監督:原作:秦建日子 (ハタ タケヒコ)
脚本:秦建日子、小林昌
撮影:大内泰
出演:由紀さおり(鷺坂冬子)、小林豊(鷺坂蒼太)、柳ゆり菜(鈴木夏芽)、本田剛文(恩田正樹)、中田圭祐(鷹野)、大和田獏(川越恵一)、寺脇康文(鈴木一郎)
「不可能」と言われた青いバラ「ブルーヘブン」を世界で初めて生み育てた園芸科の鷺坂冬子63歳。今は家族に囲まれてバラ園を営みながら幸せに暮らしている。冬子には家族に内緒にしていることがあった。がんが再発してステージ4まで進み、余命は半年と主治医に言われたばかり。実は叶えたかった夢がある。冬子の青春時代の大切な思い出に繋がること、それはハングライダーで空を飛ぶことだった。
2019年に歌手デビュー50周年を迎えた由紀さおりさん初主演作。1986年から実姉の安田祥子さんと日本の歌を歌い継ぐ活動を続けている一方、映画『家族ゲーム』での演技が毎日映画コンクールで助演女優賞を受賞しています。美しい歌声が印象的だった「夜明けのスキャット」のほかに、昨年亡くなった志村けんさんとの「バカ殿と腰元」のコントが思い出されます。毎週楽しみでした。
本作では実在のバラ育種家をモデルに、いくつになっても夢を諦めない冬子を溌剌と演じています。孫役に「BOYS AND MEN」の小林豊と本田剛文、冬子の夢を応援する自動車修理工に柳ゆり菜。青春の思い出と交互に、冬子の奮闘ぶりが披露されます。ロケ地となった岐阜県の雄大な自然を眼下に、自分もハングライダーで空を飛ぶ気分を味わってください。(白)
「青いバラ」って、けっこうこれまで見たことあるような気がするし、青いバラが伏線になった映画やミステリーを見たことがある(TV「相棒」で、3回くらい再放映されていた記憶がある)。でも、そんなに珍しい品種で、この色を作りだすのに様々な苦労があったというのは知らなかった。この作品は、この「青いバラ」を作り出した人を主人公にした物語。心に秘めていた空を飛ぶ夢実現のため動き出します。その夢を持つようになったことがだんだんに明らかになり、最後に納得。それにしても空を飛ぶ夢。他の終活映画でも出てきましたが、やっぱりいいですよね。私もずいぶん前に飛んでみたいと思ったことがありました。でもかなり太ってしまったので諦めました。かつては登山をしたりスキーをしたり、かなり運動をしていたのですが、ここ20年くらいはすっかり運動をしなくなりました。スキーをしていた時に1級検定を受けようと思ったのですが、1級試験にはジャンプ項目があります。10mくらいなのですが、それに挑戦して失敗して以来、空中を飛ぶのはあきらめました(笑)。でも、冬子さんのように空を飛べたら気持ちいいだろうなと思いながら映画を観ました。由紀さおりさんの歌声大好きです(暁)。
余命宣告を受けた主人公が人生を振り返り、やり残したことにチャレンジする姿を描きます。
仕事が続かない、中途半端な孫がおばあちゃんのために一肌脱ごうとする。頼りないけれどその気持ちがうれしい。「BOYS AND MEN」の小林豊が好演しています。そんな孫が惚れた女性を演じるのが柳ゆり菜。過干渉な親(寺脇康文)とは距離を置き、自分の力で生きていこうと奮闘中。主人公の夢に一役買います。
女性ががんばる作品は見ていて気持ちがいいですね。そういう作品の男性はなぜかダメダメな人が多いけれど、愛嬌が許せてしまう。でも、きっとこれがダメにする原因なんでしょうね。(堀)
本作のモデルになったのは、作るのは不可能といわれていた青いバラを作ってしまった河本純子さん。日本一のバラ苗生産地、岐阜県揖斐郡大野町の河本バラ園で、40年以上にわたり、バラの新種を発表されている方です。女性バラ育種家は、世界でも数少ない存在なのだそうです。5月28日から公開されているフランス映画『ローズメイカー 奇跡のバラ』も、女性のバラ育種家が主人公。既存のバラを掛け合わせて、自分の思い描く新しいバラを作って、思いを込めた名前を付けるという、なんて素敵な人生でしょう!
さらに、本作では、人生の終焉を目の前にして、思い出を胸にハングライダーで空を飛ぶという夢を叶える女性育種家を、由紀さおりさんが楚々と演じていらして、私もやり残したことを実現したいなぁ~と思わせてくれました。(咲)
2020年/日本/カラー/シネスコ/93分
配給:ブロードメディア・スタジオ
(C)2020「ブルーヘブンを君に」製作委員会
https://blueheaven-movie.jp/
★2021年6月11日(金)より全国公開
【関連する記事】