2021年03月21日

きまじめ楽隊のぼんやり戦争

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監督・脚本・編集・絵:池田暁
撮影:池田直矢
音楽:かみむら周平
出演:前原滉(露木)、今野浩喜(藤間)、中島広稀(三戸)、清水尚弥(平一)、橋本マナミ(春子)、矢部太郎(仁科)、片桐はいり(城子)、嶋田久作(板橋)、きたろう(伊達)、竹中直人(大木)、石橋蓮司(夏目町長)

川を挟んだ津平町と太原町。二つの町は毎日「朝9時から夕方5時まで」規則正しく戦争をしている。いったいいつから、なんのために戦っているのか、もはや誰もわからない。川向うはとても怖いらしい、ということだけ囁かれている。露木は川岸に出勤し、昼はきまぐれおばさんの定食屋へ、夕方は物知りな総菜屋のおじさんの煮物を買って後は眠って明日に備える。突然音楽隊に異動になった露木は、トランペットを取り出して出動するが、どこにいけばいいのだろう?川岸に行ってみると向こうから音楽が聞こえてきた。

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不思議な映画を観てしまいました。台詞は棒読み、登場人物は戦争中のせいか表情に乏しく、喜怒哀楽を表に出しません。誰がいるのか見たこともない隣町との戦争を日課に、町民たちは日々生きていきます。戦う相手はただただ怖い悪いヤツ、我々と同じ人間だなどとつゆほども思ってはいけません。「なんで?」と叫ぶ人は誰もいません。すごくヘン、不条理なんですが、これは今の私たちのこと?と疑いがわくと限りなくそう思えます。
戦争に疑問を持たずに、粛々と上の言う通りに出動する町民、喋ったはしから記憶がなくなる町長。今もいますね。個性的な俳優陣が個性的な監督のもと繰り広げる、面白くてやがて悲しい物語。ご飯てんこ盛り(減らすこともあり)おばさんの食堂が好きです。
ぼんやりするのはやめましょう。チコちゃんに叱られる、んじゃなく考えないと命にかかわります。(白)


俳優たちが棒読み、無表情で毎日、決まったことを繰り返す。自分で考え、判断することをせず、それに疑問を感じない。初めこそ違和感があったものの、しばらくするうちに慣れてしまった。もしかしたら、私も彼らと同じように考えることを放棄してしまったのかもしれない。みんながこんな風になってしまったら、国のトップは何だってできてしまう。危険な方向に進んでしまう可能性だってある。これこそが監督が伝えたかった怖さなのではないだろうか。危ない、危ない。(堀)

対岸は悪者と信じ込んで毎日規則的に戦う人々の姿がとても奇妙で笑ってしまいますが、笑い事ではありません。かつて鬼畜米英といって日本国民を戦争に動員させたのをまず思い起こしてしまいました。そして、今も世界では、敵をしつらえて戦争に民を駆り立てる権力者は後をたちません。まずは知らない世界にいる相手を理解し、お互い、違いを認め合うことから始めなければ!
いざ出陣の時にNHKドラマ「阿修羅のごとく」でお馴染みになったトルコの軍楽「ジェッディン・デデン」が奏でられ、もの悲しく響きました。(咲)


毎日、毎日、9時~5時まで戦争に通う。戦場はどこなのか。戦争相手は川向うの町というけど、相手の姿は見えず。無意味な戦い?を続けている。なんの情報もないまま見始めたけど、最初は「何この映画」何を表しているの?何を言いたいの?と思ってしまった。途中から、この奇妙な映画のおかしさ、現代社会に対するおちょくり方、皮肉の表現に、思わず「見事」と思った。何の疑問も持たずにぼんやり毎日を送っていたら戦争になっていたということにならないように、皆さんいろいろなことに興味をもっていきましょう。癖のある俳優たちの起用と奇妙な行動。よけいおかしかった。でもそこまで行くまでが苦痛だった(笑)。途中で帰りたいと思ってしまった(暁)。

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2020年/日本/カラー/シネスコ/105分
配給:ビターズ・エンド
企画・製作:映像産業振興機構(VIPO) 
制作協力:東映東京撮影所 
共同事業幹事:カルチュア・エンタテインメント
(C)2020「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」フィルムプロジェクト
http://www.bitters.co.jp/kimabon/
★2021年3月26日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー

posted by shiraishi at 00:02| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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