2021年02月13日
藁にもすがる獣たち(原題:Beasts Clawing at Straws)
監督:脚本:キム・ヨンフン
原作:曽根圭介「藁にもすがる獣たち」(講談社文庫)
撮影:キム・テソン
音楽:カン・ネネ
出演:チョン・ドヨン(ヨンヒ)、チョン・ウソン(テヨン)、ペ・ソンウ(ジュンマン)、ユン・ヨジョン(スンジャ)、チョン・マンシク(ドゥマン)、チン・ギョン(ヨンソン)、シン・ヒョンビン(ミラン)、チョン・ガラム(ジンテ)
韓国の港町。ジュンマンは事業に失敗してサウナのアルバイトをしている。ロッカーの中に忘れたままのバッグを見つけた。開けると札束がぎっしりと詰まっていた。夜遅くに来て買い物に出ていったままのお客のものだとわかる。家には認知症の母、その世話とやりくりに苦労している妻がいる。大学生の娘に学費を出すこともできない。喉から手が出るほどお金はほしい。
出入国管理の仕事をしているテヨンは、失踪した恋人の借金の取り立てに追われている。金融業者に脅されているが金策のあてもない。借金のために夫にDVを受けているミラン。過去を精算して新たな人生を歩みたいヨンヒ。誰もが地獄から抜け出すために藁にもすがりたい。欲望に駆られたら獣にだってなる!?あの10億ウォンはどこへ行く?
10億ウォンというと今の為替で9500万円。ざっくりで1億円。1980年、銀座で風呂敷包みの1億円を拾って届け、落とし主が現れず一躍有名になった方がいましたね。結局誰のどんなお金か判明しませんでしたが、この映画はだんだんと明らかになります。
テヨン役のチョン・ウソンが口先ばかりのいい加減な男。いつもカッコいい役なのに、これ。チョン・ドヨンが何枚も上手の、男を翻弄するヨンヒ。真っ赤な口紅に胸元のあいたドレスが妖艶です。この二人に真面目なジュンマンのペ・ソンウや、凶暴なパク社長のチョン・マンシクらキャストたちが少しずつ関わって思いがけない展開になります。二転三転するストーリーに目が離せません。原作はありますが、脚本も書いたキム・ヨンフン監督うまいです!次作が楽しみ。
認知症の母スンジャのひとことが胸に落ちてしみてきます。さすがユン・ヨジョンさん。蛇足ながら”1億円は1万円札で重さ10㎏”、5万ウォン札で10億ウォンはその倍?(白)
冒頭、大写しのルイ・ヴィトンの鞄。若い頃、彼から貰ったのと同じ!と思わず見入ってしまいました。鞄自体が重くて、ブランド志向じゃない私には無用の長物でした。これに10億ウォンの札束が入っているのですから、かなりの重さ! 男性にとっても重いけど、チョン・ドヨン演じる華奢なヨンヒには、とてつもない重さのはず。それにしても、本作のチョン・ドヨン、ほんとに艶っぽいです。
チョン・ウソンがそのヨンヒの色気に現を抜かして借金を背負うマヌケな男なのですが、そんな役もさすがに上手い!(と、ウソンさま命の私)
ホテル併設のチムジルバンでバイトしているジュンマンが床掃除している時に流れている3つのニュースが、この物語の核になっている事件。どうぞ聞き流してしまわずしっかり聞いてください。伏線がいっぱいあって、最後のオチには拍手です♪ あ~面白かった! (咲)
原作は曽根圭介の同名小説です。しかし韓国らしく設定し直されていて、日本の話だったとは思えません。原作者も「実をいうと、私は今、本作を手本にして原作を書き直したいと、半ば本気で思っています」とコメントしているくらい。原作は未読なのですが、小説ならではの仕掛けがあり、それをキム・ヨンフン監督は原作の構成を生かしつつ、巧みな手法で解決したそう。脚本も手掛けた監督の手腕ですね。しかし、高額な現金って怖いですね。どんな辛い仕打ちにも耐えていた人が大金を見つけた瞬間、人が変わってしまう。クライマックスのどんでん返しに笑ったものの、ラストで誰もが持つ人間の心の闇を改めて感じさせられます。
チョン・ドヨンが演じる女社長とチョン・ウソンが演じる出入国審査官のクズっぷりが半端ないのですが、どこか魅かれてしまう。その結果、ずるずると道を踏み外していく人がいるのも納得です。
個人的には不法滞在者を演じたチョン・ガラムに注目。「感染家族」でキャベツを食べるゾンビをかわいく演じていましたが、本作でも好きになった女のためなら何でもやってしまう漢気を見せたものの、その後にうじうじと悩む辺りは母性本能をかき立てられます。
また、『ミナリ』でオスカーの呼び声高いユン・ヨジョンは息子かわいさのあまりに嫁にきびしい認知症の姑を好演。こうはなりたくないと思いつつ、自分もこうなってしまうのではないかと不安になりました。(堀)
2020年/韓国/カラー/シネスコ/109分
配給:クロックワークス
(C) 2020 MegaboxJoongAng PLUS M & B.A. ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED. (C) 曽根圭介/講談社
http://klockworx-asia.com/warasuga/
★2021年2月19日(金)シネマート新宿ほかロードショー
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