネット小説『七月(チーユエ)と安生(アンシェン)』を映像化したいのだという。作者は七月(チーユエ)という名の女性だが、所在は不明。物語は幼馴染の女性2人の友情を描いたもので、作者の自伝的な要素が強いという話だった。そこで彼らは、もう一人の主人公のモデルを探し、アンシェンに連絡をしてきたというわけだ。だがアンシェンは「チーユエなんて人は知らない」と彼らを帰す。
知らないというのは嘘で、チーユエはアンシェンにとって子どもの頃から特別な存在だった。何よりも大切な親友、そして誰よりも激しくぶつかりあった戦友、互いに魂の奥深いところでつながっていたはずの2人がなぜ別れてしまったのか?
チョウ・ドンユィのデビューはチャン・イーモウ監督の『サンザシの樹の下で』(2010年)。「13億人の妹」のキャッチフレーズがぴったりの可憐な女の子でした。それから10年、チャン・イーモウ監督が見出した女優、コン・リー、チャン・ツィイー二人に比べて大人の女性の魅力が足りないのか?と思っていたこの頃、『少年の君』(7月16日公開)とこの作品が公開されることになりました。どちらも可愛くてちょっと不思議、チョウ・ドンユィの魅力が遺憾なく発揮されています。
育った環境の違いを超えて続いていた少女二人の友情は、男の子一人が登場でヒビが入ってしまいます。三人の思いが少し時間をずらして紐解かれ、甘酸っぱいというより苦くて辛い青春の一時期が目の前に立ち上ってきました。得た喜びが大きいほど失ったときの悲しみは深くなります。それでもそういう人に巡り合えたことは嬉しいことです。
これからも出逢いがあるだろう若い人から、別れが多くなりそうな年齢に差し掛かった人までおすすめの作品。(白)
曾國祥(デレク・ツァン)監督の『少年の君』が日本公開されることになり、同監督の長編第一作目の作品『七月與安生』が、『ソウルメイト/七月(チーユエ)と安生(アンシェン)』というタイトルで日本公開されることになった。この作品は2017年の大阪アジアン映画祭で上映され「ABC賞」を受賞している。この「ABC賞」というのは、大阪のABC放送(朝日放送テレビ)で放映されるチャンスを与えられるということで大阪周辺ではTVで放映された。私自身はこの2017年の大阪アジアン映画祭で観て、すでにシネマジャーナル本誌100号で紹介している。素晴らしい作品と思い、日本公開されないのは残念と思っていたけれど、『少年の君』が評価されこの作品も日本公開されることになり嬉しい。
今回見返してみて、安生を演じた周冬雨(チョウ・ドンユィ)の家は『少年の君』と家庭背景が同じと気が付いた。母子家庭で母親は他の町に働きに行っていて家にいなくて一人で暮らしているという設定だった。七月の家は両親がそろっていて、安生を食事に誘ってくれたりしてあたたかく見守ってくれる。生真面目な七月と自由奔放な安生、まるっきり性格の違う二人の少女の13歳から27歳になるまでの成長と友情、そして別れ。成長するにしたがって、進む方向、生き方の違いから疎遠になったという風に描かれていたけど、本当は…。最後にからくりがわかるまで観客はずっと騙される。デレク・ツァン監督の繊細で巧みな演出は、あっと思わせ珠玉の青春映画になった。憎しみあって別れたのかと思ったらシスターフッドが描かれる。『GF*BF』をも思わせる展開。最後にホロリとさせられる。
香港のアカデミー賞にあたる香港電影金像奨では12部門にノミネートされ、作曲賞を受賞。第53回台湾金馬奨では、6部門にノミネートされ、安生を演じた周冬雨と七月を演じた馬思純(マー・スーチュン)は、史上初の主演女優賞W受賞をはたした。アン・ホイ監督がどちらかに主演女優賞というのは無理と主張したらしい。
主題歌を王菲(フェイ・ウォン)と元黒豹楽隊の竇唯(ドウ・ウェイ)の娘・竇靖童(リア・ドウ)が歌ったことも話題になった。しかし、私にとっては、劇中で崔健(ツイ・チェン)の「花房姑娘」や、王菲の「浮躁」が流れたことが懐かしかった。この作品には中国の音楽だけでなく、欧米の音楽も含めたくさんの音楽が流れていた。デレク・ツァン監督は、『インファナル・アフェア』『ラヴソング』など俳優、監督、司会など多彩に活躍している曾志偉(エリック・ツァン)の息子(暁)。
第53回金馬奨6部門ノミネート主演女優賞W受賞
2016年/香港・中国/カラー/シネスコ/110分
配給:クロックワークス
(C)2016 JOYCORE Pictures(Shanghai) CO.,LTD., J.Q. Pictures Limited,Alibaba Pictures Group Limited,We Pictures Ltd. ALL Rights reserved.
https://klockworx-asia.com/soulmate/
★2021年6月25日(金)より新宿武蔵野館ほかロードショー
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