2021年04月04日
アンモナイトの目覚め 原題:Ammonite
監督・脚本:フランシス・リー(『ゴッズ・オウン・カントリー』)
出演:ケイト・ウィンスレット(『愛を読むひと』)、シアーシャ・ローナン(『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』)、ジェマ・ジョーンズ、ジェームズ・マッカードル、アレック・セカレアヌ、フィオナ・ショウ
英国女性メアリー・アニング。
ダーウィンの進化論の理論形成にも影響を与えたともいわれる研究を成し遂げながら、女性故に死の直前まで認められなかった。
本作は、メアリー・アニングにインスパイアされて、想像力たくましく描いた物語。
1840年代、イギリス南西部の海辺の町ライム・レジス。
石のごろつく海岸で、化石を探すメアリー。13歳の時に魚竜イクチオサウルスの化石を発掘した栄光も過去のものとなり、今は観光客の土産物用アンモナイトを探して生活の糧としている。老いた母(ジェマ・ジョーンズ)との二人暮らしだ。
そんなある日、ロンドンから化石収集家のロデリック・マーチソン(ジェームズ・マッカードル)が、妻のシャーロット(シアーシャ・ローナン)を伴ってやってくる。ロデリックは、アンモナイトを高額で購入し、採集に同行させてほしいと頼む。メアリーは独学だが古生物学者として知られているのだ。
ロデリックがロンドンに帰る日、流産した妻をこの町でしばらく静養させるので、相手をしてやってほしいと頼まれる。人付き合いの苦手なメアリーにとって迷惑な話だったが、謝礼をはずまれ嫌といえなかった。化石の採集についてくるシャーロットが、メアリーには鬱陶しい。海に入り、高熱をだして倒れてしまうシャーロット。家で献身的に介抱するうち、二人は心を通わせていく。
往診に来ていた医師から、自宅で開く音楽会に招かれる。すぐに上流階級の輪の中に溶け込むシャーロット。かつてメアリーと関係のあったエリザベス・フィルポット(フィオナ・ショウ)とも、打ち解けている姿を見て、メアリーは一人先に帰ってしまう。
翌日、海辺から大きな化石を二人で運び出し、価値ある発見を喜ぶとともにお互いの気持ちに気づく。やがて、シャーロットがロンドンに帰る日がくる・・・
メアリー・アニング
1799年5月21日、イギリス南西部ドーセット州ライム・レジス生まれ。1847年没。
家計のために観光客向けの化石採集をしていた家具職人の父に化石発掘を教わる。
1810年に父が急死。学校にも行けなくなり、兄ジョセフと家計を支える。
1811年、13歳の時、イクチオサウルスの世界初の全身化石を発掘。
独学で地質学や解剖学を学び、さらに多くの化石を発見するが、女性で労働者階級のメアリーは論文発表も学会入会も認められなかった。
彼女の死の直前、ロンドン地質学会は彼女を名誉会員に認定。
彼女の死後163年の時を経た2010年、王立協会はメアリーを「科学の歴史に最も影響を与えた英国女性10人」の1人に選んでいる。(映画公式サイトより抜粋)
13歳の時に発掘した魚竜イクチオサウルスの化石が大英博物館に展示される時に、「発掘者メアリー・アニング」の名札が外され、寄贈者の名札に変えられるところから映画は始まります。男性優位の階級社会で、女性というだけで認められなかった時代。しかもメアリーは労働者階級。亡くなってから163年も経って、栄誉を与えられたことを天国のメアリーはどんな風に思っていることでしょう。
本作誕生のきっかけは、フランシス・リーの恋人の誕生日。彼は、化石や鉱物好きな彼氏へのプレゼントを探している中で、何度もメアリー・アニングの名前を目にし、彼女の功績を知ります。ですが、メアリーがどんな人生を送ったかの記録はほとんど見つからなかったそうです。フランシス・リーは、メアリーの自伝を作りたかったわけではないと語っています。彼自身の階級やジェンダーへの思いが強く反映された物語を紡いだのだと感じます。
男性優位の社会の中でかき消されてしまったメアリー・アニングの存在を、映画という形で遺したかったのはわかるのですが、メアリーが性的マイノリティだったかどうかは不明。これまた、メアリーは映画を観て、どう思うでしょう・・・(咲)
女性は能力があっても自分の名前では評価されない。イクチオサウルスの世界初の全身化石を発掘し、大英博物館に展示されても、自分の名前ではなく、寄贈者の名前が記される。そういえば、この作品と同じくGAGAが配給した『燃ゆる女の肖像』も主人公は画家として絵を描いても認められず、父親の名前で出品していたはず。そういう時代とはいえ、何と理不尽なことか。しかし声高に不満を訴えることさえできない。男性から軽んじられる女性の鬱憤がケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンの視線や仕草で繊細に伝わってくる。一方で。やるせなさで共鳴し合った主人公2人が肉体的にも共鳴するシーンは荒々しささえ感じるほど大胆に描かれている。フランシス・リー監督の緩急あふれる演出が最近よく見かける同じようなテーマの作品と一線を画す。(堀)
2020年/イギリス/118分/1chデジタル.5/ビスタ/カラー 字幕翻訳:稲田嵯裕里
配給:ギャガ
(C) The British Film Institute, The British Broadcasting Corporation & Fossil Films Limited 2019
公式サイト:https://gaga.ne.jp/ammonite/
★2021年4月9日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか、全国順次公開
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