2021年05月30日

戦火のランナー  原題:Runner

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監督・プロデューサー:ビル・ギャラガー
撮影:ニッキー・ブラムリー、ピーター・グメ、ジェイコブ・ベンジャミン・アテニー
脚本・編集:ビル・ギャラガー、エリック・ダニエル・メッツガー
音楽:エドゥアルド・アラム
製作総指揮:ジェイ・ナライン、リンジー・ナライン
出演:グオル・マディング・マケア(グオル・マリアル)、ラスティ・コフリン、コーリー・イーメルス、ブラッド・プア他

初めて走ったマラソンで、2012年のロンドンオリンピックに難民選手団として出場を果たしたグオル・マリアル選手の感涙のドキュメンタリー。

1984年、スーダン南部で生まれたグオル・マリアル。スーダンとして、1956年にイギリスとエジプトの統治下から独立するものの、アラブ系住民の多い北部と、アフリカ系住民の多い南部の間で内戦が勃発。途中、停戦したこともあるが、内戦は2005年まで40年近くも続いた。子どもはさらわれ、家は燃やされ、どこもが戦場。両親は8歳のグオル・マリアルの命を守るため、彼を一人で逃がす苦渋の決断をする。逃げたものの武装勢力に捕まってしまったグオルは、夜明け前に走って逃げることに成功する。その後4年間、スーダン南部を放浪し、ようやく難民キャンプに保護される。2001年、16歳の時に幸運にもアメリカへ難民として移民する。ニューハンプシャー州の高校に入学し陸上部に入った彼は、走ると他を圧倒。初めて走ったマラソンで2012年ロンドン五輪出場資格を得る。しかし、彼の故郷が南スーダンとして建国されたのはロンドン五輪開催の一年前。国内オリンピック委員会がなく、代表する国がなかった。出場が危ぶまれたが奇跡が起こる。国際オリンピック委員会(IOC)が“国のない男”といわれた彼の個人参加選手としての出場を認めたのだ。そして彼は、祖国南スーダンの人々の期待を背負い走り、完走する・・・

内戦の中、身を守るために走り続けたグオルが、独立したばかりの祖国の人たちの思いを背負ってマラソン選手として活躍する姿に胸が熱くなりました。なにより涙なしに観られなかったのは、20 年ぶりに故国を訪れ、両親との再会を果たした場面。両親と別れたのは、8歳の時。自分だとわかってくれるだろうかとの不安も、泣きじゃくるお母さんや、踊り狂うお父さんの姿をみて吹っ飛びます。ご両親も、こんな日が来るとは思いもよらなかったことでしょう。
本作を観て思い出したのが、『行け、生きろ、生まれ変われ』のタイトルで、第13回フランス映画祭横浜2005で上映された後、『約束の旅路』の邦題で2007年3月10日から一般公開された映画。
1984年、スーダンの難民キャンプにいるエチオピアのユダヤ人を、 イスラエルとアメリカの援助で秘密裏にイスラエルに移民させた「モーゼ計画」。難民キャンプで、あるキリスト教徒の母親が我が子だけでも助けたいと、 9歳の息子にシュロモというユダヤ名を教え込み、 ユダヤ女性に託してイスラエルに逃れさせた物語。
親は、永久に会えなくても、我が子の幸せを願って別れを決断できるものなのだとつくづく思いました。(咲)


戦火を逃れ、難民になり、内戦の続く故国スーダンを飛び出しアメリカに渡ったグオル。そこで走る力を認められオリンピック選手にまで上り詰められたということ自体が感激の真実だけど、2011年新しく「南スーダン」として独立した故国の期待を背負いオリンピックで走ることができたということ。こんな話を若い人たちは知ってほしい。両親とは会えたのだろうかと途中で心配しながら観ていたが、最後に再開シーンがあって、「両親は生きていたんだ」とほっとし、また涙。でも彼以外の兄弟姉妹は亡くなってしまっていたということを知り、厳しい内戦下を生き抜いて選手になったグオルに改めてよかったねと思った。
そして南スーダンの選手たちといえば、今、群馬県前橋市でもう2年も練習を続けている陸上の選手たちがいる。南スーダンでは練習ができなかったが、日本の支援者たちがクラウドファンディングで基金を募り、練習を続けている。このコロナ禍でオリンピックが延期になってしまったけど、延長して練習を続けているという。何度かTVでその姿を見たことはあったが、あまり深く考えていなかった。でもこのドキュメンタリーを観て、彼らがそういう走れる環境を手に入れて走れるよう支援している人たちが日本にもいることに、日本人も捨てたもんじゃないと感動した。そして、南スーダンは今も危機的な状態に置かれています。支援などに興味がある方は、ネットで探してみてください(暁)。

*朝日新聞デジタル記事
コロナ禍も走り続ける 南スーダン選手 異国で支えられ
写真・文 福留庸友 2020年6月24日 17時00分
https://www.asahi.com/articles/ASN6R5V37N6LUQIP03F.html?iref=pc_rellink_01

◆公開に先立ち、主人公のグオル・マリアル選手、そしてビル・ギャラガー監督
から届いたビデオメッセージを、ぜひご覧ください。

https://unitedpeople.jp/runner/archives/15755


*「南スーダン」についての解説*
グオル・マリアル選手の故郷が、「南スーダン」として、2011年にスーダンから独立するまでの過程、そして独立後も紛争の絶えない南スーダンの状況について、公式サイトに掲載されている本作アンバサダーの友成晋也氏(元JICA南スーダン事務所長、一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構代表理事)による解説文を是非お読みください。
https://unitedpeople.jp/runner/exp

◆友成晋也さんによるアフタートーク
日時:6月5日(土)、6月6日(日)13:00-上映後 約20分間を予定

2020年/アメリカ/英語/88分/カラー/16:9
配給:ユナイテッドピープル 宣伝:スリーピン
公式サイト:https://unitedpeople.jp/runner
©Bill Gallagher
★2021年6月5日(土)シアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショー



posted by sakiko at 16:28| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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