劇場公開日 2020年11月20日
公開情報 公式HP
スタッフ・キャスト
監督:白雪(バイ・シュエ)
製作:孫陶(スン・タオ)、賀斌(ハー・ビン)
製作総指揮:田壮壮(ティエン・チュアンチュアン)
脚本:白雪(バイ・シュエ)、林美如(リン・メイルー)
撮影:朴松日(プー・ソンリー)
美術:張兆康(チャン・ジャオカン)
編集:Matthieu Laclau(マシュー・ラクロワ)、林欣民(リン・シンミン)
蔡晏珊(ツァイ・イエンシャン)
音楽:高小陽(カオ・シャオヤン)、李繽(リー・ビン)
出演
ペイ:黄堯(ホアン・ヤオ)
ハオ:孫陽(スン・ヤン)
ジョー:湯加文(カルメン・タン)
ラン:倪虹潔(ニー・ホンジエ)
ホア:江美儀(エレン・コン)
通り過ぎたら、また春が来る
香港出身の父と中国大陸出身の母を持つ16歳の高校生ペイは深圳に住み、毎日香港の高校に通っている。父ヨンは香港で家庭を持ちトラック運転手をしていて、母ランは愛人として深圳で暮らし、麻雀で生計を立てている。
家族がバラバラで孤独なペイにとって、心の拠り所は親友ジョーと過ごす時間。2人は北海道旅行を夢見て、学校で小遣い稼ぎをしていた。ある日家に帰る途中、香港と深圳の行き来の途中、スマートフォンの密輸グループに巻き込まれるが、これでお金を稼ぐことができると知ると、ペイはお金欲しさに親友ジョーの彼氏ハオと交渉して、密輸団の仲間に入り、危険な裏の仕事に踏み入れる。
密輸団での仕事をこなしていく内に、ペイは自然とハオと密接な関係になり、ハオは密輸団のリーダーに内緒で、ペイに大きな仕事を持ちかける。ペイとハオが密接な関係にあると気づいたジョーはペイを問い詰める。そこで、ペイはジョーとの友情が試される。
家族との生活と友情、上層階級と下層階級の生活、そして日常生活と犯罪間を行き来する彼女は、命の危険と生計を維持する苦労。直面する道徳的な問題に立ち向かう様子が描かれる。
2年間の入念なインタビューやリサーチを重ねたうえで脚本を執筆した白雪監督は、香港と中国大陸の現状をリアルに描き、青春の輝きと脆さを描いた。
香港の市民権を持っている子供は中国本土で暮らしていても、香港との間をたやすく越えて越境通学ができる。主人公はそのことを利用して密輸に手をそめてしまうのだが、それは長くは続かない。密輸で越境する時の臨場感、緊張感、それが観るものにも伝わり、なんともいえない悲しさ、寂しさを感じた。香港映画でも、中国本土と香港の間の密輸についてはずいぶん描かれてきたが、それほど密輸は多いのか。日本にいるとそういう国境間の緊張ということはないので、そう感じることはないが、国境というのが身近にある国、地域では、やはり、日々、緊張関係があるのだろう。香港に初めて行ったとき、空港や街中に銃を持った警官や兵士がいてものものしいと思ったが、こういう密輸が横行しているからだろうか。おかげで関係なくても銃を持っている人のそばを通る時は緊張する。そして、今の香港の状況も気にかかる(暁)。
女子高生ペイは自宅で行う賭けマージャンで生計を立てる母親と深圳で暮らし、香港の高校に通う。父親は香港で別の家庭を持っている。自分が大陸の人間なのか、香港の人間なのかわからない。学校には親友ジョーがいるが、彼女の家は格段に裕福で心のどこかに引け目を感じてしまう。心の底から落ち着ける居場所がないのが伝わってきた。
そんなペイがスマートフォンの密輸の現場に遭遇。制服を着た自分が疑われないことを知り、自ら仲間に入る。きっかけはジョーとの北海道旅行の費用を貯めるためだった。ところが、期待されることに喜びを感じるようになり、犯罪を重ねていく。必要としてくれる人がいる居場所を見つけてしまったのだ。
犯罪を題材にしているように見えるけれど、描いているのは主人公のアイデンティティの模索。そこにジョーとの友情や、ジョーの恋人で密輸グループの仲間でもあるハオとの恋愛が絡んでくる。ちょっとビターな青春物語といえるだろう。
1つ気になったのが、香港と深圳の違いがよくわからず、映っている街がどちらなのかわかりにくいこと。分からなくても本筋は問題なく理解できるが、わかったらもっと理解が深まった気がしなくもない。(堀)
2018年製作/99分/PG12/中国
原題:過春天 The Crossing
配給:チームジョイ
2020年11月22日
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