監督・脚本:山田佳奈
プロデューサー:内田英治 藤井宏二
撮影:伊藤麻樹
出演:伊藤沙莉、恒松祐里、佐津川愛美、片岡令子、でんでん、森田想、円井わん、行平あい佳、野崎智子、大川原歩、モトーラ世里奈、池田大、田中俊介、般若
雑居ビルにあるデリヘルの事務所。バブルを彷彿させるような内装が痛々しく残っている部屋で、華美な化粧と香水のにおいをさせながら喋くっているオンナたち。カノウはこの店でデリヘル嬢たちの世話係をしていた。オンナたちは冷蔵庫に飲み物がないとか、あの客は体臭がキツイとか、さまざまな文句を言い始め、その対応に右往左往するカノウ。店で一番人気の嬢・マヒルが仕事を終えて店へ戻ってくる。マヒルがいると部屋の空気が一変する。何があっても楽しそうに笑う彼女を見ながら、カノウは小学生の頃にクラス会でやった『カチカチ山』を思い出す。「みんながやりたくて取り合いになるウサギの役。マヒルちゃんはウサギの役だ。みんな賢くて可愛らしいウサギにばかり夢中になる。性悪で嫌われ者のタヌキの役になんて目もくれないのに…。」
冒頭で下着姿の伊藤沙莉さんが「私の人生ってなんなんでしょう…」と訴えかけているわけはすぐに判明。さっぱり、べたつかない伊藤沙莉さんのカノウはぴったりです。カノウの感想や視線は観客と重なります。
デリヘル嬢たちの悲喜こもごもを、山田監督が舞台化していましたが、大切に温めてきてこのほど映画化されました。インタビューさせていただきましたので、ご覧ください。
☆山田佳奈監督インタビューはこちらです。
それぞれに訳ありな女性たちが生きていくために、集まってくるのは古今東西セックス産業なんですね。男性が3人、采配したり送り迎えをしたり。すぐに切れて怒鳴る男にもすり寄る女の子がいて、そんなに寂しいんですか、そうですか。生きていくのは大変です。負けるな女の子!(白)
劇団・□字ックを主宰する山田佳奈さんが自ら手がけた同名舞台をもとに、セックスワーカーの女性たちの嫉妬や確執、本音などを群像劇として描きました。でも、この関係性は彼女たちの仕事が特殊だからではなく、私たちの身近でもありがちなこと。表面上はいい関係を保ちつつ、心の中では舌打ちしたり、罵ったりすることは多かれ少なかれ誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。ひょんなことから綻びを見せ、いつの間にかすべてが白日の下に晒される。怖いような、でもたまには必要なことのような。。。
主演の伊藤沙莉さんだけでなく、恒松祐里さんや片岡礼子さん、佐津川愛美さんといった女優陣の役柄への理解が半端なく、「さすが!!」とうなってしまったが、意外だったのは田中俊介さん。慕ってくる女性に対する反応がまるで小学生の男子のような男性を演じていましたが、相反する気持ちと行動の葛藤を見事に表現していました。きっとここでのがんばりがプロデューサーを務めた内田英治監督に認められて、『ミッドナイトスワン』の瑞貴に繋がったのではないでしょうか。(堀)
東京国際映画祭2019 オープニング(撮影:宮崎)
東京国際映画祭2019 舞台挨拶(撮影:白石)
2019年製作/日本/98分/R15+
配給:アークエンタテインメント
(C)DirectorsBox
http://lifeuntitled.info/
★2020年11月13日(金)よりシネマカリテ他全国順次公開中
現在全国順次公開中
12月4日(金)より池袋シネマ・ロサにて公開スタート
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