2021年05月16日

ベルリン・アレクサンダープラッツ  原題:Berlin Alexanderplatz 

berlin alexander plats.jpg

監督:ブルハン・クルバニ  
脚本:マーティン・ベーンケ、ブルハン・クルバニ  
原作:アルフレート・デーブリーン著「ベルリン・アレクサンダー広場」(1920年)
出演:ウェルケット・ブンゲ、イェラ・ハーゼ、アルブレヒト・シュッヘ、アナベル・マンデン、ヨアヒム・クロルほか

西アフリカ・ギニアビサウ出身のフランシス(ウェルケット・ブンゲ)は、国を逃れ、難民として海を渡り、命からがらドイツにたどり着く。地底で不法に重労働に就くフランシスは、やがて麻薬売人のラインホルト(アルブレヒト・シュッヘ)のもとで働くようになる。ラインホルトのボスのプムスからは、ゴリラ呼ばわりされる。ラインホルトから荷積みの手伝いを頼まれるが、宝石店強盗だった。拒んだことから、車から突き落とされ、片腕を失う。以前クラブで知り合ったナイジェリア女性のエヴァがドイツ女性ミーツェにフランシスを看るように手配してくれて、やがてフランシスとミーツェは恋仲になり、子どもを宿す。エヴァのクラブでの仮装パーティの夜、身重のミーツェは連れていけないとフランシスは一人で出かける。ミーツェはキティの名で、アントレという男と連絡を取り合っていたが、フランシスの留守に初めてアントレと会う。アントレは実はラインホルトの別名だった。そして、その夜、悲劇が起こる・・・

「善人になりたい」と願うフランシスですが、不法滞在のドイツで、どんどん悪の世界に巻き込まれていきます。最初に働いていた地下の作業場で、同僚が負傷し救急車を呼んだことから、不法就労がばれて働けなくなります。ちなみに、この時に負傷した同僚がマスードという男性で、恐らくクルバニ監督の故国であるアフガニスタンからの難民だと思います。
働き場所を無くし、不法移民を食い物にするラインホルトの甘い誘いに乗ってしまうフランシス。最初は、売人がたむろする公園でビサウ料理のマンカラを売っていたのですが、だんだん悪の世界に引きずり込まれます。それでもなお、善人になりたいともがくフランシス・・・

原作は、1920年代に出版されたアルフレート・デーブリーンによる現代ドイツ文学の金字塔「ベルリン・アレクサンダー広場」。アフガニスタン人難民の息子として、1980年にドイツで生まれたブルハン・クルバニ監督は、独自の解釈で映画化。原作の主人公は、下層労働者でしたが、それをアフリカからの難民に設定。時代も現代にして、貧困・人種・難民の問題を盛り込んだ深みのある作品に仕上げています。(咲)


スタイリッシュで斬新なオープニングは見る者の不安を煽るが、気になって目が離せなくなる。恋人の命を救えなかったことを悔やみ、いい人間になろうと誓う男が犯罪社会へと滑り落ちていく。原作のフランツは第一次大戦を経験し、映画のフランシスは難民としてドイツに辿りついた。時代と設定を変えているが、共通して言えることはどちらもPTSDに苦しんでいるところ。善でありたいと思いつつ、ラインホルトに魅力を感じてしまい、囚われてしまう。何度も立ち止まる機会はあったはずだ。いや、彼は彼なりに踏ん張って、自分の正義を貫こうとしたのだが、どこかで何かを間違えて、いちばん大事なものを喪ってしまった。そんなフランシスはスクリーンの向こう側の人間ではない。立場や状況は違うけれど、私たちもフランシス的な部分を持っているのではないだろうか。3時間という長尺にもかかわらず、ラストに希望を感じて心地よい余韻が残る。(堀)

<ブルハン・クルバニ監督 コメント>
原作の「ベルリン・アレクサンダー広場」を読んで僕は育ちました。ベルリンに引っ越したとき、近くの公園には金持ちも黒人もいて、ただ麻薬のコミュニティは黒人の難民がほとんどでした。格差を目の当たりにし、僕は彼らに焦点を当てた物語を作りたいと考え、頭の中で難民の物語とフランツ・ビーバーコップ(「ベルリン・アレクサンダー広場」の主人公)の物語が重なりました。自慢のチームと役者たちが作った、旅をするような映画です。本作はドイツ人社会と難民の話で、そこには闇が存在する。しかし結末には希望の見える話になっています。楽しんでください。

2020年/ドイツ・オランダ/ドイツ語・英語/183分  
配給:STAR CHANNEL MOVIES  
公式サイト:https://star-ch.jp/starchannel-movies/detail_048.php
★2021年5月20日(木)よりMIRAIL(ミレール)、Amazon Prime Video、U-NEXTにてオンライン上映

☆「ドイツ映画祭 HORIZONTE 2021」上映作品
(5月開催予定が11月に延期されました)
posted by sakiko at 17:21| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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