2020年09月05日
喜劇 愛妻物語
監督・原作・脚本:足立紳
撮影:猪本雅三
音楽:海田庄吾
出演:濱田岳(豪太)、水川あさみ(チカ)、新津ちせ(アキ)、夏帆(由美)
売れない脚本家の豪太は年収50万円。ほぼ妻のチカの稼ぎで食べている。結婚して10年、可愛い一人娘のアキもいるが、いつまでたっても鳴かず飛ばずの豪太にチカの怒りは収まらない。歯に衣着せぬアキの罵倒にときたま抵抗するものの、10倍になって返ってくる。セックスレス3か月に及び、何とかご機嫌をとりたい豪太はうどん作りの取材と称して四国への旅を提案する。
『百円の恋』脚本の足立紳が2016年に発表した小説が原作。稼ぎがなくても適当なセフレを作り、お金があれば風俗へも行く豪太に、まったくもう!と思ってしまうのは私だけではないでしょう。男性諸氏は剛太にどのくらい共感できますか?
とことん情けない豪太と鬼嫁チカの夫婦を濱田岳&水川あさみさんが演じて本当にうまい~!どちらにも呆れつつ、親近感を持たせてくれます。どれだけ口汚く罵ろうとも、見放していない、憎んでいるのではないことは素直で可愛い娘と、チカがはいている赤パンツでわかります。赤パンツは巣鴨の地蔵通り商店街の人気商品で「元気と幸福」を願うものです。仲良く出かけたときに買った赤パンツを今も愛用しているチカ。豪太くんよ、少しは気持ちを察してやって。
昨年第32回東京国際映画祭のコンペティション部門で最優秀脚本賞を受賞。
足立監督がきっと意識されただろう、喜劇とつかない『愛妻物語』(1951)は新藤兼人監督(脚本も)が自らの下積み時代、夫を支え続けて結核で死去した愛妻との日々を描いています。70年前はこんな風でした。(白)
まったくしょうもない夫、豪太を浜田岳はひょうひょうと演じている(笑)。夫を罵倒しながらも支えている妻チカ。男の身勝手さにイライラしながら観たけど、浜田岳が演じるとコミカルに感じる。笑える悲壮感というようなイメージ。そんな豪太だけど、チカはなんとかなるのではという希望を持っている。それは「赤パンツ」をはいていることでわかる。そのへんがうまい表現と思った。それが報われるとこまでは描かれていないけど、こんな関係性の中での生活はさてどうなるのでしょう。
去年、友人がスタッフとして参加している第10回周南[絆]映画祭(2019)に初めて行ったけど、『百円の恋』はこの映画祭での「第1回松田優作賞」グランプリに選ばれた脚本ということを知った。思わぬ発見だった。きっと足立紳監督の運はこれで開かれていったのではないかと思った。そして徳山の方たちの映画愛ははんぱない。今年はどんな作品が上映されるかなと思ったのだけど、残念ながら今年の周南[絆]映画祭は今のところ延期になっている(暁)。
愛妻というのは愛している妻だと思っていたが、この作品では愛してくれる妻らしい。主人公は働きもせず、子守もせず、セフレと遊ぶ。とことんクズな男だが、濱田岳が演じる、まぁいいかと思わせてしまう。いやいやダメでしょ。
しかし、女性の幸せって何なんでしょう?
夏帆が演じる妻の友人も、大久保佳代子が演じる主人公のセフレも幸せそうに見えない。夫がこんなにクズな主人公でも、水川あさみが演じる妻がいちばん幸せそうに見える。
自力で生きていける力があり、愛する夫と娘がいる。人生を自分で選べることこそ最強なのかもしれない。
そして、足立紳監督は愛妻の本当の意味がわかったから、売れっ子脚本家になれたに違いない!(堀)
豪太が以前に企画を出した「四国にいる高速でうどんを打つ女子高生」が映画化されることになり、脚本を書くために四国に取材に行きたいけれど、取材費は出そうにない。運転免許がない豪太は、妻チカに運転係として同行を頼み、娘も連れて親子3人で四国旅行にとう物語。まったくもう~な夫に呆れるばかり。
公式サイトの監督インタビューを読んでみたら、どうやら足立監督自身の経験が投影されていると知りました。小説にする前に、さぬき映画祭のプロットコンペに応募しようと思って書いたものが発端なのだそうです。香川県を舞台にしたものなら何でもいいというコンペ。香川県に行ったことがなくて、家族3人で行ったもののネタが見つからず、奥さんから「このクソど貧乏のさなか、せっかくお金かけて行ったんだから絶対に応募しろ」と言われたのだそう。足立監督の奥様にお会いしたくなりました♪ (咲)
2019年製作/115分/PG12/日本
配給:バンダイナムコアーツ、キューテック
http://kigeki-aisai.jp/
(C)2020「喜劇 愛妻物語」製作委員会
★2020年9月11日(金)より全国ロードショー
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