2021年05月09日
ファーザー(原題:The Father)
監督・原作:フロリアン・ゼレール
脚本:クリストファー・ハンプトン、フロリアン・ゼレール
撮影:ベン・スミサード
美術:ピーター・フランシス
出演:アンソニー・ホプキンス(アンソニー)、オリヴィア・コールマン(アン)、マーク・ゲイティス(男)、イモージェン・プーツ(ローラ)、ルーファス・シーウェル(ポール)、オリヴィア・ウィリアムズ(女)
81歳のアンソニーはロンドンで独り暮らしを送っている。健康だけれども記憶が薄れ始めてきた。父を案じる娘のアンが手配した介護人を拒否して追い返している。本人には言わないが、内心ではおおいに頼っているアンが恋人とパリで暮らすというのにショックを受けている。
それでは、アンソニーの自宅に現れ「アンと結婚して10年以上になる」と語る男は誰?恋人のポールはこんな顔だったろうか? アンソニーのもう一人の娘、最愛のルーシーはどこに消えたのだろう?現実と幻想がまじりあい、アンソニーの記憶は混沌としていく。
1937年12月31日生まれのアンソニー・ホプキンスが「同じ誕生日、同じ名前のアンソニー」として映画の中に存在しています。彼は認知症を患っている自分の状態を認められません。身体が動けるうちは一人で気ままに暮らしたい、とは誰もが思うことです。
父を心から案じるアンですが、自分の人生も大切にしたいと思っています。アンがどれだけ父を思おうと、アンソニーの口にのぼるのはお気に入りだった妹のルーシーのことばかりです。若い介護人ローラが、ルーシーに似ていると言って浮かれ、上機嫌の父を見守るアンの心情はいかばかりでしょう。
アンソニーの心の動きの通りに、幻想と現実の生活のシーンが交互に現れるので、最初は観客も混乱します。進むに従って「そういうことだったのか」と納得できます。認知症の方の脳内を「見える化」するとこうなるわけですね。
元は舞台劇。戯曲を手掛けたフロリアン・ゼレールが自ら初監督・共同脚本。ほぼ部屋の中だけで進み、登場人物も6人だけです。動きの少ないアンソニーを中心にしてカメラもあまり動きません。名優二人の競演と、背景になるアンソニーの部屋、アンの部屋の色合いが変わっていくのにもぜひご注目ください。日本でも橋爪功主演で2019年公演があったそうで、それも観たかったなぁ。
アンソニー・ホプキンスが、本年のアカデミー賞主演男優賞を最高齢で受賞しました。(白)
2020年/イギリス・フランス合作/カラー/シネスコ/97分
配給:ショウゲート
(C)NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINE-@ ORANGE STUDIO 2020
https://thefather.jp/
★2021年5月14日(金)全国公開
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