2021年02月19日
あのこは貴族
監督・脚本:岨手由貴子
原作:山内マリコ(集英社文庫)
撮影:佐々木靖之
音楽:渡邊琢磨
出演:門脇麦(榛原華子)、水原希子(時岡美紀)、高良健吾(青木幸一郎)、石橋静河(相良逸子)、山下リオ(平田里英)、篠原ゆき子、石橋けい、山中崇、高橋ひとみ、津嘉山正種、銀粉蝶
同じ空の下、私たちは違う階層(セカイ)を生きている。
東京に生まれ、何不自由なく育った箱入り娘の華子。「結婚=幸せ」と疑うこともなかった。ところが20代後半になって結婚を考えていた恋人に去られ、あらゆる伝手をたどって結婚相手探しに奔走する。幾度か失敗した後、弁護士の幸一郎と出会う。ハンサムで人あたりも良く、しかも政治家も輩出している良家の出だった。
一方、富山で生まれ育ち、猛勉強して東京の名門私立大学に進学した美紀。学費が続かず、夜の街でバイトを始めるが両立できずに中退してしまった。現在の仕事にやりがいも見いだせず、なぜ東京にいるのかもわからなくなっている。幸一郎の同期生だったことから、同じ東京に住みながら別世界にいる華子と出会うことになった。
華子の家族の話や美紀の学生時代の思い出を観ているうちに、ふだん気にしなかった格差や分断が見えてきます。地方から東京の私大に入学した美紀や里英が、内部生(附属からの学生)たちとの違いをあげるシーン、地方で生まれたぼやきのシーンなどに、「そうだよねぇ」とやはり地方出身の私も共感。華子の家族の会話のはしばしには、あちらのセカイが見え隠れします。そちらには「ふーん、そうなんだ」。3人姉妹の末っ子でおっとり育ち、自分のセカイに疑問も持たず、そこからはみ出ることもなかった華子が、どんなときにちょっと変わるのかどう変わったのか、気になって見つめてしまいました。
対照的な華子と美紀を演じた門脇麦さんと水原希子さん、なぜこのお二人を選んだのか、セカイの違いをどこでどう表現したのか、あれこれを岨手由貴子監督に伺いました。(白)
この映画を観ていて思い出したのが、小学校1年の時からの幼馴染のY子ちゃん。結婚式で私とは違う階層なのを実感しました。お相手は旧財閥の御曹司。阪神間の良家の子女が集う同好会で出会い、恋愛結婚。披露宴に招かれた300人程は、親戚、友人、そして小学校から大学までのお世話になった先生方。親の仕事関係の方は一切なし。引き出物は、高さ2cm位の薄い箱に入ったアフタヌーンティーの2段のお皿に、神戸の老舗洋菓子店のお菓子。嵩張らない配慮もお上品でした。その後、彼女は材料費にお金のかかる趣味を極めて、今や講師に。この物語でも、それぞれ育った環境の中で人生を歩んでいきます。華子もお嬢様という枠の中で、それを当然と生きてきたのですが、違う世界もあることに気づいてから、自我に目覚めます。華子と同じ階層でも、石橋静河さん演じるヴァイオリニストの逸子が、結婚=幸せにこだわらず、自分らしさを貫いている女性でカッコいいです。
幸一郎演じた高良健吾さんも良家の子息らしくて素敵です。肝心の時に、なぜか雨男なのは(白)さんの監督インタビュ―で、ぜひご確認ください。 (咲)
2021年/日本/カラー/シネスコ/124分
配給:東京テアトル、バンダイナムコアーツ
(C)山内マリコ/集英社・「あのこは貴族」製作委員会
https://anokohakizoku-movie.com/
★2021年2月26日(金)全国公開
★岨手由紀子監督インタビューはこちらです。
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