2021年04月18日
風が踊る [デジタルリマスター版](原題:風兒踢踏踩)
監督・脚本:ホウ・シャオシェン
出演:フォン・フェイフェイ、ケニー・ビー、アンソニー・チャン、メイ・ファン
CMの撮影で澎湖島を訪れた女性カメラマン・シンホエ(フォン・フェイフェイ)は、事故で視力を失った青年チンタイ(ケニー・ビー)と知り合う。その後ふたりは台北で偶然再会を果たし、シンホエはなにかとチンタイの世話を焼いてしまう。チンタイは角膜移植が決まり、成功すれば目が見えるようになる。シンホエはCM監督のローザイ(アンソニー・チャン)と結婚する予定だったが、チンタイの人柄に惹かれていき、どちらにもはっきり伝えることができない。
「台湾巨匠傑作選2021_侯孝賢監督デビュー40周年記念<ホウ・シャオシェン大特集>」のうちの1本。公開当時はまだ香港のエンタメ作品を観ていて、台湾モノは後回し。このたび初めて観た作品です。香港映画でお馴染みのケニー・ビー、アンソニー・チャンが出演していて、あらまあと懐かしくなりました。当時アイドルだったというフォン・フェイフェイが、ちゃっかりして明るいシンホエに扮して可愛らしいです。服装や笑いをとるところが時代を感じさせますが、澎湖島や台北、シンホエの故郷の鹿谷の暮らしが垣間見られます。親と娘、男性と女性の結婚観など、今も昔も変わらないエピソードが織り込まれています。(白)
『風が踊る』(1981年)は、ホウ・シャオシェン監督のデビュー作『ステキな彼女』(1980年)と同時期に観た記憶がありました。調べてみたら、日本初公開は『風が踊る』1998年2月14日、『ステキな彼女』1998年2月7日でした。
どちらの作品にも、フォン・フェイフェイ、ケニー・ビー、アンソニー・チャンの3人が出ていて、観た当時、話がなんだかごちゃまぜに記憶されたように思います。
はっきり覚えているのは、阿B(ケニー・ビー)が爽やかだったということだけ。
ケニー・ビーも、アンソニー・チャンも、ウィナーズ(温拿)という1970年代に「香港のビートルズ」とも言われて人気だった5人組のメンバー。私がレスリー・チャンに落ちる前にファンだったアラン・タムがウィナーズのボーカルなので、映画を観たときに二人を知っていた次第。
『ステキな彼女』『風が踊る』の2本を1998年に観て、それからしばらくして香港に行った時に、たまたまウィナーズの再結成コンサートを香港コロシアムでやってました。空いていた席が、ステージの真後ろ。彼らの背中を見る位置だったのですが、ちゃんと時々振り返って顔を見せてくれました。
今回、23年ぶりに『風が踊る』を観たわけですが、最初はほんとに観たのかしらと思う位、記憶が蘇りませんでした。絶対観た!と、確信を持てたのが、ケニー・ビー演じるチンタイが、目の見えない人たちの為に読み聞かせを頼んでいる人の都合が悪くて、急遽、シンホエを連れていって、本(カラマーゾフの兄弟!)を読んでもらった場面。目の見えない人たちが一生懸命点字タイプを打ちながら聞いている姿をはっきりと覚えていました。
今回の<ホウ・シャオシェン大特集>の中に、『ステキな彼女』はありませんが、こちらもいつかまた観てみたいです。(咲)
中華圏の監督としては侯孝賢監督の作品が一番好きな時期もありました。特に初期の頃の抒情性のあるノスタルジックな作品が好きでした。なので、日本で観ることができた作品はほとんど観ていたので、この作品も観ていたつもりだったのですが、試写で確認したら観たことがなく、今回のリマスター版で初めて観ました。
この作品は侯孝賢監督の2作目の作品。1981年の作品で、服装や髪形、風俗、村や町の雰囲気、乗り物、建物などに時代を感じますが、侯孝賢の作品に流れる映画の雰囲気、ほっこりさせるものがありました。侯孝賢監督の作品といえば、海辺や山間部の田舎町、いたずら好きな子供たち、その子供たちの失敗、あるいはずっこけ風景、学校、授業風景、緑が多いところを走るローカル線、古い列車、単線の線路、バイクの疾走、そんなシーンを思い浮かべますが、その後の作品につながる片りんもたくさん出てきました。
第一作目の『ステキな彼女』同様、当時人気歌手だった鳳飛飛(フォン・フェイフェイ)と鐘鎭濤(ケニー・ビー)、それに陳友(アンソニー・チェン)が出演していたけど、まだそんなに名を知られていない侯孝賢監督の作品に、そういう人たちが出ていたということが今となっては驚き。あるいはそういう人たちが出てくれたことで、監督の名が知られるようになっていった部分もあるのか? 私は『悲情城市』で侯孝賢監督のことを初めて知ったので、あの頃の台湾や香港の芸能界事情にはうとかったから、そのへんのいきさつとかはわからない。
でも侯孝賢監督には先見の明というか、撮影地を後に有名にさせる何かがあるのかも。撮影クルーがCM 撮影のために訪れた澎湖(ポンフー)島。この島はのちの『風櫃(フンクイ)の少年』の撮影地にもなりました。映画に写っていたのはひなびた島だったけど、今やこの島は観光地として賑わっているらしい。『悲情城市』に出てきた九份も、金山の賑わいが去って、寂れた街だったけど、この映画以降ここも観光地になり、今や観光客がたくさん訪れ、土日は人込みがすごくて歩くのも思うようにいかない状態になっている。『恋恋風塵』に出てきた十分駅や駅のそばの列車が人家すれすれに走っていた十分老街も、今やお土産屋が並ぶ一大観光地になっている。侯孝賢監督作品が好きで、撮影地である九份と十分は、これらの映画以降5回も訪れた私です(笑)。大好きな侯孝賢監督の映画でしたが、残念ながら『好男好女』あたりからあまり好きではなくなりました(暁)。
1981 年/台湾/シネスコ/92 分
原題:風兒踢踏踩
英題:Cheerful Wind ©1982 Kam Sai (H.K.) Company /
© 2018 Taiwan Film Institute. All rights reserved.
配給:オリオフィルムズ
提供:竹書房/オリオフィルムズ
https://taiwan-kyosho2021.com/
★2021年4月17日(土)より~6 月 11 日(金) 新宿 K’s cinema 他順次上映
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