2021年05月30日

トゥルーノース(原題:True North)

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監督・脚本:清水ハン栄治
音楽:マシュー・ワイルダー
出演:ジョエル・サットン、マイケル・ササキ、ブランディン・ステニス、エミリー・ヘレス

聴衆の前に立った男性にスポットライトが当たり、語り始める。「私は12年前祖国から亡命しました。政治の話ではなく私の家族の物語です」
1995年、平壌(ピョンヤン)。9歳のヨハンは両親と妹ミヒとの4人家族。父親が政治犯の疑いで追われ、母親とヨハン、ミヒも極寒の強制収容所に入れられてしまった。ヨハンは父との「家族を守る」という約束を守ろうと何年も頑張ってきたが、あまりにも過酷な日々に心が荒んでいく。そんなとき、母が瀕死の苦しみの中で残した言葉に、ヨハンは目がさめる。

2020年の東京国際映画祭で一足早く鑑賞しました。3Dアニメーションのなめらかでリアルな絵ではなく、人も折り紙のようにカクカクとした多面体のように表現されています。観客への配慮のためにワンクッションおいてあまりにリアルにしなかったそうです。アニメにしたことで、わかりやすく子どもにも伝わります。収監されて生き延びた人や看守などに取材をし、10年かけて出来上がった作品です。苛烈な環境の中でも見上げる星空や自然は美しく、奪い合わず分け合い、互いに思いあう優しさがあったことも描かれます。観ずに敬遠するのではなくぜひ足を運んで、心揺さぶられてください。
タイトルの「True North」には「真実の北朝鮮」の意味だけでなく、「真に重要な目標/羅針盤」の意味もあります。(白)


これまで、北朝鮮を描いた映画や、脱北者の手記などで、ベールに包まれた北朝鮮の実態を垣間見てきました。
強制収容所を描いたものでは下記が印象的でした。
『北朝鮮強制収容所に生まれて』
シン・ドンヒョクさん来日報告
作品紹介
北朝鮮で政治的に粛清されたり、韓国ドラマやK-POPの動画を観たというだけで刑を受けたりというニュースも毎日のように流れてきます。
本作は、監督が10年もの年月をかけて取材した内容に基づいて作り上げたもの。アニメという形ながら、北朝鮮の実情がリアルに伝わってきます。1960年代の帰還事業で日本から北朝鮮に移民した家族が主人公。地上の楽園と騙されて北朝鮮に渡った人たちの末路に涙が出ます。北朝鮮の人たちが、いつ自分も捕らえられるかとおびえながら暮らさないで済む日が来ることを願うばかりです。(咲)


北朝鮮の政治犯強制収容所のことは、収容所内で生まれ育った脱北者シン・ドンヒョクさんを描いた『北朝鮮強制収容所に生まれて』(2014年日本公開)で、政治犯強制収容所が何ヶ所もあることを知り、本人も来日して話を聞き、実状にショックを受けたことを覚えている。こちらは「北朝鮮強制収容所」の生活をアニメで描いたもの。その分、少し強烈さは緩和され、子供たちにも観てもらえる内容になっていると思う。
1960年代の帰還事業で日本から北朝鮮に渡った家族が政治犯として強制収容所に収容され、10年に渡ってここで暮らし生きてきたことが描かれている。これまでも帰還事業で北朝鮮に渡った人たちの姿を描いた作品は、いくつもあったけど、「北朝鮮強制収容所」に‎入れられてしまった人たちを描いた作品は観たことがなかった。日本から渡った人の中で強制収容所に収監されてしまった人はどのくらいいるのだろうと思った。強制収容所は10数か所あって、収監数は12万人とも14万人とも言われているらしいが、理由もなく入れられている人はどのくらいいるのだろうか。過酷な収容生活の現実、抑圧の中でも健気に生きる北朝鮮の人々の姿。やはりこれは現実なんだろうと思う。何か救える方法はないのだろうか。こういう姿を見ると胸が苦しい(暁)。


2020年/日本・インドネシア/カラー/94分
配給:東映ビデオ
(C)2020 sumimasen
https://www.true-north.jp/
★2021年6月4日(金)より全国ロードショー



posted by shiraishi at 14:01| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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