2021年06月06日
ブラックバード 家族が家族であるうちに(原題:BLACKBIRD)
監督:ロジャー・ミッシェル
原作・脚本:クリスチャン・トープ
撮影:マイク・エリー
出演:スーザン・サランドン(リリー)、ケイト・ウィンスレット(ジェニファー)、ミア・ワシコウスカ(アナ)、リンゼイ・ダンカン(リズ)、サム・ニール(ポール)、レイン・ウィルソン(マイケル)、ベックス・テイラー=クラウス(クリス)、アンソン・ブーン(ジョナサン)
医師のポールと妻のリリーの家に娘たちがやってくる。長女のジェニファーは夫のマイケル、息子のジョナサンと、次女のアナはパートナーのクリスを連れて両親の住む海辺の家を訪ねる。リリーは難病と長く戦ってきたが、病状が進み安楽死をしたいと家族に告げたのだった。
ジェニファーは母の選択を尊重するつもりだったが、母に会うとまた心が揺れる。アナは母にはもっと生きていてほしい、と泣き出す。孫のジョナサンはここに来て初めて知ってショックを受けている。
家族だけで最後の日々を過ごすはずなのに、母リリーの親友リズもいる。彼女はいつも家族同様だったけれども、ジェニファーはなぜか受け入れられない。
「トーキョーノーザンライツフェスティバル2016」で上映されたデンマーク映画『サイレント・ハート』(2014)を、リメイクしたもの。そちらは残念ながら未見。脚本のクリスチャン・トープがこちらでも担当しました。
安楽死を決意したリリーは、自ら最後の晩餐を計画・早いクリスマスプレゼントを用意します。盛装して現れるリリーが輝いてとても綺麗です。しかし娘たちの心中は穏やかでなく、姉妹は一騒動あったばかり。
強くて美しい母・スーザン・サランドンとしっかり者でまじめな長女・ケイト・ウィンスレットは共にオスカーを受賞(親子ほどの年齢差)したベテラン女優、ごく普通の主婦を演じても貫禄がにじみ出ます。ミア・ワシコウスカ演じるアナの逡巡もまた身につまされます。
夫のポールがわりあい落ち着いているのは医師だからかと思っていたら、だんだん明らかになる真実。私はちょっと納得いかず「う~む」でした。孫のジョナサンが率直で可愛いです。彼がいてくれてなごみました。
安楽死については、自分や家族だったら、と考えると簡単に答えが出ません。上映中の日本映画『いのちの停車場』にも安楽死を望む老親が登場しました。治療法もなく、激しい痛みに苛まれている人を前にしたら、楽にしてやりたいと思ってしまうでしょう。
医師など他人による「積極的安楽死」が認められている国が7カ国(アメリカは州によっては認可されています)。中でもスイスが1942年から認可されているというのには驚きでした。スペインとニュージーランドが今年中に合法化されるようです。日本もいつかは合法化されるのでしょうか?「ブラックバード」とは カラスではなく、”クロウタドリ” という真っ黒な羽根のツグミ科の鳥。なぜこのタイトルなのかしら?(白)
尊厳死について扱った作品ですが、尊厳死を選ぶまでの葛藤ではなく、すでに決定事項とした上で、最後の3日間を家族で過ごしたいという主人公のために娘家族や親友が集まる話です。
医者の夫は主人公からきつい言葉を投げつけられても丸ごと受け止め、妻の生活を支えています。尊厳死についてもおそらくいろいろ話し合った上で妻の意思を尊重し受け入れたのであろうことが伝わってきます。
そこに集まる長女家族と次女カップル、親友。長女の一人息子は受け止めきれず戸惑い、次女は思いとどまらせようとする。それぞれの気持ちが丁寧に描かれているのでみなに共感してしまう。
命は誰のものなのか。いえ、命は誰かのものというものなのか。
後半にある事実が判明し、それまでは主人公の気持ちを受け入れていた長女が気持ちを翻す。「母はある人物の思惑で間違った判断をさせられたのではないか?」
クライマックスの修羅場はベテラン女優たちの熱演が光る。主人公は最終的に何を選び、家族はどう受け止めたのか。理解できる人とできない人がいるかもしれませんが、それも含めてさまざまな思いがあって正解はないことを改めて考えさせられます。(堀)
2019年/アメリカ・イギリス合作/カラー/シネスコ/110分
配給:プレシディオ、彩プロ
(C)2019 BLACK BIRD PRODUCTIONS, INC ALL RIGHTS RESERVED
https://blackbird.ayapro.ne.jp/
★2021年6月11日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
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