2021年05月15日

茜色に焼かれる

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監督・脚本・編集:石井裕也
撮影:鎌苅洋一
音楽:河野丈洋
主題歌:GOING UNDER GROUND「ハートビート」
出演:尾野真千子(田中良子)、和田庵(田中純平)、片山友希(ケイ)、大塚ヒロタ(熊木直樹)、芹澤興人(滝)、笠原秀幸(斉木)、泉澤祐希 (教師)、前田勝(ケイの彼氏)、コージ・トクダ(店長)、前田亜季(幸子)、鶴見辰吾(有島耕)、嶋田久作(成原)、オダギリジョー(田中陽一)、永瀬正敏(中村)

田中良子の夫・陽一は7年前事故死した。自転車で横断歩道を渡っていて、85歳の元官僚の車にはねられたのだ。夫を死なせた老人は認知症だったからと逮捕すらされなかった。一人息子の純平と残された良子は謝罪しなかった加害者から賠償金も受け取らず、必死に働いて息子を育ててきた。義父の入っている老人ホームの料金も家計を圧迫する。頼みのカフェはコロナ禍でつぶれ、スーパーのパートの他、息子には内緒でピンクサロンでも働く。同僚のケイは糖尿病でインスリン注射が欠かせず、愚痴をこぼしながらこの仕事をしている。ケイが解せないのは、陽一がほかの女性との間に作った子どもの養育費まで良子が払い続けていることだ。

息子や友達に良子がよく言うのが「まあ頑張りましょう」。息子の純平は良子がピンサロで働いていることで、級友のいじめに遭っています。母親の頑張りを見て育った彼は、決してそのことを口に出しません。良子が加害者の葬式に出席しようとして門前払いをくったときだけは、なんで?と尋ねます。
観ていて「なんで?」と私も思いました。葬式じゃなくて。「夫は戻ってこないけど」と賠償金を受け取り、大事に使えば風俗で働かなくても純平と食べて行けるのに。それをしないことが良子の「背骨」であり、夫の娘への養育費も良子なりの「筋を通す」ことなんだろうと。これは石井監督の「母親」への憧憬と愛情ですよね。凛々しくてまっすぐで、「頑張りましょう」と言ってくれる人=世の母親へのエール。
尾野真千子さん、今回もしっかりした女性役です。面白いのは良子が劇団出身で「芝居が真実」というところ。問題山積みでせち辛い世間を舞台に、日々演じることで生きてきたことが「なんで」の答えになります。
父親はオダギリジョーさん。生活力はなさそうなのに、浮気して子どもまで残して、ヘラヘラしたまんまいなくなっています。『アジアの天使』(7月2日公開)でもヘラヘラ役でしたが、彼が演じるとどうも憎めなくなってズルイ~。その分永瀬さんがお助け神のごとく現れて男気を見せました。(白)


「母ちゃんは、時々意味わからない、難しい人だ」と息子がつぶやくように、田中良子の行動は一般常識では考えられないもの。交通事故の賠償金を受け取っていれば、風俗で働く必要もないのにと思うのですが、尾野真千子さんが演じたことによって、田中良子の生き方に納得させられてしまいます。
コロナ禍で製作された本作。良子が働くスーパーの花売り場の担当者は、上司からコロナでバイトがなくなった取引先の娘の為に、一人解雇しろと言われ、良子が売れ残った花を持ち帰ったのは規則違反、店の前で電話したのも規則違反と難癖をつけて解雇を告げます。「解雇は2か月前に伝えるのが規則では?」と返す良子。理不尽なことには黙っていられないのです。
このような母親に育てられた純平くん。これまた和田庵くんが、好青年を体現しています。良子の同僚のケイが、もう少し年がいっていれば本気で惚れてしまうと言うほど! 闘病しながら風俗で務めるケイを演じた片山友希さんも好演で、なんとも切なかったです。(咲)

夫役のオダギリジョーが事故死してしまう、池袋で起きた元官僚の過失運転事故をモチーフにしたエピソードから始まり、新型コロナの影響で経営していた喫茶店の倒産、賃金格差の問題、高齢者介護(義父のための施設費負担)、風俗での状況、DV被害、パートの不安定雇用と理不尽な雇止め、学校での子どものいじめ、かつての同級生との不倫などなど、今の社会で問題、話題になっていることが、これでもかこれでもかと出てきて、生きづらい世の中がリアルに描かれ、その対応や表現に前半はイライラしながら観ていた。
「謝まるのが先でしょ。お金で解決すればいいという問題ではない」という気持ちもわかるけど、交通事故の賠償金を受け取らず風俗で働くという設定に「なんで?」と思ったし、義父の施設費を毎月16万円負担、夫が外に作った子供の生活費を7万も負担しているというのはもっとわからない。なぜ自分ひとりで背負っているのか。あまりにも理不尽。そして、最後に爆発というのも、そりゃあそうでしょと思ってしまう。でもその矛先が同級生? なんか違うんじゃないの?と思ってしまった。弱者に寄り添った映画なのかもしれないけど、その解決や対応の方法、描き方、これでいいの?という気分。こんな理不尽だらけの世の中でも 必死に生きる女たちのシスターフッドが描かれていて、そこは悪くはなかったんだけど、なんかひっかかってしまった。
石井監督の作品、このところいくつか観ているけど、『生きちゃった』にしても『アジアの天使』にしても、なんだかすっきり、はっきりしない人が出てきてイライラしてしまい、なんか共感できない人物像が多いと感じてしまう。今の社会の理不尽さに何か言いたいのはわかるのだけど。観終わった後、気持ちよく帰れる映画もぜひよろしくお願いします(暁)。


2021年/日本/カラー/シネスコ/144分/R15+
配給:フィルムランド、朝日新聞社、スターサンズ
(C)2021「茜色に焼かれる」フィルムパートナーズ
https://akaneiro-movie.com/
★2021年5月21日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開




posted by shiraishi at 18:46| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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