2020年08月01日
ハニーボーイ(原題:Honey Boy)
監督:アルマ・ハレル
脚本:シャイア・ラブーフ
撮影:ナターシャ・ブライエ
音楽:アレックス・ソマーズ
出演:シャイア・ラブーフ(ジェームズ)、ルーカス・ヘッジズ(オーティス22歳)、ノア・ジュプ(オーティス12歳)、FKAツイッグス(シャイ・ガール)
オーティスは若くしてハリウッドの人気俳優となり、仕事に忙殺される日々が続いている。ある日泥酔して車を運転し、アルコール依存症の更生施設に送られた。リハビリの過程で自分にPTSDの兆候があることを知る。原因をつきとめるため思い出を書き出すことになった。
10年前、12歳の子役だったオーティスは、マネージャーである父親ジェームズが引き受けた仕事をこなしている。前科者で無職、息子の働いた金で酒を飲み、突然爆発するジェームズに普通の父親らしさを求めては裏切られていた。
シャイア・ラブーフが自身の体験を反映させた脚本を書き、自ら父親役も演じています(か、髪の毛が)。子役時代から父親との軋轢を抱え、大人になって親の不器用な愛情に気づいていくストーリーです。
シャイア・ラブーフは大ヒットした『トランスフォーマー』(2007)で一躍スターになりましたが、その裏側にはこんな悩みがあったんですね。その後『マン・ダウン 戦士の約束』でPTSDのもと兵士役、『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』の素晴らしいマッケンロー役を演じていい俳優になったことと驚きました。ゴシップにも事欠かなかった人でしたが、この『ハニーボーイ』は映画のストーリーのとおり、更生施設で書いたものです。脚本の才能も見いだせたのだし、依存症もトラウマも乗り越えて、良き伴侶を見つけてと願っています。
愛らしい子役のノア・ジュプは『ワンダー・君は太陽』(2017) 『クワイエット・プレイス』(2018)『フォードvsフェラーリ』(2019)と続いて出演。この作品も代表作になりそうです。可愛いだけではなく、家族の愛を渇望するオーティスになりきっていました。2005年生まれ、伸び盛りの彼は次の作品でまた一段と大きくなっていそうです。
長じてからのオーティスを演じたルーカス・ヘッジズはどんな役も自分のものにする若き実力派。この作品より前の制作だった『mid90s ミッドナインティーズ』が9月公開。ポスプロ中の作品が何本もあり。
アルマ・ハレル監督のほかの作品を観られないでいますが、この1本を観ただけでも次の作品への期待が高まります。自由に制作の進まない時期ですが、才能ある人たちが伸びていける映画界でありますように。(白)
人気絶頂の子役とアルコール依存症だった父親。2人は息子の収入で暮らしている。アルコールは絶っているもののかっとしやすく、場を盛り上げる嘘を平気でつく父親は自分のことで精一杯。そんな父親を見つめる息子の眼差しはどこか寂しげ。唯一、父の背中にしがみついてバイクに乗っているときはうれしそう。父親の体温に愛を感じていたように見えた。
長じた息子は薬やアルコールに溺れて、たびたびトラブルを起こす。自動車事故を起こした今はアルコール依存症のリハビリ施設でプログラムを受講中。合間に幼いころを思い出し、自分と父親の状況を重ね、父親は愛情表現が下手なだけで自分を愛してくれていたことに気づいていく。
シャイア・ラブーフが自らの過去を脚本にし、しかも自分の父親の役で出演した。本人としては大人になった自分を演じるつもりだったそうだが、監督はそれを望まず、演じるなら父親だと言ったという。それは作品にとってだけでなく、シャイア・ラブーフ自身にとってもよかったのではないだろうか。(堀)
2019年/アメリカ/カラー/シネスコ/95分
配給:ギャガ
(C)2019 HONEY BOY, LLC. All Rights Reserved.
https://gaga.ne.jp/honeyboy/
★2020年8月7日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
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