2021年01月17日
天空の結婚式 原題:Puoi baciare lo sposo、英題: MY BIG GAY ITALIAN WEDDING
監督・脚本: アレッサンドロ・ジェノヴェージ
出演:ディエゴ・アバタントゥオーノ、モニカ・グェリトーレ、サルヴァトーレ・エスポジト、クリスティアーノ・カッカモ
ベルリン。役者のアントニオは、役者仲間のパオロと一緒に暮らすうちに「人生を共にするなら、この人!」と確信し、遂にプロポーズ。二人の決意は固いが、問題はお互いの親の理解を得ること。パオロはゲイをカミングアウトして以来、ナポリにいる母親と疎遠になっている。まずはアントニオの両親の承諾を得ようと、イタリアの天空の村チヴィタ・ディ・バニョレージョに行くことにする。二人の下宿先の大家の女性ベネデッタや、さらには新しい下宿人のイタリアの中年親爺ドナートまでもが一緒に行くと言い張り、珍道中となる。
アントニオの母アンナは驚きながらも、この村で結婚式を挙げることを条件に認めるが、村長を務める父ロベルトは頑なに拒否する・・・
父ロベルトはよその町の出身だけど、アンナと結婚して村に移り住み、1年前からは村長を務め、積極的に難民を受け入れています。「世界は今、同化に向かっている。どんな人種も受け入れる」と言いながら、我が子の同性婚は受け入れられないのです。
そんな父親に、認めないなら離婚するとまで脅かして、母アンナはウェディング・プランナー(イタリアで今最も人気を集める実在の“カリスマ”ウェディング・プランナー、エンツォ・ミッチョが本人役で登場!)を雇って、最高の結婚式にしようと奮闘します。
ローマの北約120キロに位置する崖の上にそびえる村チヴィタ・ディ・バニョレージョは、『天空の城ラピュタ』(86)のモデルとなったといわれ、映画『ホタルノヒカリ』(12)にも登場した「天空の村」。絶景の地で繰り広げられる抱腹絶倒の物語ですが、寛容とは何かを問い、人権を考えさせてくれる作品になっています。
それにしても、ディエゴ・アバタントゥオーノ演じるアントニオが、実にキュート! 元カノのカミッラならずとも、男に取られたくないっ!! と思ってしまいました。(咲)
*イタリアで、2016年に下院議会で同性カップルの結婚に準ずる権利を認める「シビル・ユニオン」法が可決されたことを受けて、ニューヨークのオフ・ブロードウェイでロングラン上演された大ヒット舞台「My Big Gay Italian Wedding」を、イタリアのコメディ映画界の重鎮アレッサンドロ・ジェノヴェージ監督が映画化。
LGBTのカミングアウトは、友人、社会、会社、学校、仲間などに伝えるのに勇気がいるが、どこの国でも親に伝えるのが一番大変。親にとっては一大事。なかなか理解してくれない親との葛藤が、このところ何本もの映画で描かれている。ここでは父親が絶対受け入れられないと拒否をする。でも母親は最後に受け入れ、さらにはイタリアらしく、ウェディング・プランナーまで雇ってこの絶景の地での結婚式を進める。それにしてもすばらしい景色。まずこのロケーションがあって、それに同性婚を持ってきたといっても過言ではないかも。
私自身は、家制度、結婚制度に疑問があって結婚したいと思ったことがないので、なんで世の中の人はこんなに結婚したがるの?とずっと思ってきたけど、最近は同性婚まで出てきてびっくり。一緒にいたければいれば一緒にいればいいのであって、わざわざ結婚までしたがるということにはちょっと疑問がある。やはり団塊の世代と今の若い世代には、そういう思いに落差があるのかもしれない。ま、結婚したい人はすればとしか言えないけど。
カミングアウトは中国でも深刻なようで、『出櫃(カミングアウト 中国 LGBT の叫び』というドキュメンタリー作品もK's Cinemaなどで1月23日に公開される。これは親にカミングアウトする男性と女性のLGBT二組を追った作品。イタリアより、もっと親との繋がり関係が強く、子供の思いを受け止めがたい親が描かれる。こちらもぜひ観てみてください(暁)。
『出櫃(カミングアウト 中国 LGBT の叫び』公式HP
http://www.pan-dora.co.jp/comingout/
LGBTに関する作品はここ数年ぐっと増え、世間の理解は広まってきました。当然、私も理解ある人間の1人だと自負していました。ところがそんな私自身が最近、身近な人がゲイであると知ってかなりの衝撃を受け、その人を見る目が変わってしまったのです。ゲイであってもなくてもその人はその人であることを頭では分かっているものの、理解と感情は別物でした。この作品で描かれている父親はまさにこの気持ちだったんですね。へぇ~と思って読んでいるあなたも他人事ではないかもしれませんよ!
本作はニューヨークのオフ・ブロードウェイでロングラン上演された大ヒット舞台「My Big Gay Italian Wedding」を原案とし、結婚の自由がテーマですが、美しい風景も大きな見どころ。本作の舞台となったイタリア、ラツィオ州に位置する分離集落「チヴィタ・ディ・バニョレージョ」はイタリア有数の観光地ですが、約300mの狭く急な長い橋を渡る以外アクセス方法はありません。周囲の崖が毎日少しずつ崩れてきているとのことなので、貴重な記録映像の意味もあるといえるでしょう。(堀)
2018年/イタリア/90分/カラー/シネマスコープ/5.1ch /G
配給:ミモザフィルムズ
後援:イタリア大使館、イタリア文化会館
提供:日本イタリア映画社
(C)Copyright 2017 Colorado Film Production C.F.P. Srl
公式サイト :http://tenkuwedding-movie.com/
★2021 年 1 月 22 日(金)より、YEBISU GARDEN CINEMA、新宿シネマカリテ他にて全国順次公開
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください