2021年04月04日

椿の庭

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監督・脚本・撮影:上田義彦
音楽:中川俊郎
音楽プロデューサー:ケンタロー
出演:
富司純子、沈 恩敬(シム・ウンギョン)
田辺誠一、清水綋治
張 震(チャン・チェン)特別出演
鈴木京香

海を見下ろす葉山の高台に佇む風情ある古い家。手入れの行き届いた庭の木々が美しい。
絹子(富司純子)は夫の四十九日の法要を終え、ひと息つく。法要のため東京から実家に帰っていた次女・陶子(鈴木京香)は、老いた母が、この家で孫娘・渚(沈恩敬)と二人きりで暮らすことを心配して、東京で一緒に暮らそうという。夫や家族との思い出が詰まった家は離れがたい。
ある日、税理士の黄(張震)より、相続税の問題から家を手放すことを勧められる。大事にしてくれる人に買ってもらうと言って、人を連れて下見にくる・・・

サントリー、資生堂、TOYOTAなど数多くの広告写真を手掛けてきた写真家 上田義彦の初監督作品。
藤の花、紫陽花、蝉の声、牡丹、椿・・・、何年も、この家で絹子が家族とともに眺めてきた季節の移ろいを味わい深く捉えています。
チャン・チェンの起用が何より気になりました。『牯嶺街少年殺人事件』の少年が、『ブエノスアイレス』で爽やかな青年となり、本作では中年の域に入った税理士! 
なぜシム・ウンギョン?と思ったら、駆け落ちして海を渡った長女の忘れ形見という役どころでした。

切なく、いろいろなことを思い出した映画でした。
絹子がくつろぐとき、夫も好きだったとかける曲「トライ・トゥー・リメンバー」は、もう50年も前、高校生の時に憧れの君の鎌倉の家で聴かせてもらったブラーザース・フォアのアルバムに入っていた曲。(できれば、花にちなんで「七つの水仙」をかけてほしかった!)

チラシ画像にもある、沓脱石(くつぬぎいし:縁側から庭に降りるところにある大きな石)には、母方の祖父が昭和6年に建てた神戸の家を思い出しました。私が生まれ、15歳まで育った家。贅を尽くした和風+洋風建築の家でしたが、東京に越して数年後、東京で家を買う為に母は泣く泣く手放しました。もう跡形もありませんが、子ども時代のことと共に、隅々まで蘇ります。庭に四季折々に咲いた花のことも。
モノはなくなっても、思い出が人生を豊かにしてくれるとつくづく思わせてくれた映画でした。(咲)


前情報なしで試写を観て、静かな画面に家庭画報とかミセスとかのグラビアみたい、と思っていました。監督は写真を撮る方だったんですね。家の作りや調度、ちょっと置かれている小物が素敵でした。そこに夫の思い出と住む絹子役の富司純子さんの佇まいも美しく、品良いお召し物はきっとご自分の着慣れたもの(当たり)。3世代の女性それぞれに気持ちを重ねながら観ることでしょう。四季折々の庭の変化も愛でて、こんな風に年をとれたらいいなぁと、現実とは程遠いことを考えました。(白)

四季折々の庭や古いけれど手入れが行き届いた日本家屋が静謐な時間の中で見事に映し出されます。監督の美的センスはさすが写真界の巨匠! まるで絵画のようです。蒸れた土の匂いまで伝わってくる気がする。そこに凛とした姿勢で佇む富司純子がこれまた素晴らしい。しかし、家も庭もそして人間も時間を掛けて手を入れてきたからこその美しさです。お金を掛ければ手に入れられるものではありません。こんな風に歳を重ねたいものです。
そうそう監督の奥さまは桐島かれん。彼女がプロデュースする「ハウス オブ ロータス」のHPにこの作品で舞台となった家で撮影したのではないかと思われる写真がありました。(堀)


2020年/日本/128分/5.1ch/アメリカンビスタ/カラー
配給:ビターズ・エンド 
©2020 "A Garden of Camellias" Film Partners
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/tsubaki/
★2021年4月9日(金)よりシネスイッチ銀座ほか、全国順次公開

posted by sakiko at 12:55| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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