2020年11月10日
シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!(原題:Edmond)
監督・原案・脚本:アレクシス・ミシャリク
出演:トマ・ソリベレ(エドモン・ロスタン)、オリヴィエ・グルメ(コンスタン・コクラン)、マティルド・セニエ(マリア・レゴー)、トム・レーブ(レオ)、リュシー・ブジュナー(ジャンヌ)、アリス・ドゥ・ランクザン(ロズモンド)、クレマンティーヌ・セラリエ(サラ・ベルナール)、イゴール・ゴッテスマン(ジャン・コクラン)
1895年、無名の劇作家のエドモンは、ようやく上演された作品を支配人から酷評され1週間で打ち切りと宣告されてしまった。以来落ち込んでスランプから抜けられないエドモン。そんな彼を主演の大女優サラ・ベルナールが励まし、俳優のコンスタン・コクランに新作を売り込むように言う。1行も書けないエドモンはカフェの主人の言葉から実在したシラノ・ド・ベルジュラックを主人公にすることを思いつく。コクランも気に入って喜劇仕立てにして上演することになった。書き出せなくて悩むエドモンに友人の俳優レオが、衣装係のジャンヌへの恋心をうちあける。文才の全くないレオの代わりにラブレターを書く羽目になったエドモンは、代筆をしているうち興に乗り、ジャンヌからの返事も創作意欲を掻き立てた。この設定を舞台劇にしよう、と成りすましを続けていると次々に文章がわいてくる。舞台は成功するかに思えたのだが…
エドモンの筆が止まって生活の苦しい妻が冷淡になり、どん底のエドモンでしたが、ジャンヌというミューズに出会って、水を得た魚のように生き生きとします。友人のレオは、ジャンヌの心がロマンチックな手紙に掴まれていると知って、うろたえます。苦手だからと努力を怠るからですよね。エドモンの妻は妻で、夫がなんだか違うと勘がさえます。このあたりの男と女の感情の揺れや行き違いがなかなか面白く、スマホ全盛の現代ではこうはいきません。
実在の人たちのどこまでが真実で、脚色はどれほどかは定かでありませんが、人々が舞台を楽しみに暮らし、良い作品に熱狂していた時代のお話。崖っぷちに来てもあきらめず、一歩一歩と前に進んでいけばどこかに到達できるはず。今の時代へのエールにもなります。
アレクシス・ミシャリク監督は、2016年に上演された本作の舞台版でモリエール賞5部門を受賞して大喝采を浴び、自ら映画化に乗り出した、のだそうです。(白)
1895年12月の初演以来、今も愛し続けられている舞台劇「シラノ・ド・ベルジュラック」を生み出したエドモンの物語。監督が想像を膨らませて描いた誕生秘話ですが、冒頭に語られる1895年がどういう時代だったかは本物。5年前(1890年 )にはアデールが飛行機を、3年後(1898年 )にはルノーが自動車を作り、前年(1894年 )にはユダヤ系のドレフュス大尉がスパイ容疑で逮捕。このあたりまでは何となく知ってる史実。1895年10月のモンパルナス駅で機関車が駅舎を突き切った事故。写真が凄かった! フォール大統領のもとマダガスカルに侵攻したというのも知りませんでした。
そして、何より、1895年はリュミエール兄弟がシネマトグラフを発明した年。エドモンが支配人から酷評されて、うなだれて帰宅途中、活動写真に呼び込まれるという形で紹介しています。
映画の最後には、シラノ・ド・ベルジュラックを演じてきた俳優たちの写真が次々に映し出されました。1990年のジェラール・ドパルデューは、まさにはまり役と唸りました。
私は中学生の時に神戸の国際会館で観て、バルコニーの下で美男に代わって 鼻の大きな醜男が恋を語る姿に強烈な印象を持ちました。調べてみたら、「1967年1月 - 3月:文学座、三津田健/北村和夫・杉村春子/小川真由美・細川俊之主演、国立劇場小劇場と渋谷公会堂・大阪・京都・神戸・名古屋・岐阜」とありました。
「シラノ・ド・ベルジュラック」の大ヒットで勲章まで貰ったエドモンですが、100年以上経った今も演じ続けられているとは想像もしなかったのではないでしょうか。(咲)
「シラノ・ド・ベルジュラック」はタイトルと鼻に特徴のある主人公というくらいしか知識がないまま作品を見ましたが、「シラノ・ド・ベルジュラック」のあらすじは理解できましたし、戯曲の誕生秘話に思いっきり笑って泣いてしまいました。劇作家エドモン・ロスタンの切羽詰まった執筆状況と戯曲がうまくリンクしています。初演のドタバタはフィクションだと思いますが、それが戯曲さえ盛り上げます。うまい脚本ですね。
(咲)さんが書いていますが、エンドロールにこれまでシラノ・ド・ベルジュラックを演じてきた俳優たちの写真が次々に映し出されます。日本における忠臣蔵的な国民みんなが知っている物語なのですね。
この戯曲はフランスだけではなく、もちろんイギリスでも上演されており、英国演劇界最高峰のローレンス・オリヴィエ賞で見事リバイバル作品賞を受賞した『シラノ・ド・ベルジュラック』が “ナショナル・シアター・ライブ(NTLive)”の2020年新作第6弾として12月4日から公開されます。
NTLive日本公式HP: https://www.ntlive.jp/cyrano
(堀)
2018年/フランス、ベルギー/カラー/シネスコ/112分
配給:キノフィルムズ、東京テアトル
(C)LEGENDE FILMS - EZRA - GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA - EZRA - NEXUS FACTORY - UMEDIA, ROSEMONDE FILMS - C2M PRODUCTIONS
https://cyranoniaitai.com/
★2020年11月13日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください