2020年09月20日

シネマ歌舞伎 三谷かぶき月光露針路日本 風雲児たち

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作・演出:三谷幸喜
原作:みなもと太郎
語り:尾上松也
出演:松本幸四郎(大黒屋光太夫)、市川猿之助(庄蔵/エカテリーナ)、片岡愛之助(新藏)、八嶋智人(ラックマン)

日本がまだ厳しい鎖国政策をとっていて、外国との行き来がままならなかった江戸時代末期のこと。大黒屋光太夫は商船神昌丸の船頭(ふながしら)として、伊勢から江戸へ向かった。途中大きな嵐に襲われ、船の帆が折れ、大海原を漂流する羽目になってしまった。ともすればくじけそうになる光太夫だったが、17人の乗組員を率いる身なれば弱音を吐くこともできない。必死でみんなを励まし、ようやく陸地にたどり着く。
ところがそこは江戸どころか日本でもなく、ロシア領のアリューシャン列島の小さな島だった。

歌舞伎の舞台を映画館でデジタル上映する「シネマ歌舞伎」シリーズ第36弾。2019年6月に歌舞伎座で上演された舞台をスクリーンで上映。今作はなんと船旅の話で、漂流した挙句にロシアまで行ってしまうというもの。嵐に翻弄される船と乗組員、長い漂流の果てに一人また一人と命を落とす人々。過酷な運命に落ち込むだけにしないのが、三谷演出です。船員こそ男性ばかりですが、ロシア女性に扮した綺麗どころもちゃんと用意されています。身の軽い猿之助さんが庄蔵を演じたかと思えば、ロシアの女帝エカテリーナに扮して登場し、その威厳があたりをはらいました。さすが。劇場中が「おお~~」という感嘆の声で満たされたのは、雪原にそり犬がずらりと勢ぞろいした場面。見た目全てハスキー犬で、ちゃんと犬らしいアクションをしています。
小島からロシアの中枢であるサンクトペテルブルグの宮殿まで、故郷へ戻りたい一心で長い長い旅をした一行の願いは叶えられたのでしょうか?まずはその目でしかとご覧あれ。(白)

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「映画やテレビは見るけれど、歌舞伎はちょっと敷居が高い感じがして見ないのよね」とおっしゃる方がいらしたら、ぜひお薦めしたいのが本作です。この夏、続編が放送されて話題になったテレビドラマ「半沢直樹」で東京中央銀行証券営業部の伊佐山部長を演じた市川猿之助、金融庁検査局・黒崎駿一を演じた片岡愛之助が出演し、IT企業・スパイラルのカリスマ社長・瀬名洋介を演じた尾上松也が語りをしているのです。しかも三谷幸喜の作・演出とくれば、興味も沸くことでしょう。
主人公は大黒屋光太夫。日本史の教科書もに書かれている名前なので、聞いたことがあるのではないでしょうか。江戸時代中期に伊勢から江戸に向けて出港したものの嵐で遭難してロシアに漂着し、エカテリーナ二世に謁見した日本人です。そこに至るまでの苦難を描いています。
その大黒屋光太夫を演じたのは松本幸四郎。父の松本白鸚、息子の市川染五郎も出演しています。この市川染五郎が初々しい! 水主(「かこ」と読みます。船の乗組員のことです)の役で、名前を磯吉といいますが、要領が悪くてみんなから怒られてばかり。しかも松本幸四郎と親子であることで何度も揶揄されます。「水主は向いていない」と言われているのを聞くと、まるで歌舞伎が向いていないと言われているんじゃないかと見ている方が心配になってきました。ところが、磯吉はロシア語をいち早く覚えて、みんなを助けます。それとともに頼りなかった磯吉がたくましく見えてきました。磯吉の成長物語の側面を持つ作品ですが、市川染五郎本人の成長物語でもあるのかもしれません。歌舞伎役者として、将来が楽しみです。(堀)


2020年/日本/カラー/シネスコ/138分
配給:松竹
(C)松竹株式会社
https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/
★2020年10月2日(金)全国公開
posted by shiraishi at 19:45| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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