2020年11月08日

国葬   原題:State Funeral

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本作は、1953年に亡くなった独裁者スターリンの国葬の記録。
モスクワ郊外クラスノゴルスクでスターリンの国葬を捉えた大量のアーカイヴ・フィルムが発見される。当時、200名弱のカメラマンによりソ連全土で撮影された、幻の未公開映画『偉大なる別れ』のフッテージだった。セルゲイ・ロズニツァは、それを丁寧に紡ぎ、67年前に執り行われた国葬と、スターリンの訃報に触れたソ連各地の人々の姿を蘇らせている。

1953年3月5日、スターリンの死がソビエト全土に報じられる。ウクライナ、タジク、アゼルバイジャン、ハバロフスク・・・ 神妙な顔で訃報を聞く人々。
エストニア、ラトビア、モスクワ・・・ 長蛇の列を作って新聞を買い求める人々。
半旗が掲げられる町。
空港には、外国の要人が次々に到着する。チェコスロヴァキア、ポーランド、フィンランド、中国、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、英国共産党・・・
モスクワの労働組合会館「柱の間」に安置されたスターリン。
地方の会場にも花輪が次々に届く。
葬儀が執り行われる。
レーニン=スターリン廟での追悼集会ではスターリン亡きあとのソ連を担う政治家たちの顔が並ぶ。
弔砲が打たれる。呼応するように汽笛が鳴り、蒸気機関⾞は動輪を停める・・・

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(C)ATOMS & VOID

「この世にスターリンのいない最初の日。彼が我々のもとから去った。もう成す術はない」というアナウンスが響く。スターリンの強権で、様々な思いをしたであろう人々。内心、安堵の気持ちがよぎったのではないか。もちろん、そんなことはお首にも出せない。
弔問する国民の中には、大げさに泣く婦人も見受けられたが、多くは静かに神妙な顔で指導者を見送っている。
ソヴィエトの西から東まで、隅々のところで多くのカメラが捉えた国葬の日の人々の姿から、当時の暮らしを垣間見ることができ興味深かった。中でも、タジクのコルホーズの人々の衣服を観ることができ感無量。無理矢理ソ連だったことにも思いが至った。
貴重なアーカイヴ映像を、素晴らしい編集で壮大な絵巻物に仕上げてくれたセルゲイ・ロズニツァに感謝! (咲)


スターリンの死を悼む国民たちの姿を淡々と映し出す135分。棺に横たわるスターリンのそばを通ることができたのは、スクリーンに映し出された大勢の人たちのほんのわずかなはず。それでもみなが弔意を示して外に集う様子に驚きました。何が彼らをそこまでさせたのでしょうか。みながスターリンの死を悲しんでいるかのような仰々しい放送の音声が入っていますが、本心はどうだったんだろうという視点で見ていたら、いつの間にか135分が経ってしまいました。もしかすると、国葬に参列することで、それまで快く思っていなかった人々がスターリンは偉大な指導者だったと擦りこまれていったのかもしれません。(堀)


★11/14(土)公開初日、13時〜『国葬』上映後にロズニツァ監督のZoomセッション開催

第76回ベネチア国際映画祭 正式出品

【セルゲイ・ロズニツァ「群衆」ドキュメンタリー3選】として、『国葬』『粛清裁判』『アウステルリッツ』一挙3作同時公開
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/478352334.html

2019年/オランダ、リトアニア/ロシア語/カラー・モノクロ/135
配給:サニーフィルム
公式サイト:https://www.sunny-film.com/sergeiloznitsa
★2020年11月14日(土)~12月11日(金)シアター・イメージフォーラムにて3作一挙公開 全国順次ロードショー
posted by sakiko at 12:38| Comment(0) | オランダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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