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陽光の照りつける中、人々が気楽な恰好で、スマホで自撮りしながら歩いていく。
「ARBEIT MACHT FREI(働けば⾃由になる)」と書かれた門。
そこは第二次世界大戦中のザクセンハウゼン強制収容所の跡地。
収容所の中には監獄があって、刑罰が目的でなく、情報を聞き出すために拷問を行うための監獄。政治犯やナチスの暗殺に関わった者たちが収監されていた。窓も塞がれ、暗闇の中、孤独に襲われた。口を割らなかった囚人は吊るして殺された。
1941年~43年、ここは囚人であふれていた。労働力として必要だったのだ。
絶滅の為の施設では、遺体から飲み込んだ宝石や金歯などを取り出した。ガス室担当の囚人は、4か月働き殺された。次に任務についた囚人の最初の仕事は死体処理。自分の末路がわかる・・・
ドイツ人小説家・W.G.ゼーバルト著書「アウステルリッツ」より着想を得て製作した、ダーク・ツーリズムのオブザベーショナル映画。
人々が見学する姿にあわせ、淡々と綴られる解説に、一時も目が離せませんでした。
ユダヤ人だけでなく、同性愛者、エホバの証人の信者、ロマ、共産主義者なども収監されていたこと、それが、東ドイツ時代に博物館になり、共産主義がファシズムに勝利したとされ、共産主義者以外の囚人の苦しみは無視され、歴史が歪められたという解説がありました。逆に、一般的には、ユダヤ人の虐殺だけがクローズアップされている感があります。歴史をどういう立場で見るかで、事実が歪められることを教えられました。
それにしても、「Travel for Peace」 と書かれたお揃いのTシャツを着た人たちが、次々と門から出てくる様に、過去を学ぶことは大切だけど、なんとも物見遊山な印象が拭えなくて複雑な気持ちになりました。(咲)
ザクセンハウゼン強制収容所の跡地を見学する人たちの姿を淡々と映し出します。施設の音声ガイドが聞こえるのですが、そのガイドが説明する肝心の部分は映し出さないので、「そこも映してほしい!!」と何度も叫んでしまいそうになりました。しかし、この作品はザクセンハウゼン強制収容所そのものの紹介ではなく、あくまでも群衆がテーマだったと気づき、集う人々の様子に目がいくように。いろいろ興味を持って見ている人がいると思えば、ガイドの説明に目もくれず、ただただ人の流れに身を任せているような人も。撮られている(見られている)ことを知らない、無防備な状態だと人間性がはっきりと出てしまうものなのですね。気をつけなきゃと今は思っても、きっと外では知らない人からいろんな風に思われているんだろうなぁ。(堀)
セルゲイ・ロズニツァ「群衆」ドキュメンタリー3選 『国葬』『粛清裁判』『アウステルリッツ』
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/478352334.html
2016年/ドイツ/ドイツ語、英語、スペイン語/モノクロ/94分
配給:サニーフィルム
公式サイト:https://www.sunny-film.com/sergeiloznitsa-films
★2020年11月14日(土)~12月11日(金)シアター・イメージフォーラムにて公開 全国順次ロードショー