2020年11月21日
記憶の技法
監督:池田千尋
原作:吉野朔実
脚本:高橋泉
出演:石井杏奈(鹿角華蓮)、栗原吾郎(穂刈怜)、柄本時生(二階堂智)、小市慢太郎(鹿角正)、戸田菜穂(鹿角由加子)
平凡な女子高生の鹿角華蓮(かづの かれん)は、不可解な記憶喪失癖に悩んでいる。我が家ではない家にいる幼い自分、知らない風景がふいに浮かび、もっと思い出そうとすると意識が飛んでしまう。そのほかは両親とも仲良く、至って穏やかな毎日だ。修学旅行が韓国と決まり、パスポートのための戸籍謄本を初めて見た華蓮は、自分に姉がいて、すでに死亡。その後自分が養子となり入籍されていたことを知った。これまでそのことに触れなかった両親に確かめることもできず、自分でその秘密をさぐろうと決心する。手がかりは福岡、修学旅行を内緒でキャンセルし、同じ日に福岡へ旅立つ計画だ。それに協力したのは、青い瞳を持つ同級生の穂刈怜(ほがり さとい)だった。
修学旅行に行かずに、二人で福岡への旅?イケメン同級生とのロマンチックな話ではありませんでした。自分のルーツを調査するバディもの?青春ミステリーでした。本当の両親はなぜ自分を手放したのか、消えている記憶は何だったのか、が少しずつ解明されていきます。記憶に蓋をしたくなるほどの事実が明るみに出ようと、観た後は意外にすっきりします。一見クールで突き放すような怜が思ったより良いヤツだったこともありますが、何より今の華蓮には優しい両親がいて十分幸せだからです。
吉野朔実さんの「本の雑誌」の書評を読んでいましたが、原作は未読。2016年に亡くなられています。漫画を探して読んでみたくなりました。
回想場面に『僕はイエス様が嫌い』(2019/奥山大史監督)主演の佐藤結良くんが出ていました。(白)
さして親しくもない同級生のアルバイト先まで調べて押しかけ、福岡行きの手配を頼む主人公に幼さや自分勝手さを感じてしまいましたが、そんな主人公が同級生の弱さを包み込んであげるまでに成長する物語だと、エンドロールを見ながら気がつきました。
両親から過保護なくらい大切に育てられた主人公がその愛情を疑い、葛藤し、その愛情が本物であったことに気づく。石井杏奈が不安に揺れる心を一生懸命に演じています。
ただ、私の中で強く印象に残ったのは金魚屋を演じた柄本時生。辛く悲しい過去を背負いつつ、その記憶から逃げずに塗り替えようとする姿に人はこんなにも強くなれるのだと驚き、人間の可能性を感じました。(堀)
2019年/日本/カラー/105分
配給:KAZUMO
(C)吉野朔実・小学館 / 2020「記憶の技法」製作委員会
http://www.kiokunogihou.com/
★2020年11月27日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー
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