2020年09月05日
新しい街 ヴィル・ヌーヴ ( 原題:Ville Neuve )
監督: フェリックス・デュフール=ラペリエール
出演:ロベール・ラロンド、ジョアンヌ=マリー・トランブレ、テオドール・ペルラン
アルコール依存症の詩人ジョゼフは、離婚した元妻のエマを思い出の地である「ヴィル・ヌーヴ」に呼び出す。やり直せるかに見えた二人だったが、独立運動の盛り上がりと同時に、彼らの関係に新たな波乱が生じる。
まるで、”アニメーション版タルコフスキー”とでも称したいほど詩情溢れる作品だ。タルコフスキーの特徴である”水”の象徴性は、海辺の小屋や波、白い魚、水溜まりといった対象に呼応する。
作中でも、題名こそ示されないが、タルコフスキー作『アンドレイ・ルブリョフ』の挿話が引用される。
「鐘を造る映画を見た。 息子は父から鐘造りの秘伝は教わっていなかった…」
「鐘」は『アンドレイ・ルブリョフ』の中でも最も印象的な挿話だったため、タルコフスキーへのオマージュの感を強くした。
全編が墨絵・手描きで作られた本作は、米国の作家レイモンド・カーヴァーの「シェフの家」にインスパイアされた。原作は意外な程の短編である。元妻に未練を持つ中年男の物語を自由に翻案し、カナダ・ケベック州の独立運動を織り込んだ。
政治的な主題と愛情を交錯させつつ、国且つ人々の独立していく様を情感豊かに綴った脚本は出色といえる。
大人のためのアニメーションだが、決して政治色が強くも難解でもない。抽象的な表現こそ目立つものの、安易なカタルシスを求めがちなアニメーションが跋扈する中、一石を投じる作品だ。
監督はこれが初長編アニメとなるフェリックス・デュフール=ラペリエール。”映像詩人”の系譜を受け継ぐ監督がカナダに現れたことが素直に嬉しい。(幸)
配給・宣伝:ニューディアー
配給協力:植田さやか
2018年製作/76分/カナダ
後援:カナダ大使館
協力:ケベック州政府在日事務所
©L'unité centrale
公式サイト:http:// newdeer.net/ville
★9月12日(土)、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
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