2020年11月15日
泣く子はいねぇが
監督・脚本:佐藤快磨
撮影:月永雄太
音楽:折坂悠太 主題歌:「春」(Less+ Project.)
出演:仲野太賀(後藤たすく)、吉岡里帆(桜庭/後藤ことね)、寛一郎(志波亮介)、山中崇(後藤悠馬)、余貴美子(後藤せつ子)、柳葉敏郎(夏井康夫)
秋田県・男鹿市。娘が生まれて相好を崩すたすくだったが、妻のことねは少しも父親らしい覚悟もないたすくに苛立っている。大晦日の伝統行事「ナマハゲ」に駆り出され、ことみに反対される。「酒は断る、飲まない」と約束したものの、やはり断り切れず泥酔してしまう。たすくは、ナマハゲの面をかぶったまま、うっぷんを晴らすかのように奇声をあげて男鹿の街を全裸で走る。ちょうどテレビの取材で、ナマハゲ存続のために熱弁をふるっていた夏井会長の前を横切った姿は全国放送されてしまった。
2年後、たすくは東京にいた。ことみはあきれ果てて離婚を迫り、地元にいられず断酒して暮らしていた。親友の亮介からことねの近況を聞き、地元へ戻りたい気持ちが強くなる。もうみんな許してくれるかも、と思いたい…しかしそうは甘くなかった。
佐藤快磨(たくま)監督の商業映画デビュー作は、親になること、成長することを描いていちいち腑に落ちました。お酒の失敗も、わかっていて断れないのも強要する周りも悪い。双方酔っ払っているから歯止めがききません。たすくは遅いけれど、気づかないわけではありません。失敗を繰り返しながら、なだれ込むラストに泣けました。
ナマハゲは子どものころ、祖父の家にやって来たのを覚えています。怖くてギャーギャー泣きながら「泣いてない」って言ってました(笑)。子どもには「悪い子にならない」歯止めになる行事でしょう。
太賀さんは『生きちゃった』でも滂沱の涙。やはりもひとつしっかりしていない父役でした。童顔なので、「大人になりきれない」役が似合ってしまうのかも。
女性は子宮の我が子と10ヶ月つきあいます。つわりで苦しんだり、だんだん重くなるお腹をかばったり、足のむくみや腰痛に耐えた末、最後に陣痛がきて産み落とし、やっと母親になります。その間父親になる人はどれだけ関わっているでしょう。しかもその後は授乳だ夜泣きだとろくに眠れないのが母親です。一律には言えませんが、子どもが産まれた時点でこんなに差があって、男性に父親の自覚が足りないのも当然です。女性だとて、みんながすぐに母親の自覚が持てるわけではありません。親と子は一緒に育っていくものと思ったほうがいいです。四の五の言わずに毎日目の前のことをやって生きていけば、いつのまにかみーんな年取って大人になっちゃっています。ほんとは中身は大して変わってないけど、そこもみんな同じですよ。(白)
たすくが役所に出生届を出しに行ったところから作品は始まります。娘が生まれたことが本当にうれしそう。演じた太賀さんの全身からそのオーラがにじみ出ています。この人、実際に子どもが生まれたら、こんな風に喜ぶんだろうな、なんてことまで考えてしまいました。
しかし、その後は一転して、親になり切れないたすくのダメっぷりがクローズアップされ、物語の空気感が変わってきます。(白)さんが書いているように、父親は母親と違い、10ヶ月の準備期間がなく、生まれた瞬間いきなり父親にならなきゃいけないから大変なんですよね。しかし、母親も慣れない育児で精神的には不安定。そんな母親の様子も作品ではしっかり描いています。
親が子どもを育てるのと同時に、子どもも親を育てているのかもしれません。(堀)
2019年/日本/カラー/シネスコ/108分
配給:バンダイナムコアーツ、スターサンズ
(C)2020「泣く子はいねぇが」製作委員会
https://nakukohainega.com/
★2020年11月20日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
公式Twitter:https://twitter.com/nakukohainega
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