2020年12月11日

ブレスレス(原題:Hundar har inte byxor)

breath.jpg

監督・脚本:ユッカペッカ・ヴァルケアパー
出演:ペッカ・ストラング(ユハ)、クリスタ・コソネン(モナ)、オーナ・アイロラ、ヤニ・ヴォラネン

外科医のユハは愛する妻と娘と湖畔で夏の休日を過ごしていた。娘のエリの泣き声でうたた寝からさめると、泳いでいるはずの妻の姿がない。ようやく見つけ出した妻は、水底の網に足がからまってすでに亡くなっていた。以来、救えなかった自責の念にかられ、無気力な日々を送り10数年が経った。
エリがピアスの穴開けをするのに店まで送ったユハは、知らずに隣のSMクラブに迷い込んでしまった。そこにいたのはボンデージ姿のドミナトリクス(女王様)のモナ。ユハは客と間違えられ、痛めつけられて首を絞められる。朦朧とする意識の中で、水中のイメージを見る。その先には妻がいる。初めて死んだ妻に近づく手段を知ったユハは翌日からクラブに通うようになり、プレイは次第にエスカレートしていった。

エ、エスエム?SM!禁断の世界だ…と恐る恐る観ましたら「失くした果てに 溺れる刹那な痛み。呼吸も止まるくらいに美しい愛と再生の物語」と惹句にあるように、形は違えど「人を恋い、もっと愛したい」と願う恋愛劇でした。痛いシーンはありますが、合間合間に美しい映像がはさまれます。並べられた花、ガラス玉、エリの部屋の星や惑星。音楽も優しいのです。趣味嗜好は双方が納得すれば関知するものではありません。ただし拒否しているのに無理矢理は暴力・虐待・犯罪ですからね。
ユハを演じるのは『トム・オブ・フィンランド』のペッカ・ストラング。妻を愛するあまり死んでも追いかける狂気も垣間見せます。娘の存在を忘れてない?と突っ込みたくなりますが、娘のほうがよほどしっかりしていました。
モナはクリスタ・コソネン。昼間は整体師、夜は女王様の二つの顔を持ったモナが、初めてユハに生の感情を見せるシーンにきゅんとします。
原題は「犬はパンツを履かない」という意味で、モナが”犬のユハ”に投げた言葉。(白)


主人公を襲う悲劇からスタートしますが、その悲劇を幻想的な美しい映像で映し出すことで悲しみをより強く感じさせる。冒頭から北欧作品らしさが炸裂しています。
娘がピアスの穴を開けるのを待つ間に、近所にあった怪しげな店が気になり、真面目な外科医がSMの世界に足を踏み入れます。人生どこで何があるか分かりませんね。倒錯した時間に湖に沈む網に足を捕らわれて亡くなった妻の面影を見てしまい、主人公は妻に会いたい一心で、それこそSMの沼にはまっていきます。
SMという言葉こそ知っていましたが、主人公が行うプレイは大胆極まりなく、映像でここまではっきりと描いた作品は稀かもしれません。嫌悪感を覚える人もいるでしょう。実は私がその1人。しかし、意外にも後味は悪くなく、純愛映画を見た気分でした。(堀)


2019年/フィンランド・ラトビア合作/カラー/シネスコ/110分
配給:ミッドシップ
(C)Helsinki-filmi Oy 2019
https://breath-less.com/
★2020年12月11日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 00:51| Comment(0) | 北欧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください