監督・撮影:ホンマタカシ
出演:妹島和世
丘に溶け込むように建つ大阪芸術大学アートサイエンス学科の新校舎。
その設計から建築にあたったのは妹島和世。金沢21世紀美術館やルーブル美術館ランス別館などを手がけ、建築界のノーベル賞ともいわれるプリッカー賞を受賞した建築家.
本作は、その構想から完成までの3年6か月を追ったドキュメンタリー。
妹島和世は構想にあたって大切にしたことを3つ挙げている。
建物が立つ「丘」に合せた外観であること。
建物が「開かれている」こと。
そこが人々の「交流の場」となること。
彼女が込めた思いは「公園のような建物」。見晴らしの良い丘の上に、誰もが立ち寄れるような、「公園」が出来上がった・・・
いくつもいくつも模型を作って、理想の形を追い求める妹島和世さん。合間には、事務所の植木鉢に水をあげるのも忘れません。いつもスカートにかかとの高い靴。建築現場でも、そのスタイルにヘルメット。
取材に応じて、落ち着いた語り口で話されていた妹島和世さんが、廊下で騒々しい音がしたときに、突然「静かにしてね!」と、高い声でおっしゃったシーンがありました。なんとも可愛い方なのです。
試写を観た直後に、妹島和世さんが「唯一無二の海を見せる駅」日立駅を設計されたことが朝日新聞デジタルに掲載されていると(暁)さんが教えてくれました。海が見晴らせ、風景の一部になっている素晴らしい駅。妹島和世さんの建物の在り方へのこだわりに、建築家皆がこのような考え方なら、素晴らしい景観が実現するのにと思いました。(咲)
本作から話は反れますが、娘は幼かったころテレビ朝日の「大改造!!劇的ビフォーアフター」を見て、「匠(建築家)になりたい」と言っていました。あれから20年。理系には進んだものの機械工学科に進学し、いつの間にか建築家の夢は消えていました。ただ、友人の何人かは建築学科に進みました。理系の中でも建築学科は女性の割合が多いよう。娘の学科は女子が1割ですが、お友だちが学んでいる建築学科は同じ大学ですが半数に迫る勢い。建築は意外に女性向きなのかもしれません。
とはいえ、妹島さんが就職したころはまだまだ女性の建築家は少なかったはず。この世界でやっていくのにかなりの苦労があったことと思います。男性に負けないぞという覚悟で挑んできたのでしょう。現場に行くときもモードな雰囲気でおしゃれな妹島さん。一般的な発想なら動きやすいパンツスタイルにするところでしょうけれど、あえてのスカートに、もしかすると自分を曲げない強い決意が込められているのかもしれないと感じました。(堀)
2020年/日本/カラー/16:9/60分/英語字幕付き
製作:大阪芸術大学
配給:ユーロスペース
公式サイト:http://kazuyosejima-movie.com/
★2020年10月3日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開
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