2021年06月06日

犬は歌わない 原題:Space Dogs

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監督・プロデューサー: エルザ・クレムザー&レヴィン・ペーター
ナレーション: アレクセイ・セレブリャコフ
撮影監督:ユヌス・ロイ・イメル
音楽:ピーター・サイモン&ジョナサン・ショア
編集:ヤン・ソルダット、ステファン・ベヒャンガー

世界で初めて宇宙に飛んだ犬のライカの魂は、今もモスクワの街を彷徨っている・・・

1950年代、東西冷戦の時代。ソビエト連邦は宇宙開発に向けて様々な実験を繰り返していた。その中の一つがスペース・ドッグ計画。世界初の“宇宙飛行犬”として飛び立ったライカは、かつてモスクワの街角を縄張りにする野良犬だった。宇宙開発に借り出された彼女は宇宙空間に出た初の生物であり、初の犠牲者となった。時は過ぎ、モスクワの犬たちは今日も苛酷な現実を生き抜いている。そして街にはこんな都市伝説が生まれていた"ライカは霊として地球に戻り、彼女の子孫たちと共に街角をさまよっている"
本作は宇宙開発、エゴ、理不尽な暴力、犬を取り巻くこの社会を宇宙開発計画のアーカイブと地上の犬目線で撮影された映像によって描き出す、モスクワの街角と宇宙が犬たちを通して交差する新感覚のドキュメンタリー映画。

初めて宇宙に飛んだのが、ワンちゃんだったと聞いたのは小学生の時のことでした。米ソが競って宇宙開発をしていた時代です。ソ連は犬を、アメリカはチンパンジーを最初の宇宙飛行の実験台に選びました。
本作で、選ばれた野良犬たちが、飛行前に様々な実験をされる光景を目にして、なんとまぁ気の毒なと胸が痛みました。
人間の宇宙飛行が可能かどうか検証するために、「スペース・ドッグ計画」として、宇宙に飛んだ犬はライカに続き数十匹。犬は飼い主に情を抱くもの。最初は野良犬でも、訓練しているうちに、訓練にあたっている人たちに親しみを感じていったに違いありません。引き離されて、狭い宇宙船に閉じ込められたワンちゃん。どれほど寂しくて不安な思いをしたことでしょう・・・ 犬権無視の宇宙開発があって、人類が宇宙に飛ぶことができたことを忘れてはならないと思いました。
一方で、現在のモスクワ。街をたむろする野良犬たち。ご先祖さまは、もしかしたら宇宙開発を支えたかもしれません。
5月28日から公開されている日露合作映画『ハチとパルマの物語』は、ソ連にもハチ公のような忠犬がいた実話をもとに描いた物語。先行公開されたロシアで大ヒット。犬がいかに人間に忠実なのかを再認識して野良犬にも接したいものですね。(咲)


人間より前に犬が宇宙に行っていたことを本作で初めて知りました。宇宙に行くとなると大変なんですね。4月に公開された『約束の宇宙』で宇宙飛行士の訓練の様子を見て、そのハード内容に驚きましたが、本作の犬たちはその比ではない気がします。肉体的にも傷つけられ、見ているのが辛い。
そんな過去の映像と並行して映し出されるのが、現在のモスクワの野良犬たち。本能で生きている彼らの姿に恐怖すら感じる。途中、野良犬が猫を襲う。しかし、食べるのではなく、弄ぶだけ。猫がかわいそうと思った瞬間、同じことを人間は野良犬にしてきたのではないかと気づいた。(堀)


初めて宇宙旅行をした犬、ライカのことを映画の中で描いたスウェーデン映画『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』が日本公開されたは1985年。この映画は衝撃的でした。今もあの地球軌道を周回している浮遊感と犬のシーンが目に浮かびます。実際の打ち上げは1957年のことです。すでに60年以上の時が経ちました。そして現代のモスクワ。今も野良犬は街を動きまわっている。
犬のドキュメンタリーなのに、物語がありライカの話とリンクしている不思議。まさにドキュドラマ的な作品だった。今も昔も、人間と犬の関係は変わらないということが描かれていた(暁)。


2019年/オーストリア・ドイツ/91分/カラー・モノクロ/DCP
配給:ムーリンプロダクション
公式サイト:https://moolin-production.co.jp/spacedogs/
★2021年6月12日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国劇場公開



posted by sakiko at 13:40| Comment(0) | オーストリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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