2021年01月29日

ダニエル(原題:Daniel Isn't Real)

『ダニエル』ポスター.jpg

監督・脚本:アダム・エジプト・モーティマー
脚本:ブライアン・デリュー
製作:イライジャ・ウッド
音楽:Clark
出演:マイルズ・ロビンス(ルーク)、パトリック・シュワルツェネッガー(ダニエル)、サッシャ・レイン(キャシー)、ハンナ・マークス(ソフィ)

ルークは子どもの頃両親が離婚。母親と孤独な日々を送っていた。その心の隙間を埋めるのは、ルークにしか見えない空想上の親友ダニエルだった。彼と一緒にいると、寂しさも不安もなかった。しかし、ある事件をきっかけに、ルークはダニエルの存在を封印した。大学生になったルークは、今も周囲に馴染めず一人きり。そのうえ精神不安定だった母の病状が進み、自分も母のようになるのではと不安にかられている。カウンセラーと話して封印していたダニエルを思い出し、呼び起こしてしまう。ダニエルは成長して、怪しい魅力のある美青年の姿で現れた。彼の助言に従ったルークの生活はそれまでと様変わりし、何もかも順調にいく。キャシーとも仲良くなれて自信を得たルークは、支配的になるダニエルから離れようと試みる。ダニエルはそれを許さず、ますますルークを翻弄する。

ポスターのこのイケメンは誰?と思ったでしょう?主人公ルークはティム・ロビンス&スーザン・サランドンの息子マイルズ・ロビンス。イマジナリー・フレンドのダニエルはアーノルド・シュワルツェネッガーの息子パトリック・シュワルツェネッガーです。父親に似て、よりハンサムです。大スター2世同士の初共演となりました。
ルークが子どもの頃起きた銃乱射事件での現場シーン。黄色のテープを張り巡らしていますが、道路に向かって倒れている遺体はそのまま。野次馬の中に小さなルークがいるのが異様です(隣にダニエルがいて「遊ぼう」とルークに声をかける)。日本では事件現場はすぐにブルーシートで囲われ、中を見ることなどありませんからこのシーンにぎょっとしました。
ダニエルは初めこそルークの欲求をかなえ、自信を持たせてくれるのですが、次第に心や身体を支配していきます。自分の想像から出たものなら、また消すことができるはずと抗うルークが痛々しいです。邪悪になっていくダニエル、2つに引き割かれそうなルーク(演じ分けるマイケル上手い!)、二人の熱演と視覚効果に注目を。
アダム・エジプト・モーティマー監督の長編3作目ですが、前2作がホラーだったので未見です。監督にも子どものころイマジナリー・フレンドがいたそうです。大きくなると自然にいなくなるんでしょうか?(白)


ダニエルは、ルークが小さいころ孤独だった頃の空想上の親友。大学生になって、寂しさを感じた時にダニエルはまた現れるのですが、ちゃんと一緒に年を取っています。ダニエルをシュワちゃんの息子が演じていることに何よりそそられます。ルークを演じたマイルズ・ロビンスもさすがの血筋。
本作を観て、頭をよぎったのは大九明子監督の『私をくいとめて』。こちらはヒロインみつ子の脳内に相談役の「A」がいるという設定。みつ子の分身でもあるのですが、姿が現れたときに男性だったので、思わず笑ってしまいました。
『ジョジョ・ラビット』では、やはり孤独な10歳の少年ジョジョに空想の友人がいて、なんとアドルフ・ヒトラー! タイカ・ワイティティ監督自身がアドルフを演じていました。
10代の頃に夢中になって読んだ「アンネの日記」でも、アンネが日記帳を「キティー」と名づけて、キティー宛に手紙を書いていたのを思い出しました。
私には空想の友はいないけれど、心の支えにしている人もいそうです。本作では、空想の友であるはずのダニエルが、だんだん存在感を増してきます。ダニエルはいったい何者?? (咲)


ブロマンスという言葉をご存知ですか? 「男性同士の親密で精神的な繋がりを指す」とピクシブ百科事典では説明されていて、兄弟(brother)とロマンス(romance)の合成語だそうです。まさしくルークとダニエルの関係ですね。ただし、この2人はイマジナリーフレンド。ダニエルは実在する存在ではありません。そしてイマジナリーフレンドは精神医学の名称ではなく、「一般的には多重人格とか解離症状と表現され、世の中にもイマジナリーフレンドを持つ人はたくさんいる」と先日行われた『ダニエル』のトークイベントに登壇した精神科医・名越康文氏は解説していました。さらに、幼いルークが母親に命じられダニエルを城に閉じ込めるシーンについて、「心理学的には見事に正しい指標です。例えば、何か怖い思い出があったとしたら、何かに閉じ込めようと気持ちを誘導したりすることが大事なんですね。馬鹿げているように見えるかもしれませんが、意外と効いたりするんです」と解説しました。
本作は大学生になり、帰省したときにかつて封印したダニエルを解放してしまったルークの内面の葛藤を視覚的に描いているのですが、描き方がとにかく妖しい!見ているこちらまでダニエルに惑わされてしまいそう。アーノルド・シュワルツェネッガーの息子にこんなにまでの色香があるとは! またルーク本人のときとダニエルに体を乗っ取られたときを見事に演じ分けたマイルズ・ロビンスが素晴らしい。初主演映画にして高い評価を集め、第52回シッチェス・カタロニア国際映画祭で男優賞を受賞しました。
さて、ルークはダニエルを再び封印することができるでしょうか?(堀)


2018年/カラー/アメリカ/99分/R15+
配給:フラッグ
(C)2019 DANIEL FILM INC. ALL RIGHTS RESERVED.
https://danielmovie.jp/
★2021年2月5日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 13:00| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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