2021年01月29日

哀愁しんでれら

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監督・脚本:渡部亮平
撮影:吉田明義
音楽:フジモトヨシタカ
出演:土屋太鳳(福浦小春)、 田中圭(泉澤大悟)、COCO(泉澤ヒカリ)、石橋凌(福浦正明)、 山田杏奈(福浦千夏)、銀粉蝶(泉澤美智代) 他

福浦小春26歳。家族は自転車屋を営む父と妹と祖父。母は10歳の小春と小さな妹を置いて出ていってしまった。児童相談所に勤める今も、責任を果たさない親を許せない。
ある晩祖父が風呂場で倒れたのをきっかけに、ドミノ倒しのように一家は不幸に見舞われる。長年の彼氏と別れた小春は、たまたま出逢った泥酔した男性を助けて名刺を受け取った。” 泉澤医院院長 泉澤大悟”とあり、「白馬の王子様より外車に乗った開業医を逃がすな」と友人にはっぱをかけられる。小春は大悟と交際を始め、裕福で優しい彼に夢中になる。大悟はバツイチ、小春が愛娘のヒカリとあっというまに仲良くなったのを喜び、プロポーズする。小春は家族にも受けがよい大悟と結婚し、それまでの不運が帳消しになるほど幸せだった。

ドレスにハイヒールの小春が、教室の机の上を歩く映像が逆さまからゆっくりと回るタイトルロール。これからの小春を予感させます。これまで元気いっぱいの女の子役が多かった土屋太鳳さんが、母親に捨てられたトラウマを抱えて「自分はあんな親にはなりたくない=いい母親になりたい」と頑張る小春を演じています。一方の田中圭さんもいい人役が多いですが、今回は隠れた闇がにじみ出てくる大悟。二人ともこれまでの印象を覆す挑戦をしたようです。
それにもまして驚いたのが、大悟の一人娘ヒカリを演じたCOCOさん(2010年生まれ)です。初演技だというのに、この余裕はなんでしょう?プロフィールを見るとinstagramでフォロワーが63万人もいるファッショニスタ。4歳からカメラの前にCOCOとして立っていたのでした。納得。
異様さに気付きながら誰にも打ち明けなかった小春の中にも小さいながらいびつな空間があり、その親和性が大悟と結婚したことでさらに増幅してしまったのかも。夢落ちであってくれと思ったほど、後半の展開は衝撃。
渡部亮平監督は2010年に脚本家としてデビュー。『3月のライオン』脚本(2017)『ビブリア古書堂の事件手帖』(2018)などの脚本を手掛けています。本作は”TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2016”で グランプリを受賞して、初の長編監督作品となりました。(白)


シンデレラは結婚した後、どうなったのか? こんな疑問を出発点に書かれたオリジナル脚本です。
開業医との玉の輿に乗った小春ですが、相手には小学生の娘がいました。いきなり母親になることが求められたのです。小春も大悟も母親に対してトラウマを抱えているからでしょうか、いい親にならなくてはいけないというプレッシャーが半端ありません。しかし、物わかりがよく見えた娘が実は本心では受け入れていない。よくある話です。それを乗り越えていこうと小春が奮闘するのですが。。。
親が子どもを信じるってどういうことなのかを深く考えさせられました。特に小春がヒカリにプレゼントした手作りのペンケースをクラスの男子に盗まれたとヒカリが言い出したとき。男の子のお母さんは、息子を連れて謝りに来ました。しかし、息子は「自分はやっていない」と強く主張したのです。親だったら、自分の子どもがやっていないと言うのは信じてあげるべきではないのか? 私ならどうしただろうか? 
また、作品にはさまざまな親子が登場しますが、母と子ばかり。大悟とヒカリの関係も本来は父と子ですが、早くに妻(母)を亡くした2人は母と子の関係に限りなく近い。小春と父親の関係もヒカリとの関係に悩む小春に対する父親の対応を見ていると、大らかといえば聞こえはいいですが、放任に近い気もする。小春の母親が家を出た理由もそこにあるのではないかと勘繰ってしまうほど。作品から父親の不在を強烈に感じます。
親になるって本当に難しい。(堀)


2021年/日本/カラー/114分
配給:クロックワークス 宣伝:スキップ
©️2021 『哀愁しんでれら』製作委員会
https://aishu-cinderella.com/
★2021年2月5日(金)全国公開
posted by shiraishi at 09:48| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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