2020年10月04日
わたしは金正男を殺してない 原題:Assassins
監督:ライアン・ホワイト(『おしえて!ドクター・ルース』『ジェンダー・マリアージュ 全米を揺るがした同性婚裁判』)
2017年2月13日、マレーシアのクアラルンプール国際空港出発ロビーで、北朝鮮の金正男(キム・ジョンナム)が暗殺されたというニュースが世界を駆け巡った。北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)の異母兄である金正男。空港の監視カメラには、一部始終が写されていて、殺害犯二人が捕まる。それは意外にも若い二人の女性だった。インドネシア人のシティ・アイシャと、ベトナム人のドアン・ティ・フォン。二人はなぜ金正男殺害の実行犯となったのか・・・
当時、ニュースを観た時に、若い女性二人が空港ロビーを歩いている金正男に突然抱きつく姿が監視カメラの映像が映し出されていて、しかもそれが北朝鮮の女性ではないことに違和感を覚えました。本作は、二人がなぜ殺害実行犯になったのかを丁寧に紐解いていきます。北朝鮮の工作員たちは、SNSで日本のテレビ向けのイタズラ動画への出演を呼びかけ、巧妙に彼女たちを「演出」したのです。裏で操った工作員たちは、さっさと国外に逃げてしまい、実行犯として捕まった彼女たちのその後がなんとも気の毒でした。監視カメラに写ることも計算済みの暗殺劇。いやはや怖いです。(咲)
大きく報道された暗殺事件のニュースははっきり記憶にあります。白昼堂々と行われた暗殺、顔に塗られただけで死んでしまう薬物があるのにも驚きました。が、その後逮捕された彼女たちがどうなったかは全く知りませんでした。実際続報を観た覚えがありません。この作品は実行犯となってしまった二人がなぜこんなことに巻き込まれたのか、誰が暗躍していたのか、その後何があったのかを順序だてて見せてくれます。うまい話には裏があると、少しは疑いましょう。一般人の知らないところで、いろいろなことが秘密裡に動いているのだと知らされました。(白)
マレーシアでは殺人で有罪になると死刑が確定すると本作で知り、驚きました。他にも国王反逆罪や麻薬密輸、営利誘拐、銃器不法所持でも死刑になるようです。
金正男殺害実行犯としてインドネシア人のシティ・アイシャとベトナム人のドアン・ティ・フォンが逮捕されました。政治的な意図はなかったにしても、お金をもらって誰かを殺害することは許されないと思っていましたが、2人は殺人を犯した意識は全くなかったことが作品から明らかになります。しかし、誰かをスケープゴートにしなければ、マレーシアが国家としての面目が立たない。実行犯に仕立て上げられた2人は殺人で有罪と判決が出てしまうと死刑が確実。加害者というよりも被害者といえるでしょう。
それぞれに弁護士がついて、無罪獲得のために奔走します。観客からすれば2人は同じ立場ですが、母国と北朝鮮の関係からその後の状況に差が生まれます。思わず、「そんなのありなの?!」と叫んでしまいそうになりました。やり切れない思いがこみ上げてきます。
高度な政治的判断とエライ人はいうのでしょう。そんなこと一般人にはわかりません。私たちにもわかるように、ちゃんと正義を貫いてほしいものです。(堀)
殺されたのは、私の人生
この事件の映像が流された時、「嘘でしょ。どうして!」と思わず叫んでしまった。白昼、堂々と、暗殺が行われたということにびっくり。しかも殺されたのは、北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)の異母兄である金正男(キム・ジョンナム)という人物。しかも場所は、大勢の利用客でごった返すマレーシア・クアラルンプール国際空港の出発ロビー。たくさんの防犯カメラの映像が一部始終を記録していた。この大胆で奇妙な謎に覆われた世紀の暗殺事件の真相に迫ったドキュメンタリーだが、暗殺事件を起こしたという女性二人は、加害者にさせられたと同時に被害者でもあった。そこに、サブタイトルににある「殺されたのは、私の人生」という言葉が突き刺さる。二人のその後がどうなったのか気になっていたけど、どうやら二人は裁判のあと、故国に戻れたらしいけど、高度な国と国との判断というのはなんなんだろうと疑問は残る。それでも見ず知らずの二人は、この裁判の間に協力しあい、励ましあう中で、弁護士など協力者の力を得て釈放に至ったということを知り、少しは救いを感じた。それでも納得のいく終わり方ではないのが政治判断という結果(暁)。
2020年/アメリカ/104分/G
配給:ツイン
公式サイト:https://koroshitenai.com/
★2020年10月10日(土) シアター・イメージフォーラム、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー
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