2021年04月29日

海辺の彼女たち

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脚本・監督・編集:藤元明緒
撮影監督:岸建太朗
プロデューサー:渡邉一孝、ジョシュ・レビィ、ヌエン・ル・ハン
出演:ホアン・フォン、フィン・トゥエ・アン、クィン・ニュー他

ベトナムから来た3人の女性、アン、ニュー、フォン。彼女たちは日本で技能実習生として働いていたが、ある夜、過酷な職場からの脱走を図った。ブローカーを頼りに、辿り着いたのは雪深い港町。パスポートも身分証も前の職場に置いたまま。不法就労がわかるとベトナムに送り返されてしまう。3人は怯えながらも、故郷にいる家族のため、幸せな未来のために懸命に働き始めるが、フォンの体調が悪くなる。病院に行きたくとも、身分証も保険証もない。アンとニューも付き添って町の医院に出向くが、やはり書類がなくては診てもらえなかった。

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親の借金を返すため、弟妹の学費のため、家族や自分の未来のために日本に働きに来たベトナム人女性たちのストーリー。研修とは名ばかりの「安い労働力」として酷使されている外国からの研修生/実習生たち。少ない台詞ながら雄弁に物語る彼女たちの表情。密着するカメラの力と繊細な演出と演技、音楽もナレーションも説明もなくても、訴えてくる力があります。現場の生活音や風や波の音も効果的です。見慣れないキャストのせいもあって、ドキュメンタリーと勘違いしそうなほどリアルでした。
作品がフィクションではあっても、丁寧なリサーチの末の描写と思うと、彼女たちの状況に胸がつまります。日本に暮らす研修生/実習生、出稼ぎの方々に労働に見合った賃金が支払われ、一人ひとりが尊重され、辛い思いをすることがありませんように。
コロナ禍の今、派遣のためクビになったり、仕事先が倒産したりと困難な目に遭っている方々も多いはずです。声をあげられない人たちみんなの身近な問題でもありました。
『僕の帰る場所』(2018)で日本で暮らすミャンマー人家族を描いた藤元監督の最新作です。インタビューを前編、後編に分けてお届けします。(白)


藤元明緒監督インタビュー前編はこちらです。
後編はこちら
です。

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藤元明緒監督(撮影:宮崎)

藤元明緒監督たちのクルーは、前作はミャンマーと日本との関係を描いた『僕の帰る場所』を製作し、最新作『海辺の彼女たち』ではベトナム人を主人公に日本での労働環境、働いている状況について描く映画を作りました。これまでも、フィリピン、中国、タイなど、日本で就労や技能実習生として働く人々がいて、同じように借金を抱えて日本にきて働いている人はいました。そして最近はベトナムからの技能実習生が多くなっている現状を、この映画は捉えています。実習生とは名ばかりで、だまされて借金を背負わされ安い給料で働かされている人たちが多い現状。その結果、失踪したり、不法就労も増えています。ブラジルや南米からの日系人就労者も含め、様々な形での外国からの労働力がなければ工業、農業、介護の現場など、成り立たない日本。スーパーで売っている安価な商品も、つきつめれば彼女たちのような外国から働きに来ている人たちが安い給料で働いているからだと思います。
外国から日本に働きに来た人たちを搾取する人たちの存在をなんとかできないものかと、常々思うのだけど、公共事業のようなかたちでできないのでしょうか。民間に振っておいて、国は見て見ぬふりをしているとしか思えないのです。少なくとも自国で借金を背負わせたまま日本に来るという形をなんとかできないのでしょうか。そんなことを思わせてくれる映画でした。韓国も以前はそうだったけれど、今は国が外国からの労働者の受け入れ事業をしていると最近の新聞に載っていましたが、本当だろうか。もしそうなら日本でも、そういう形ができるのではないかかしら。監督たちはこの映画を作ることで、外国から来て働いている人たちの現状を知らせてくれている。その思いにどんなかたちで私たちはエールを送ることができるか、観客の人たちもぜひ考えてほしい(暁)。


2020/日本=ベトナム/カラー/88分/ベトナム語・日本語
©2020 E.x.N K.K. / ever rolling films
https://umikano.com/
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★2021年5月1日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開
◎コロナ禍のため、ポレポレ東中野でが座席を半分にして上映しています。チケットがネット販売で売り切れる場合もあるので、問い合わせてからお出かけください。

★ミャンマーチャリティー上映
『僕の帰る場所』ポレポレ東中野にて1週間の再上映です。
 5.22(土)〜28(金)※時間未定

posted by shiraishi at 14:19| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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