2020年08月29日

リスタートはただいまのあとで

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監督:井上竜太
脚本:佐藤久美子
原作:ココミ著書「リスタートはただいまのあとで」(プランタン出版 刊)
出演:古川雄輝 竜星涼 村川 絵梨 佐野岳  中島 ひろ子 螢 雪次朗 甲本雅裕

職場で上司に人間性を否定され、会社を辞めて10年ぶりに田舎に戻った光臣(古川雄輝)は、近所で農園を営んでいる熊井のじいちゃんの養子・大和(竜星涼)と出会う。大和のことを「馴れ馴れしくてウザい奴」と思っていた光臣だが、父親に実家の家具店を継ぐ事を拒絶され、農園の手伝いをはじめると、大和と過ごす時間が増えていく。ふさぎこんでいる光臣を励まし、心の痛みに寄り添う優しい大和。次第に、自分の弱さも受け入れてくれる大切な存在に変わっていく。ある夜、酔いつぶれた二人だったが、目が覚めた光臣は寝ている大和に思わずキスをしてしまい・・・抱いている感情にハッとする。大和の高校の同級生で親友の上田(佐野岳)から、「アイツには秘密がある」と耳打ちされたことを思い出した光臣の前に、親しげに大和と話す年上の女性が現れて・・・。
光臣は大和へ想いを伝えることはできるのか?そして、親との確執を乗り越えて、自分の夢と向き合う事ができるのか?

長閑な緑の景観を背景に走るローカル列車。疎らな乗客の中に塞ぎ込んだ様子の青年がいる。信州の駅に降り立ったところ、静けさを打ち破るかのように、大声で自分の名前を呼ぶ男が現れ、誰だか分からないまま車に乗せられてしまう。
じいちゃんの養子と名乗る男は初対面なのにやたら馴れ馴れしい。
「この辺も変わったろ?イオンできたで〜。初めて吉野家にも行ったわぁ!」

光臣にとって大和との出会いは最悪だった。扮する古川雄輝は身体から都会の倦怠を放ち、大和役の竜星涼は底抜けな明るさを体現している。一瞬にして性格が分かる演出技巧を身に付けた井上竜太。長編監督デビュー作として上々な滑り出しといえるだろう。

BL邦画は今年だけで4本目だが、清心さ、ピュアなイメージを求めたいBL映画ファンには適した1作。30歳を前にした青年2人の交流が、たまたま愛情に発展した、という建てつけだ。

葛藤や波乱含みを保たせつつ、正攻法のドラマを見守る信州の景色と人々が温かい。演技巧者の脇役陣の中、村川絵梨が隠れたキーパーソンとして良い味を醸し出す。
ホリプロ主導の映画にしてはエンディングに安易なタイアップ曲が流れないのは珍しい。最後まで静けさを貫き通した井上監督に好感触を持った。(幸)


配給:キャンター
2020年製作/99分/G/日本
企画:ホリプロ 
制作プロダクション:キャンター/ホリプロ
(C) 2020 映画「リスタートはただいまのあとで」製作委員会
公式サイト:https://restart-movie.com/
★9月4日(金)よりシネ・リーブル池袋ほか全国公開

9月5日 公開記念舞台挨拶
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「勉強をリスタートしたい」古川雄輝

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「自粛中はこれからのことを考えた」竜星涼

写真(白)

posted by yukie at 14:52| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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