監督・脚本:高橋伴明
原作・医療監修:長尾和宏
撮影・照明:今井哲郎
音楽:吉川忠秀
出演:柄本佑(河田仁)、坂井真紀(井上智美)、余貴美子(中井春菜)、大谷直子(本多しぐれ)、宇崎竜童(本多彰)、奥田瑛二(長野浩平)
在宅医療に従事する河田医師は、末期の肺がん患者の大貫を担当する。娘の智美は夫の協力も得て自宅介護を続けていたが、河田の対応に疑問と不満が募る。河田が間に合わないまま、苦痛の中で父が逝ってしまう。智美は在宅を選んだ自分を責めていた。河田も患者や家族との意思の疎通が足りなかったと悔やみ、先輩の長野の治療現場を見学させてもらう。長野は病気の臓器の断片ではなく、患者の物語を見ろ、と河田をさとす。患者と丁寧に向き合う姿に自分との違いを痛感して、長野のそばで医療の根底から学んでいく。
2年後、河田は大貫と同じ末期のがん患者の本多彰に出会った。
映画の大貫さんと同じ肺がんで実父を、親しい友人を二人見送りました。大貫さんの苦しむ様子に、自分がそばにいてもきっと何もできなかったな、とか、せめて手を握っていたかったとかいろいろな思いが湧き上がってきました。
河田先生が先輩の長野先生の診療を目の当たりにして変わっていく姿に、若いお医者さんたちみんなにこんな先輩がいてほしいと思いました。同じ活動はできなくとも(モデルの長尾先生の毎日があまりに大変そうで)、その心を受け継いでほしいものです。後半の宇崎竜童さん演じる本多さん、惚れます。なんて粋でカッコいいご夫婦でしょう!高橋伴明監督の「理想」だそうです。お話聞けましたのでしばしお待ちを。
自分ごとですが、20年前、骨折を機に寝たきりになった義母を10年間在宅介護して看取りました。夫は単身赴任中、ヘルパーさんと夫の姉妹、近所のかかりつけのお医者さんとの連携プレーでした。介護保険の恩恵はあまりうけられませんでしたが、ケアマネさんも介護経験があって頼りになりました。義母は血圧が高いほか病気はなく、最期まで自分で食事ができました。「あっぱれ!」と義母と自分たちをほめてあげたいです。挫折することなく続けられたのは「介護しているからとあれこれ我慢せず、自分の楽しみを確保した」が大きいです。ヘルパーさんがいるときはバイトや映画に出かけ、義姉妹が泊まってくれたので実母と一緒に海外にも行けました。借りられる手は全て借りて、一人で背負わないことです。お神輿もみんなで担ぐので楽しく前に進めるんですから。(白)
余貴美子、柄本佑、宇崎竜童、大谷直子
「最期は家で迎えたい」。そんな言葉をよく聞きますが、それを叶えるためにはどんな苦労があるのか。この作品を見ると、いろいろな意味でよくわかります。がん難民という言葉は初めて聞きました。病気で苦しむだけでなく、こんな思いもしなくちゃいけないとは! それでも、宇崎竜童演じる末期がん患者を見ていると最期はこうありたいと思ってしまいます。
そのためには在宅医選びも重要らしい。さて、うちの近くに奥田瑛二が演じた長野先生のような方が開業してくれているといいのだけれど。(堀)
2019年/日本/カラー/112分
配給・宣伝:渋谷プロダクション
(C)「痛くない死に方」製作委員会
https://itakunaishinikata.com/
★2021年2月20日(金)シネスイッチ銀座、3月5日(金)~テアトル梅田、他関西地方ロードショー
★高橋伴明監督のインタビュー掲載しました。こちらです。
★原作の著者長尾和宏先生のドキュメンタリー『けったいな町医者』はこちらです。