2020年12月13日

声優夫婦の甘くない生活    英題:Golden Voices

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監督:エフゲニー・ルーマン
出演:ウラジミール・ フリードマン、マリア・ベルキン

1990年9月、旧ソ連を後にしてイスラエルの空港に降り立ったヴィクトルとラヤ。ソ連時代、欧米映画の吹き替えで活躍してきた仲のいいスター声優夫婦だ。だが、新天地で待っていたのは厳しい現実だった。ロシア語声優の需要はなく、ヘブライ語を学びながら仕事を探す日々。ラヤは甘い声を見込まれ、テレフォンセックスの仕事に就くが夫には内緒だ。ヴィクトルもまた、海賊版レンタルビデオ店でロシア語声優の職を得る。
サッダーム・フセインの化学兵器の脅威に備え、政府から配布されたガスマスクをラヤの職場に届けたヴィクトルは、ラヤの仕事の真実を知ってしまう・・・

私がイスラエルを訪れたのは、1991年の4月末。映画と同じエルアル航空でテルアビブ空港に降り立ったので感慨深いものがありました。エルサレムの旧市街の土産物屋で、マトリョーシカや、中央アジアの帽子を売っていて、なぜ?と思ったら、ソ連崩壊後に多くのユダヤ人が移民してきたと聞かされました。ロシア語の新聞も出していると知りました。「約束の地」に希望を抱いて移住してきたであろう人たちの暮らしが決して甘いものでなかったことを、本作はずっしり感じさせてくれました。
今、世界では紛争や政治的理由等で故国を離れる人たちが後を絶ちません。ちゃんとした職業に就いていた人も、たとえ医師のような資格を持った人であっても、他国では通用しません。それでも国を出ざるをえなかった人たちが直面する悲哀。良好だった夫婦関係に亀裂が入ることもあるでしょう。
本作は、6歳の時にソ連から移民してきたエフゲニー・ルーマン監督の経験をもとに作られたものですが、多くの人の共感を得る普遍的なテーマを内包しています。社会派の映画でありながら、大いに笑えて、ちょっぴり泣ける物語。(咲)


ソ連で洋画のスター声優だった、ロシア系イスラエル人夫婦が鉄のカーテンが崩壊し、イスラエルに移住する。他人事のような気持ちで作品をご覧になる方が多いかもしれません。映画で描かれる主人公夫婦は新しい環境で夫はすることがなく、家計を支えようと働き始めた妻が生き生きとしてくるのですが、そんな2人の姿は定年退職した夫とパートや趣味で活き活きと暮らす妻の間で気持ちのすれ違いが生じてきたという話と似ている気がします。当たり前だった関係に変化が生まれたときにどう向き合うか。すれ違ったまま離れていくのではなく、いかに大事な存在だったかに気づいた2人の行く末はこれから夫婦の後半戦を迎えようとしている方々にはきっと参考になることでしょう。(堀)
主人公が声優夫婦という設定にちなみ、11/ 22 (日)のいい夫婦の日に、リアル声優夫婦のトークイベント付き試写会が実施されました。
ゲストは『愛と哀しみの果て』のロバート・レッドフォードなどの声を担当した古川登志夫さん、「美少女戦士セーラームーン」大阪なるなどの声を担当する柿沼紫乃さんという日本を代表するレジェンド声優ご夫婦です。本作を通じてご夫婦の日常生活が垣間見える、楽しいトークイベントでした。

http://cineja-film-report.seesaa.net/article/seiyu-fufu-event.html


2019年/イスラエル/ロシア語、ヘブライ語/88分/ スコープ/カラー/5.1ch
日本語字幕:石田泰子
後援:イスラエル大使館
配給:ロングライド
公式サイト:https://longride.jp/seiyu-fufu/
★2020年12月18日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
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posted by sakiko at 04:56| Comment(0) | イスラエル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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