監督・脚本:天野千尋
撮影:田中一成
出演:篠原ゆき子(吉岡真紀)、大高洋子(若田美和子)、長尾卓磨(吉岡裕一)、宮崎太一(若田茂夫)、米本来輝(多田直哉 )、新津ちせ(吉岡菜子)
スランプ中の小説家吉岡真紀は、引っ越してきた翌朝、騒音で目が覚める。隣家の若田美和子が早朝から、布団を激しく叩いている音だった。真紀の再々の頼みにも関わらず、布団叩きの音は止まない。お互いにベランダで口論するほど、険悪な仲になる。小説が進まないばかりか、夫や娘との関係も悪くなった真紀は、その諍いの一部始終を小説に書いた。それがネットやメディアも巻き込む大騒動を引き起こしてしまった。
今年5月には公開予定だった本作、コロナ禍のため他の数々の作品と同じく公開延期の憂き目に逢いました。その間、ひきこもりざるを得なかった人たちのストレスは増しました。これほど顕著でなくとも、騒音という目に見えないものが元での苦情やいさかいは絶えずあります。生活時間や家族構成の違いによって発する音は様々で、特に集合住宅にいるとそれが問題になること多々。思い当たる節がありませんか?互いの事情を知っていて共感できるならば良し、そうでなければわざとか?と疑心暗鬼にかられてもめてしまうでしょう。
この映画では、スランプから抜け出せず、夫への不満が募りすでにいっぱいいっぱいの真紀が、隣家からの騒音でついに限界を越えて吹きこぼれてしまいます。なぜそんな行動をするのか、相手への想像力も共感力ももう働きません。そこへ無責任な外野とSNSが火に油を注ぎます。
篠原ゆき子さんと大高洋子さんのバトルは、観るほうに「少しは冷静に」と注意を促します。良い演者を得て、面白いストーリーが生き生きと動きました。(白)
主演の篠原ゆき子さんは映画『浅田家!』では難病の子どもを看病するお母さん、映画『罪の声』では鍵になる姉弟の母親を演じ、さらにTVでは相棒season19にレギュラー入りをするなど、注目を集めています。主演作である本作がコロナ禍で公開が延期になったときには心配しましたが、禍を転じて福と為したかもしれません。
初めは篠原ゆき子さんが演じる真紀の視点で描かれますが、後半は一転して隣家の主婦・美和子の視点になります。同じ状況も視点が変わると見え方や感じ方がまったく違う。驚きました。しかし、これは決して他人事ではありません。もしかしたら自分も気がつかないだけで、同じように他人を見て、また他人からそう見られているのかもしれない。たまには自分のことを振り返ってみないといけませんね。(堀)
2019年/日本/カラー/106分
(C)「ミセス・ノイズィ」製作委員会
http://mrsnoisy-movie.com/
★2020年12月4日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
☆天野千尋監督著「ミセス・ノイズィ」ノベライズが映画公開と同時に発売!
実業之日本社文庫 本体価格680円+税
https://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-55630-7
◆天野監督インタビューはこちらです。
◆追記12/4
天野監督@TIFFスタジオ (16分過ぎから)
https://www.youtube.com/watch?v=HcP00ym8neM
天野監督@活弁シネマ倶楽部
https://youtu.be/d9FsGvcB2EY
【関連する記事】