2021年01月14日
KCIA 南山の部長たち(原題:THE MAN STANDING NEXT)
監督:ウ・ミンホ
原作:キム・チュンシク「実録KCIA『南山と呼ばれた男たち』」
脚本:ウ・ミンホ、イ・ジミン
撮影:キム・ジヨン『タクシー運転手ー約束は海を超えてー』
出演:イ・ビョンホン(キム・ギュピョン)、イ・ソンミン(大統領)、クァク・ドウォン(パク・ヨンガク)、イ・ヒジュン
1979年10月26日、韓国のパク大統領が中央情報部(通称KCIA)部長キム・ギュピョンにより射殺された。事件発生の40日前、KCIA元部長パク・ヨンガクは亡命先であるアメリカの下院議会聴聞会で、韓国大統領の腐敗を告発した。激怒した大統領に事態の収拾を命じられたキム部長はアメリカへ渡り、かつての友人でもあるヨンガクに接触を図るが……。
実際にあった大統領暗殺事件をもとに、フィクションとして送り出された作品。2020年の韓国で興行収入第1位。べストセラーとなった原作のノンフィクション「実録KCIA『南山と呼ばれた男たち』」は、日本でも鶴真輔翻訳で1994年に講談社から出版されています。映画の登場人物は名前を変えてあり、実際は朴正煕(パク・チョンヒ)大統領(娘が18代大統領の朴 槿恵/パク・クネ)、撃ったのがかつては共にクーデターを起こし、長く側近だった金載圭(キム・ジェギュ)KCIA部長。
冷徹で野心家のキム部長をイ・ビョンホンが演じていますが、髪をぴったりとなでつけニコリともせず、色気のいの字もありません。迫力のビョンホンです。大統領はイ・ソンミン、2018年の『目撃者』『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』などで知られています。私はしばらく見続けていたテレビドラマ「ミセン 未生」のオ課長が最も似合って好きですが、悪役を演じると凄みが出ます。クァク・ドウォン、イ・ヒジュンが共演。
すぐ隣の国で長く軍事政権が続き、民主化宣言されたのは1987年。ほんの少し前のような気がします。こういう映画をきっかけに歴史をひもといてみるのもいいですね。(白)
パク・チョンヒ大統領暗殺を扱った映画で思い出すのが、『大統領の理髪師』と『ユゴ 大統領有故』の2作品。
『大統領の理髪師』(2004年製作、日本公開2005年2月11日、イム・チャンサン監督)では、大統領専属理髪師に指名されたソン・ガンホ演じる理髪師が警護室長の見張る中、びびりながら髪を整え髭を剃る姿に和まされました。本作でも、イ・ビョンホン演じるキム部長が理髪中の大統領を訪ねる場面が出てきて、思わず理髪師に目をやりました。そばに座って見張っているクァク警護室⻑を演じているイ・ヒジュンは、25キロ以上体重を増量して、キム部長に対立する嫌な奴を体現しています。ドラマ「棚ぼたのあなた」でのコミカルな役柄が好きなので、ちょっとびっくり。
『ユゴ 大統領有故』(2005年製作、日本公開 2007年12月15日、イム・サンス監督)は、美少女二人をはべらせた大統領が暗殺される凄惨な場面が印象的ですが、ハン・ソッキュが脇役というブラックコメディ仕立て。
今回、『KCIA 南山の部長たち』では、大統領に次ぐ権力を持つKCIAの部長が、なぜ大統領を暗殺するに至ったかに迫っています。最後に映し出される金載圭中央情報部部長本人の「民主主義を回復し、国民が犠牲になるのを防ぐことが目的で、決して自分が大統領になる為ではない」という言葉に胸が熱くなりました。一緒に革命を起こしながら、18年もの長い間、大統領の座に居座り、独裁者となってしまったパク・チョンヒを、そばにいる自分が始末しなければならないという思いに嘘はないでしょう。
キム部長を演じたイ・ビョンホンは、威厳があるわけでもなく、地味な普通の中年の男。イ・ソンミンは、私も(白)さんと同じく「ミセン 未生」のオ課長役が好きですが、本作では独裁者パク大統領の凄みを静かに滲み出していて、ぞくっとさせられます。(咲)
2019年/韓国/カラー/シネスコ/114分
配給:クロックワークス
(C) 2020 SHOWBOX, HIVE MEDIA CORP AND GEMSTONE PICTURES ALL RIGHTS RESERVED.
http://klockworx-asia.com/kcia/
★2021年1月月22日(金)シネマート新宿ほか全国ロードショー
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