2020年09月13日
ヴィタリナ 原題:Vitalina Varela
監督:ペドロ・コスタ
出演:ヴィタリナ・ヴァレラ、 ヴェントゥーラ マヌエル・タヴァレス・アルメイダ、フランシスコ・ブリト、マリナ・アルヴェス・ドミンゲス、ニルサ・フォルテス
闇の中、一列になって黒人の男たちが歩いていく。十字架の並ぶ墓地。
リスボンの片隅、移民たちが暮らす、フォンタイーニャス地区。
暗く狭い部屋。小さな祭壇の傍らに座る女性ヴィタリア。夫が亡くなった知らせを受けて、カーボ・ヴェルデから駆け付けたが、3日前にすでに葬儀は終わっていた。
弔いにきた男たちに、ぽつりぽつりと語るヴィタリア。
「1982年の12月14日に婚姻届を出し、1983年3月5日に結婚式を挙げた」
「出稼ぎ先のポルトガルからカーボ・ヴェルデに一時帰国して、牝牛1頭売って、45日で10室も部屋のある立派な家をひとりで作ってくれた。別れも告げずにポルトガルに帰ってしまって、ドアや窓は私が作った。完成した家を夫は見ていない」
「リスボン行きの切符が届くのを40年待った」
ヴィタリアは夫が過ごしたリスボンの家で暮らす決意をする・・・
ペドロ・コスタ監督は、『ホース・マネー』を撮影中の2013年秋、カーボ・ヴェルデからやってきたヴィタリアに出会う。まさに、亡き夫の家に着いたばかりだった。連日、家に通って彼女の話を聞きだしたのが、本作の始まり。演じたのも、ヴィタリア本人。2019年ロカルノ国際映画祭でみごと女優賞を受賞。『ヴィタリア』は最高賞である金豹賞も受賞し、まさに作品の力。
ヴィタリアには夫が一時帰国したときにできた子どもが二人。夫は故郷に立派な家も作りながら、なぜ一生を狭いリスボンの暗く狭い家で終えたのか・・・ その狭い家で暮らすことを選んだヴィタリア。夫と長く一緒に暮らせなかったことへのヴィタリアの思いが感じられて切ない。(咲)
2019年/ポルトガル/ポルトガル語・クレオール語/DCP/130分
配給:シネマトリックス
公式サイト:http://www.cinematrix.jp/vitalina/
★2020年9月19日(土)ユーロスペースにてロードショー、全国順次公開
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