5月21日(金)、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
劇場情報 https://theaterlist.jp/?dir=yasuragi
監督・脚本:ルイーズ・アルシャンボー
原作:ジョスリーヌ・ソシエ
撮影:マチュー・ラベルディエール
編集:リチャード・コモー
出演
ジェルトルード/マリー・デネージュ役:アンドレ・ラシャペル
チャーリー:ジルベール・シコット
トム:レミー・ジラール
テッド・ボイチョク:ケネス・ウェルシュ
ラフ(ラファエル):エブ・ランドリー
スティーヴ:エリック・ロビドゥー
ジュヌヴィエーヴ:ルイーズ・ポルタル
ケベックの森から届いた人生賛歌!
カナダ・ケベック州の人里離れた深いにある湖のほとりにたたずむ小屋で、3人の高齢の男性たちが愛犬たちと一緒に暮らしていた。歩んできた人生、それぞれの理由で社会に背を向け、人里を離れ森の中で暮らしを満喫していた。そんな彼ら世捨て人たちの前に、思いがけなく女性来訪者が現れる。その80歳の女性ジェルトルードは、少女時代に父の誤解により、不当な措置によって精神科療養所に入れられ、60年以上も外界と隔絶した生活を強いられていた。甥っ子の判断で療養所には戻さず、世捨て人たちの仲間に。彼らも最初は戸惑ったけど、だんだんに受け入れられていった。ジェルトルードはマリー・デネージュという名前で新たな人生を踏み出し、森の中の生活に慣れ、澄みきった空気の中で活力を取り戻していった。そして、それまで得られなかった「愛」を得ていくのだが、そんな温かな森の生活を揺るがす緊急事態が巻き起こり、彼らは重大な決断を迫られていく。
森での新しい出逢いと湖畔での穏やかな共同生活。80代の男女を主人公に、人生の晩年をいかに生きるかを深い森の中、詩情豊かに描く。愛と再生の物語。
『やすらぎの森』というタイトルを見て、ニヤっとした人はきっと、倉本聰脚本の「やすらぎの郷(さと)」「やすらぎの刻(とき)~道」を見ていた人でしょう。そういう私も、ここ数年、このTVドラマを毎回見ていた(録画したものだけど)。「やすらぎの郷」というのは、TV業界で活躍した人たち(俳優や脚本家、裏方の人たち)だけが入居できる老人ホームのような場所。それぞれ、この『やすらぎの森』にも出てくるコテージのような一軒家で暮らしているので、「シニア村」ともいうべき感じだった。石坂浩二、浅丘ルリ子、有馬稲子、加賀まりこ、草刈民代、五月みどり、常盤貴子、名高達男、野際陽子、藤竜也、風吹ジュン、松岡茉優、ミッキー・カーチス、八千草薫、山本圭など (※役者名50音順)そうそうたる俳優たちが出演していた。「死との向き合い」「愛情」「絆」「友情」「日本がたどってきた道・歴史」など多彩なものを盛り込み、「社会に対する批判と提言」が盛り込まれているように感じた。
これはまさに、『やすらぎの森』にも通じるもので、大いに共鳴できるものだった。詳しくは出てこなかったけど、ここに出てきた男たちも社会からドロップアウトし森の中で暮らすようになったのだろうし、ジェルトルードにいたっては、社会に出ることもなく精神科療養所に入れられ、社会とのつながりもたたれていた。
小学校の頃「ロビンソンクルーソー漂流記」を読んで、無人島や森の中で生活をすることに憧れた。そして成長してからは、東京ではなく田舎で暮らしたいと、30代後半に信州白馬で5年くらい働いていたことがある。その経験は大変だったけど幸せな体験だった。
森の生活の解放感を感受するのは若者たちだけでなく、老人たちにもあっていい。電気もガスも水道もない生活は不便だけど、解放感はなにものにもかえがたい(暁)。
毎日おうち時間を過ごして「どこかへ行きたい」と思っている方、カナダの森を見るのはいかがでしょう。森で暮らすお年寄りの静かな映画です。いろんな体験や思いを胸に齢を重ねてきた人たちが、自然の中で最後の時間を過ごしています。カナダの名優と言われるベテラン俳優たちが演じ、ジェルトルード役のアンドレ・ラシャペルはこれが遺作となりました(2019年11月88歳で逝去)。
森の生活に加わったジェルトルードは、名前をマリーと変えて新しい人生を始めます。マリーが取り戻した人生には友人も愛する人もいます。シニアのラブシーンは映画の中でもあまり描かれません。美しくて幸せなひとときがそこにありました。
劇中で「時は来る♪時は来る♪」と歌われます。こうしている間にも一日一日過ぎていき、人は老いていきます。明日目覚めないかもしれません。1970年生まれのルイーズ・アルシャンボー監督は良い原作と名優を得て、美しい自然と時間を切り取りました。(白)
『やすらぎの森』公式HP
原作:「Il Pleuvait des Oiseaux」ジョスリーヌ・ソシエ著
2019/カナダ/フランス語/スコープサイズ/カラー/5.1ch/126分/映倫:G
日本語字幕:手束紀子
後援:カナダ大使館、ケベック州政府在日事務所
配給・宣伝:エスパース・サロウ
公式サイト https://yasuragi.espace-sarou.com/index.html
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